第117話 しゃる・うぃ・ごりら
拝啓、お父さんお母さん。
私は冒険者ギルドのBランク昇級試験へと挑んでいます。
だと言うのに、何故かその内容がおかしいのです……。
「はい、1、2、3!1、2、3!」
何故かダンスをさせられています……。
Bランク冒険者からは上級冒険者として
王侯貴族の依頼を受けられる、とは知っていましたが
まさかそのマナーをまず座学等で
教えられる所から始まるとは思っても見ませんでした。
言葉遣い、テーブルマナーは理解出来る。
しかし何故ダンス………。
「護衛対象に恥を掻かせない様、ダンスが踊れる事も
護衛役となった際の冒険者には欠かせない能力です!
これを王侯貴族の娯楽だの嗜みだのと馬鹿にするような者に
Bランクなど与える事は出来ません!
すぐにAランクへと上がり、Sランクへと挑むにしても
王侯貴族の後見と言う壁があるのです!
そこに到るにしても、今から言葉遣いにテーブルマナーと
覚えておいて早いなどと言う事は無いのです!」
そういう事っすか……。
今からやっておいて、後見を貰うのに役立てろ的な
意味合いも含めてこれなんだね……。
『ところでマスター?』
何?
『先程から踊っているのは何でしょうか?』
これ?上田わっし〇いだよ!
長野県上田市民が踊れはすれど
意外と歌詞を知らずに最後のサビ部分である
「わ〇しょい!わっし〇い!上田わ〇しょい!」って部分だけ
とりあえず合わせておけば、大抵なんとかなるんだよ?
サマ〇ウォ〇ズでも舞台が上田だから出てきたけど
こちとら生まれが上田だからね!
お勧めは別名腐女子豆腐とも言いたい「風屋豆腐〇」だよ!
私の菩提寺、あの真田幸村の父である
真田昌幸が眠る真田長谷寺の手前にあるんだけど
腐女子が萌えざるを得ないノボリが特に圧巻だったんだよ!
見た時はもうどう見ても腐女子向けの武将ののぼりとか
立ち並んでて圧巻だったんだから!!
あ、勿論お豆腐も美味しいよ?
『それはダンスと言うのでしょうか?
あとお豆腐はどうでも良いです。
むしろ上田と言えばみ〇ゞ飴では?』
BON―DANCE(盆踊り)だから間違っていないのでは??
私的にはみす〇飴はお土産物の常連様で高級菓子って位置付け。
家賃が月1万円のボロボロ木造一軒家に住んでいた我が家としては
手の届かないお菓子だったよ……。
『何かドンドンと話題が逸れていますね。』
はっ、上田わ〇しょいの話だった!
これ凄いんだよ!?盆踊りとかでも流れるけど
まず曲調が早すぎて6番まであるのにすぐ終わるんだよ!?
あと歌詞がシンプルに思えるけど実は作詞し人が凄い人で
ラムのラブソ〇グとかトライダーG7のテ〇マとか最強ロボダイオ〇ジャとか
a・chi―a・chiアドベンチ〇ーとかの作詞したんだよ!?
日立〇樹とか、青雲の〇たとか、か〇ぱえびせんの歌とか、サト〇ムセンの歌とか
エバラ焼肉〇たれとか、石丸電気〇歌とか、しあわせ〇て なんだ〇けって
明石家さ〇まさんが歌ったのとか、パ〇!とさいでりあとか。
あ、フォ〇リ〇ブスのブルド〇グとかさ!
『マスター、話を戻すつもりありますか?』
ありません!
そもそも私にダンスなんてさせようってのが駄目駄目だよね。
だって見た目ゴリラだよ?
こんなのがダンス踊るってどういう事さ。
『さっきそれで怒られた挙句、ウォッチフォームにドレスで
今踊ってるでは無いですか。
それで上田わっし〇いを踊るとかまた怒られますよ?』
「じゃあベーシックフォームになってモンキーダンス、もとい
ゴリラダンスなんてどうかな?」
『マスター、その頃まだ生まれてませんよね?』
「ならこっちだよね!マーチングバンドフォーム申請、マテリアライズ!」
『マーチングバンドフォーム承認、マテリアライズ!』
私の姿がかのオレンジの悪魔たるマーチングバンドの服装に!
「ゴリラ武器、ゴリラッパ!!」
そしてラッパがあれば、これで私も京都〇高等学校吹奏楽部員に!!
そもそもマーチングバンドフォームはゴリラッパから
生まれてきた訳でして!
このセットなら踊りながら演奏が出来るのでは!?
さぁ、響け!ユーフ〇ニアム!!
トー
フー
「………やっぱトーとフーの2音しか出ないんかい!!」
ゴリラッパを叩きつけた事で、一斉に視線が集まった。
『いえ、上田わっし〇いの頃からずっと見られてましたからね?
あとマスターのはどれもこれも1人で踊るものですよね??』
「さっきから1人で何をしているのです!
ダンスと言えばペアダンスに決まっているではありませんか!
そこの隅で落ち込んでいる殿方を放置したまま
あなたは何をしようとしているのですか!」
「ペアダンスねぇ……。」
「何か不満でもあるというのですか!?」
「ならせめて組み合わせは身長に合わせていただきたいのですが?。」
部屋の隅で落ち込んでいる男性冒険者は
そもそも2メートルくらいはありそうな非常に背の高い方なのです。
私の身長はウォッチフォームで148センチしか無いのです。
50センチ差でどうペアダンスをしろと?
『珍しくマスターの言い分があっています。
ペアダンスの身長差は10センチ程度まで、と言われているようです。』
「……………貴方の身長に合う殿方が居ないのです。」
「合う人が居ないからじゃあ極端に離した身長差でお互いを組ませました
って現状の方がよっぽど酷いと思いませんか?
これ一応試験、ですよね?公平公正であるべきでは?」
「そうですか、でしたら……。」
「のぉー!のぉノーのぉ!ぎぶギブぎぶ!こんなもの履けるかぁ!!」
出されたのは20センチもの高さがあるハイヒール……。
「やはり履けたとしてもこれでも170にすら届かないわね……。」
「どこに20センチのヒールなんて履く人が居るんですか!!」
「こちらに30センチもありますが?」
それは殆どバレェでつま先立ちするような。
最早靴底が垂直と言っても良い位で
靴とすら呼べないようなものだったのです。
「いやいやいやいやいや、ヒールって元々汚物を避ける為に
作られた履物だよね!?これじゃ超つま先で踏んじゃうって!?
汚物が中入ってきて本末転倒だよね!?」
「それとダンス、何の関係が?」
まぁ、そう言われると関係ない。
そして当然履ける訳もないし、そもそもただヒールの高さが
あるってだけで私の足のサイズに全く合っていない……。
ソニックさんにいただいた服などに加えて
靴もあるけど、あれは元々が22センチなので非常に小さく
あそこだから置いてあった、とまで言われたくらいだと言うのに……。
「とりあえず、まともに手すら繋げない状態で
ペアダンスと言うのはいくらなんでも無理があります!!」
冒険者ギルドの職員さん達が確かに手を繋ぐ事すら
難しい現状を鑑みた結果……。
「…………………………。」
「…………………ウホッ。」
『流石です、マスター!
ベーシックモードでのペアダンスだなんて!
全メスゴリラの夢ですよ!?』
結局私だけドレス姿ではなく、ゴリラ姿でのダンスを許容されたのです。
まぁ、腕長いからね……。
但し腕の長さが長くなっただけであって
踊り難い、と言う点は改善されていない為
恐らく酷い点数だっただろう、と思っている……。
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