第125話 2回戦 第8試合 後編
「あっという間にリラ選手が攻撃に入った!
殆どの方は何が起きたのか解らないでしょう!
ここで録画中の魔石の映像から、再放映の準備が整うまで
解説に入りたいと思います!」
………まさかこれリプレイするの??
つか出来るの!?!?
「凄い。リラ選手の左のカウンターが出た所で
ムッシュ選手の右拳の軌道を変更。
その軌道の変わった拳を右の肘と膝で挟み込んだ。
その際に膝は蹴り上げているのでここで1度目の攻撃が入って
そのまま今度は開いた左腕でムッシュ選手の頭を掴んで
今度は左掌と右膝で挟み込んで、そのまま地面に叩きつけて2度目の攻撃。
ムッシュ選手はこれによって身体が左に倒れた所を今度は
まず右手でムッシュ選手の身体に右腕を回して、次に左腕。
その時にムッシュ選手の背中側に回り込みつつ左右の腕で腰を固定。
そのまま座り込むようにムッシュ選手の頭の真上を地面に叩きつけて3度目の攻撃。
冒険者がやるような攻撃では決してない接近状態からの掴み技に
頭を真下に落とすような奇抜な攻撃だった為に
恐らく対応が出来なかったのだと推測。」
「さぁ、現在ムッシュ選手はその後舞台上に倒れ込んでいます!
その時間を利用して、先程のリラ選手の一連の技が
チウロイの解説通りかを見てみましょう」
「あってる、侮られえては困る。
これでも1階フロアマスターでこの本部のナンバー3。」
「と言う事で一連動作の再放映どうぞ!!」
私もリプレイを見た、マジでリプレイしているし
何よりキチンとスローになってるし……。
そしてそれを見て、ムッシュから距離を取ったのです。
あ、やっぱ初見だから対処法間違えてるね……。
地面に脳天が当たる前にムッシュが頭を伸ばしていた。
だけどそれは逆効果だと思う。
だって下に落下しているんだから、頭を伸ばしたら
その分、当たった時の衝撃が増えると思うんだよね……。
解りやすく言えば、車が壁に激突するのと
前から対向車が突っ込んでくる位の違いが
あると思うんだけど……。
まぁ、それもどれだけのダメージになるのか
私にはちょっと想像つかないな……。
最悪ゴリラ癒しの魔法で助けないと駄目かな……?
『ムッシュの生命維持には問題ありません。』
なら大丈夫か……。
『但し脳震盪を起こしているようです。
暫く起き上がっては来ないとみられます。』
そっかー………。
私は机と椅子を出して
ティータイムとする事にした。
このまま場外に放り出せばまぁ勝つには勝つ。
『それで良いのでは?』
良いんだよ、最終戦でしょ?
プロレスはセメントもあるけど
基本はエンターテインメントだからね。
楽しませてなんぼ、ならこの位良いんじゃないかな。
『マスター、頭は大丈夫ですか?
これはBランク昇格試験であって真剣勝負であって
エンターテインメントでもプロレスでも無いのですよ?』
酷い言われようだね。
まぁちゃんと考えてはあるよ。
まぁムッシュ次第だろうけど……。
いや、もっと良いのがあるじゃない……。
『また悪い顔してますね……。』
これこそエンターテインメントだよ?
人々を楽しませるってやつ?
私はゴリラコンテナから以前、市場で買った
インクと筆を取り出した。
「ふんふふんふふーん♪」
ヲタ的勝者の特権、対戦相手の顔への落書き!
私はムッシュの顔に色々と書いてみた。
『またユーチ〇ーバーみたいなノリで……。』
「おっと、リラ選手!
勝負がまだついてないとみるや、筆とインクを取り出して
ムッシュ選手の顔に落書きを始めました!!
なんとも見た事が無い形が額に描かれ……。
これは髭でしょうか??」
私は自由にムッシュの顔に色々と
顔に描くならこれ!的なものを描いて
またティータイムへと戻っていった。
程なくしてムッシュの意識が戻ったようだ。
「おっと!ムッシュ選手、気が付いたようです!」
「そほぉいっ!?私は一体何を……。」
「あ、起きた。」
「リラ殿?……………。
私は負けたのですかな……?」
「まだ終わってないよー」
ムッシュはリラの言葉を確かめるように
審判を見るとなんとも妙な顔つきで頷いていた。
「そうか……私はまだ負けていない………。
と、言うより生かされていたか……………。」
「ま、死んだら困るからね。
じゃあ続きといきましょうか!」
「……………いや『降参』です。
これ以上戦ったところで勝ち目は無いようです。
まだ余力を隠しているリラ殿と
『ほぼ全て』を出し尽くした私とでは……。」
「つまり『奥の手』は出さない、と……。」
「ええ、私の本気は『命のやり取りをする時』だけ
出すものなのでね……。」
「むかつく上から目線だね……。
つまり本気なら勝てると言ってるようなものじゃない。」
「無論ですぞ。」
「へぇ……………萎えた。」
私はすぐに舞台を降りた。
直後、審判の勝ち名乗りがあって
修練場の観客は沸くも、私は冷え切っていた。
私に対して本気を出す価値が無い、と
言われているような気がしたからだ。
ムッシュの特性から言えば、もっと出来る筈だと思っている。
それが本気なのだろうけど、それを出すより降参を選んだ。
気絶していた事に変わりはないから試合には
「勝たせてくれた」とでも言わんばかりの
超ムカつく上から目線を私は感じ、萎え、そして冷めた。
しかしすぐに小さく暖まった。
それは私も同じだからだ。
別フォームを使わず抑えた私がしている事と
何が違うのか、と言えば違いはない。
今のままなら「シルバーアームドフォーム」は必要ない。
今使える一番を温存したのは私も一緒だった。
ムッシュのそれはただのブーメランだ。
私が本気を出していないのに、それを求める私の方が
何様のつもりの上から目線と言われれば、否定の使用が無い。
だから萎えた、私自身に……。
私自身が超ムカつく事をしていて、それをムッシュに対して
超ムカついている私自身がされたら嫌な事をしていながらも
相手には要求しようとした。
私は私にとって屑になったのかもしれない。
力を得て調子に乗って、鼻を高くしているの
その最たる存在が私自身だと気が付いた。
『別に良いのではないでしょうか。
そこから前に進めばそれは経験なのですから。
俺TUEEEE!とかヒャッハー!〇物は消毒だーだなんて
叫んで暴れている訳でも無いのですから。
非常に……………ゴリラらしいと思います!』
どうでも良いけど結局ゴリラ以外のものは
出てくるつもりはないのかな?
でも今がどうだったか、じゃなくてこれを踏まえて
これからどうするか、が重要だと思えば
ニクジュバンニの言う事が最もだと思う。
『むしろ私に対してずっとマウント取り続けようと
してますよね?そちらの方が問題では?』
そっちはどうでも良いんだよ……。
それこそ私自信みたいなもんなんだからさ……。
『先生!リラさんが虐め宣言しています!』
先生はバスケがしたい時に頼るもんだよ……。
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つけていただけると、作者が一喜一憂します!