第12話 G vs 赤青オーガ 前編
「グガァァァァ……。」
「グブゥゥゥゥ……。」
『慌てずとも、まだまだ食い物は沢山ある。』
3匹のオーガのうち2匹はオークビッツを洗い
手で潰しながら食べていた。
但し1匹が取っている行動は
オーガには無い行動だった。
火を起こし、オークビッツを焼いていたからだ。
「ウガァ!?」
「グガァ!?」
『こら!俺が焼いている最中なんだから食おうとするな!!』
「ウガウガガァ!!」
「グガグガガァ!!」
『あー、解った解った。また集落まで行って
オークビッツどもを取ってこい!
その間に焼けるだろうから、そうすれば
焼けたのが食えるだろ?』
「ウガ!」
「グガ!」
2匹のオーガはまたオークビッツの集落へと
向かっていった。
『マスター、恐らくオーガです。数2。』
「2?1匹足りなくない?」
『意図は解りませんが、2匹だけです。』
ズシンズシンと素早く駆けてきているのだろうか。
軽く地面が揺れているだろう状況に
私は息をひそめて待った。
そして現れたのは体表が赤と青。
赤鬼、青鬼と言うべき非常に巨大な鬼、赤オーガと青オーガ……。
オーガ2匹は集落の中で次々と亡くなったオークビッツを拾い上げ
両手に抱えきれない程のオークビッツを持っていこうとした。
『あれも変異種です、十分お気を付けを。』
ニクジュバンニのそんな言葉に私はバイザーを閉じて
木の上から飛び降り、オーガへと襲い掛かった。
「ゥホゥッ!!」
飛び降り、効果からのゴリラパンチ。
それが赤いオーガの咄嗟の腕の払いによって弾かれ
私は2匹の前に対峙する形に着地した。
「ウガァァァ!」
「グガァァァ!」
そして2匹が抱えていたオークビッツを捨てて
私に襲い掛かって来た。
どちらも手で掴みに来る形で、私はナックルウォーキングを
織り交ぜつつ、その手から逃れつつ
攻撃の機会を狙った。
「動き速いなぁ……。」
『オーガは力も素早さも兼ねている代わりに
命中精度が悪いだけでなく、撃たれ弱いのです。』
「何故……。」
『力があって、素早くオーガ自体にも攻撃が当たり難いからです。
攻撃される事に慣れていない分、痛みに対しての耐性が
あまり得られていない事が理由です。』
「なら隙を見つけて叩き込めば良いって訳だ!!」
『全力で行ってください。
痛みに弱いだけであって、皮膚や肉体はそもそも硬く
生半な攻撃では痛みすら発生しません。』
隙を見つけてパンチを叩き込む……。
数十秒の追いかけっこに近い動きの中で、赤い方に大きな隙が出来た。
「ウッホゥ!!」
ゴリラパンチが綺麗に入った、と思ったけどそうではなかった。
左の脇下に出来た隙に叩き込んだと思ったゴリラパンチが
赤オーガの右掌で遮られていた。
「ウガァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」
叫びのような大きな声、苦悶の表情と共に
赤オーガは受け止めた右掌を閉じた事で、私の右手が掴まれてしまった。
「ウガォアアアアアアアアアー!!!!!」
そして掴まれた腕ごと、地面に叩きつけられる直前
私は左のゴリラパンチを握っている右掌に叩き込み
寸でのところで赤オーガの手が開き、放り出されて少し地面を転がった。
「痛ったぁ……。」
『これでもゴリラアーマーレベル1の全力を出しています。
多少は我慢してください。』
「解ってるよ……。
でも感触は悪くなかったよ?」
赤オーガは右掌が多分折れている。
私の拳が赤オーガの右掌の骨を折った。
そういう感触みたいなものを、なんとなく感じ取れていたし
赤オーガもその痛みに耐えきれず
地面に膝を付く形で右掌を左手で包むようにし
大きな叫び声をあげまくっていた。
青オーガは、と言うとそれを見た途端
おろおろとし始め、どうすればよいのやら。
そんな感じにも見えた。
「今のうちに!!」
青オーガが混乱しているうちに私は高さ的に
丁度良いと思った膝辺りを狙うようにパンチを繰り出した。
しかしまたもだった。
赤オーガの手がすかさず伸びてきて、青オーガに当たる手前で
私の腕が掴まれた。
「グガァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」
「同じ轍は踏まないって決めてるんだよね!」
しかし私の腕はしっかりと青オーガに当たり
そのまま私は力を籠めて腕を引っ張ると
赤オーガが掴んでいた手から腕が抜けた。
『流石です、咄嗟に無限バナナの皮を
赤オーガの掌と腕の間に入れるだなんて!』
「これぞバナナピールパンチ!」
『ゴリラ成分が0になった気もしますけど……。』
バナナの皮がまとわりついてぬるっとなったパンチが
腕をぬめっとさせて掴んできた掌を滑り抜けて青オーガまで届き
引き戻す時もぬぬぬっと滑って抜けたパンチ。
但し欠点は腕がぬめぬめする事と、加減とタイミング次第では
抜けなくなるのではという懸念が考えられたくらいかな?
すぐに下がると、赤オーガは復帰したようだけど
青オーガは膝の辺り、と言うよりは
少し外れて脛に当たったらしく、脛を抱えて
転がって泣き喚いていた。
『ここからが本番みたいですね。
赤いオーガの魔力が一気に身体の中から外に出てきました。』
ニクジュバンニがそういうと赤オーガの腕が真っ赤に燃えだした。
『珍しいですが亜種や突然変異種と言うには微妙ですね……。』
「あの腕が燃えてるのは何?」
『火属性魔法の中の初歩とされる「火」です。
主に子供が魔法の修練用に使うもので
使っている本人は熱くありませんが、それ以外にとっては火そのものです。
集落の中にあった焦げた傷は恐らくあれによるものです。』
「つまり燃えるパンチ……。」
『但し火が燃え移るとかは無いのです。
精々火傷を負わせるのが精一杯の魔法です。』
「殴った所が火傷するって事?
厄介な……。」
『直撃を喰らえばそうでしょうが
このゴリラアーマーに通用するものではありません。
気にしなくても大丈夫でしょう。』
赤オーガが燃えた腕を私へと伸ばしてきた。
それも地面を叩くように振り下ろしてくるパンチとして。
それが次々と素早く繰り出され、地面に当たる度に
ズンズンと大きな音と、地面が揺れるような感覚と共に
少々焦げたような匂いすらしてきた。
『地面の枯葉に当たり焦げたものです。
そんな事に気を取られていると直撃を受けますよ?』
「五月蠅い、少し黙ってて。」
いくらゴリラアーマーが優秀で私が動けても
これは借り物の力でしかなく
今の私にはまともに目で追えているかも怪しいければ
正直避けるだけで一杯一杯だった。
さらに試しに地面に無限バナナの皮を置いても
それで滑る所か、バナナの皮が焦げ
乾いた状態に近くなり、ぬめっとした滑りが期待できなくなっていた。
『厳しいですね、オーガの弱点は頭ですから
あそこまで届く事も無いですし……。』
「それ早く言いなさいよ!?」
弱点は頭。
それが解っただけ。
しかし直後には、この状況の突破口を思いついたのです。
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