第120話 最終試験 は トーナメント戦。
最終試験日1日目。
私は受験者に用意されている部屋へと入った。
1回戦、逆シードの8人全員がそこに集められている大部屋。
なんでも1回戦毎に1日と決まっていて
連戦による疲労を回復する目的もあって
今日は逆シードの8人だけなのです。
さらに王都の上に浮かんでいたのと似た画面が
大部屋のそこかしこに浮いていたのです。
「意外と近代的だ……控室で見られるとは……。」
そしてトーナメント1回戦から
試合は白熱していたけど、私は違う所で白熱していた。
「違う、ミニゴリラ!その露店じゃない!
もう1つ右っ!!」
試合当日、冒険者ギルドの地下演習場は満員御礼。
さらに冒険者ギルド内、王都内もそうだけど
酒場や料理屋に露店が立ち並ぶ場所にもこの画面があり
多くの屋台も出ていたのです!
『どこに試合当日に屋台に買い物にいかせてるのですか……。
しかも食べ物の露店とか……。
今行かせる必要性あります??』
いや、だって美味しそうじゃん!?
ミニゴリラに買いにいかせて、ゴリラコンテナに入れておけば
あとでも食べられるじゃない!
『それより対戦相手の動きとかを
見ておいた方が良いのではないですか?』
あー、そっちはどうでも良い。
下手に見て、予測の範囲を勝手に狭めて
隠し玉を出される位なら、最初から知らずに
自分の感覚を信じた方が勝てる気がするから。
『まさかマスターがこんなに自意識過剰になるだなんて……。』
酷い言い様だね。
せめて強くなったんだと言ってくれないかね?
っていうか勝てるつもりで挑まないでどうするの?
負けるかも、なんて頭に過ぎらせる暇があったら
私は強い!とでも自分に言い聞かせて
人と言う字を飲み込んでた方が役に立つと思うよ?
『ああ、ヲタ特有の人見知りですか?』
そういってくれるな、ニクジュバンニ。
こんな大勢の中で戦うとか恥ずかしいにも程がある。
それもゴリラ姿で……。
せめて自分に酔って戦って、それを忘れたいんだよ……。
『恥ずかしがっている余裕があれば良いのですが。
そもそも健康持ちですから精神耐性も非常に強く
マスターがあがるなどありえないかと。』
事実はどうでも良いのだよ。
所詮は気の持ちようだから、能力的にありえる、ありえないではなく
私がそう思っているか否かだけが全てなのだよ。
『フォーム変更時、下着姿ではなく全裸にでもなりますか?』
それはやめて!?
それが王都生中継とか超嫌なんだけど!?
『周囲の町や村にも中継されているそうですよ?』
もっとやめて!?
っていうかこれそんな広範囲な放送なの!?
『お金に糸目をつけなければ全世界生中継も出来るそうです』
試合前にそういうの言わないで!?
あ、持病の癪が……。
『健康があるのに?』
論破はやめてぇ!
これから試合なのに緊張するじゃん!?
あんた私が負けるように誘導してないよね!?
誰かから小金を掴まされてないよね!?
『最低でもウィンガード王貨1000枚は無いと……。』
動くの!?お金で買収されちゃうの!?
そこは否定するところだよね!?
『ゴリラも中々物入りなのですよ?』
ほぅ、詳しく。
『ゴリラだって女の子なのですよ?
化粧もすれば、おめかしもすれば、肌の日焼けは気になるし
歳をとれば皺は気になるし。
何より外出するのに飼育員さんに賄賂を渡す必要もあるではないですか。』
全然物入りじゃない上に、どうでも良いよね?
