第123話 2回戦 第8試合 前編
「さぁ、2日目は昨日勝ち上がった逆シードの4名に加え
2回戦から参加となる12名を加えた16名での熱戦!
昨日の2倍の試合とあって、本日もここ冒険者ギルド
タニーガ本部地下にある修練場は大賑わいです!
本日も実況解説は引き続き、2階フロアマスターのチルタフちゃんと!」
「オッス!オラ、チルタフ。いっちょやってみっか!」
「……………1階フロアマスターのチウロイでお送りしまーす!
いよいよ本日の最終戦となる
第8試合が間もなく始まります!
まずは本日からの参戦となる
キノピー族のムッシュ選手です!
キノピー族が出てくるのは非常に珍しいですね!」
「……………最近、あまり身体が売れないからかも?」
「……………はい、映像の前の皆さん!誤解なさらない様に!!
キノピー族はご覧の通り、生きた木族とも言われていて
身体が木に非常に似ているのです!
昔はキノピー族がその身体を切り、生計を立てていたと
言われているんです!しかも切ってもすぐに伸びるし
実際の木よりしなやかだと、今でも一部の武器の素材として
重宝されていたrします!決して春を売られている訳ではありません!!」
「………昔は無限に生える木だー、と拉致・誘拐される事が多々あって
非常に苦しんだ過去もあるのです……。」
「そういう事ならそうと言いなさいよ!
あんたのせいで私が恥かいたじゃない!!」
「勝手に春を売っていると勘違いしたのはオッス!オラ、チルタフ!」
「その声止めなさい!えっ!?
また集音拡声部分の?魔力が入ってたまま?
ってうっそー!?…………………。」
「……………ぶいっ……。」
「……………そして次は昨日の逆シード4戦目を
制したリラ選手!
なんと今日は大猩猩っぽい服装から一転!
全身真っ黒い服装になっていますが
遠目からは大差が無い、なんとも残念な服装ですっとぉ!?
こら!リラ選手!物を投げないでください!
あっ、これは審判も流石に看過出来ないようです!
ポケットから黄色い札を取り出しました!警告です!
「チルタフに警告1!」
「なんで私に警告なんですか!!
今、手を出したのはリラ選手ですよ!?」
「………審判の手元を見ましょう。今、投げた物と
同じ黄色いものを持っています。
そして徐に……食べ始めました。
では私も…モグ……美味しい…モグモグモグモグモグ……。」」
「なっ、まさかの賄賂!?」
「リラ選手は差し入れをしただけとの事です!
チルタフに名誉棄損でさらに警告1!累積2!!」
「なっ、ちょ、えっ!?」
「これ以上貯めると実況解説失格になるよ?」
「えっ!?実況解説なのに失格!?……………。
さぁ、気を取り直していきましょう!!
片や細身のキノピー族のムッシュ選手!
片や小さな巨人のリラ選手!
間もなく本日最終戦第8試合の開始です!!」
「なんかやりにくそうな相手だね……。」
『キノピー族は正確には木に宿った精霊の一種です。
その木の性質を捉え、しなる攻撃やいくらでも伸ばせる
手、足、鼻、とくに陰茎に注目が集まるでしょう……。』
「へぇ……………。
今、何気にとんでもない事を口走らなかった?」
『………気のせいです。』
「しかし1つ1つの身体のパーツが丸太状なだけで
構成としてはちゃんと人型なんだね……。」
『木人族を模倣した為でしょう。』
え?似たようなのが居るの……?
『木人族は木に意識が芽生えたもので
キノピー族は木に宿った精霊の一種です。』
……………あまり大差が無い気がするんだけど。
ま、いいか……。
『ところでマスター、疑問なのですが……。』
何?
『もう試合、始まってますよね??』
始まってるね……。
「ムッシュ選手の怒涛の攻撃!腕が伸びてしなり!
足が伸びてしなり!そしてそれを次々とリラ選手が躱す!
開始直後からなんとも素早い攻防に修練場内が沸いています!!」
「むほほほほ、避けてばかりでは勝てませんぞ?」
「ぬぅ、ミニゴリラ!!」
私は伸びて薙ぐように、伸びて突くように
次々と攻めてくる手足の対抗手段としてミニゴリラを放ち
腕や足を止めようとしたのです。
「この程度っ!」
ムッシュは次々と伸ばしていた手足を振ったのです。
それによって手足はブルブルと震えて
そこに飛びつこうとしたミニゴリラ達は
振動がきついのか、すぐに剥がされてしまった。
「そほぉいっ!!」
そして今度は手を握ると、拳で
襲い掛かっていたミニゴリラ達を拳で打ち
次々と舞台の外へと叩き落し始めた。
それも速いパンチであっという間にミニゴリラ達は
全て舞台下に落下してしまったのです。
すぐに落ちたミニゴリラを消し、再度出そうとするも
今度は先程までとは変わって、距離を詰め
一気に近距離戦を仕掛けてきたのです。
「うほほほそほほぉいっ!!」
ニンジャフォームを選択していた事で
距離を詰められてもなんとか避けられ……。
「なら更に距離を詰めたらどうなりますかな!?」
能力からいって、腕が伸ばせるのだから
距離を詰める必要性があるとは思えないのに
さらに詰めてきたのです。
お互いの身体と身体がくっつく位。
殆ど間が無い状態まで詰め寄られた。
「そほぉいっ!!」
そしてパンチが左右から飛んでくる!?
それも普通の横からのパンチと言うよりは
先程まである程度距離を取っていた際に放ってきていた
突くようなパンチ、ほぼストレートのような
非常に速度があるパンチが左右から迫ってきたのです。
下がるか、身体を後ろに反るか。
それとも前に詰めて頭突きでもするか……。
私の選択は身体を逸らせる!
だって左右から迫ってくるパンチなら片道しか通らない。
もし下を向いて足を狙うなら
私の腕は長いから弾く!
「なぁらさらに距離を詰めたらどうなりますかな!?」
「ぐふっ!?」
質感は木だけど正直オッサン顔がキモイと思っていたけど
さらに顔を寄せてきたのです。
ムッシュとやらの顔が私の顔の目の前にある……。
なら拳の軌道は多分私の顔の左右!
私の顔を左右から挟み込むつもりか!
かといって距離を詰められ過ぎて頭突きは出した所で
威力が足りない……。
「ならこれぇ!」
私は左右から来るムッシュの拳を
自らの肘で受け止める!
そしてムッシュの顔を私の拳で挟み込む!
ガチンと私の拳と拳が当たった時には
既にムッシュは身体を起こし始めていた。
「逃がさない!」
私が狙っていたのはここ。
その起こし始めた顔を蹴り上げるサマーソルト(とんぼ返り)キック(蹴り)。
私の足は今はニンジャフォームなのでゴリラ寄りで非常に短い。
だからこそこの位近くで出す方が顎を狙うにはちょうど良い筈!
『あ、マスター!』
うるさい!今丁度良い所なんだよ!!
『そのままだと直撃です!』
え?何に?顎に当たって良いんだよ??
確かにムッシュは身体を起こしていた。
それも普通の人体の骨格からすればありえない形に……。
だからこそ、このまま顎に当たると思っていたのです。
「おーっと、審判が試合を止めました!
これはきつい!ムッシュ選手は男性です!
そこにリラ選手の股間への一撃が入りました!
観客席の男性も軒並み辛そうな顔をしています!
女性である私は解りませんが、恐らくそれだけ痛いのを
皆解っているのでしょう!!」
私の短い筈の足は、ありえない身体の歪め方をしていた
ムッシュの多分、重要と思われる場所に
クリティカルヒットしたようです……。
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