化粧してるゴリラとか見た事無いよ……。
20番を引いた為に1回戦は第4試合。
そして第2試合が終わった所で第3試合の2人が出ていき
第4試合の私と対戦相手だけになった所での出来事でした。
突然、後頭部に痛みが走ったと思えば
私は急な事でそのまま顔から床に倒れ込んだのです。
・〇〇〇視点
「っりゃ!っりゃ!!っりゃ!!!っりゃ!!!!っりゃ!!!!!」
俺はとにかく部屋から誰も居なくなった隙に
この1番人気のやつを襲う事にした。
どうせ見た目だけの1番人気だ。
俺はこいつの顔を知っている、ただの小娘だ。
かろうじて息さえありゃ良い。
殺しさえしなければ、こいつは試合に出られなくなる。
俺はこれ以上、Bランク昇級試験を受け続けるつもりもねぇ。
今回こそはBランクへと上がるんだ!
その為ならこの程度、問題無いだろう。
試合の範疇ってもんだ、こいつが強ければそうでもないだろうが
ここまで弱いなら問題ない。
たった1発で俺の得物であっさりと倒れ
そして殴打している今は起き上がる事もなければ
碌に動きもしねぇ。
おっと、これ以上頭は危険だ。
腕に足、身体にとしっかり叩き込んで
起き上がれねぇが死んでねぇ程度にしねぇと
俺が失格になっちまう!
さて、この位で良いだろう。
全く動いていねぇ訳じゃねぇ。
多少微動だにしている程度じゃ無きゃ駄目だ。
おっと、もう第3試合とやらが終わりそうだな。
俺は先に行くぜ?
まぁ……次会う事はねぇだろうがよ………。
・リラ視点
さて。
とりあえずあんま痛くなかったので
様子見に殴られてみた。
『そのユーチ〇ーバーの〇〇してみた的なのは
どうかと思いますよ?』
ん?痛くないから試合には問題無いし
そもそも控室で襲撃、って反則じゃ無いのかなって
最初は思ったんだよね。
『それで?』
ルール的に別に試合前の控室で
襲ってはいけません、なんて言われてないよね?
『それはルール以前に常識的な話なのでは??』
でも言われてないんだよね。
ならさ、これが駄目なのかどうか
確かめるにはこのままやられてみるって
選択肢が浮かんだんだよね。
『多分マスター位ですよ?
そんな馬鹿な選択肢が出てくるのは。』
馬鹿で結構。
だけど実際は口頭で言われていないから、で
済まされるなら今後も考えないといけなくない?
『それが許されるのに
控室が一緒の方が大問題ですよ?』
それとさ、不戦勝って負けも無い筈なんだよね。
『まぁ言われてはいませんけど
やはり常識的な話としてわざわざ言います?』
むしろそれも確かめたいって感じ?
何かこの世界は常識から疑ってかかるべきだと
最近思い始めてるんだよね。
試合内容は基本、殺す事は禁止。
多少骨が折れようと、結果死ななければOK。
もしその後死んだ場合は失格。
そして試合の終了条件は2つのみ。
1つが降参による敗北。
もう1つが舞台の場外への落下による負け。
但し落下、つまり地面についていなければ問題なし。
これだけだった筈……。
『まだ試合すら始まっていませんからね?
馬鹿な事考えてないでいきましょう。
もう第3試合終わってますよ?』
「………………それもそっか。
そういえば誰も呼びに来ないから
そっちが正解なのかな………。」
『そういうマスターもバイザーの下。
えらい悪い顔してますよ?』
そういうんじゃないんだよ?
やられた分をどうやり返そうか。
そう考えてたら、ただニヤけただけだからね??
『それを悪い顔、というのです……。』
少し待っても特に呼びに来ないので
私は起き上がって、スタスタと修練場へと向かったのです。
【ゴリラアーマーがレベル3にあがりました。】
【ゴリラアーマーに新フォームが実装されました。】
【ゴリラアーマーに新フォームが実装されました。】
【ゴリラアーマーに新フォームが実装されました。】
【ゴリラアーマーに新フォームが実装されました。】
【ゴリラアーマーに新フォームが実装されました。】
【ゴリラアーマーに新フォームが実装されました。】
【ゴリラアーマーに新フォームが実装されました。】
【ゴリラアーマーに新フォームが実装されました。】
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