第116話 G と お米の国
あれから私は町を見つけ、Bランク昇格試験が
行われる領都か王都を聞いた所、今いる場所からであれば
王都が最も近い、と言う事で向かっているのです。
「あと1週間んんんんん!!」
『だから早くした方が良いと……。』
なんでも試験の申込期限があと1週間で
さらに試験はその3日後からと言う
またもや緊急事態バリな状況。
これを逃すと3ヶ月先まで無いそうです……。
「やだっ!絶対間に合わせる!だって時速80キロで走れるんだよ!?
ここから王都まで1200キロってようは15時間だよね!?」
『普通、駅馬車換算で10日位の旅程ですからね?
冒険者ギルドの受付の職員さんマジ切れしてましたよ?』
「間に合うんだから良いじゃない!
っていうか昇格試験の推薦期限が無い以上
Cランクから落ちなければ良いんだからさ!」
『そういって、ついさっきもうじき登録抹消と怒られて
急いで薬草一束引っこ抜いてきた所ですよね?』
「間に合ったんだから良いじゃない!」
相変わらず私は、昇格試験の日程に緊張感が無いのは
自覚しているものの、やっぱり宿題はすぐやるべきだと
反省はしているのですよ?
『そういって夏休みの1週間前から描いた観察絵日記は
正確に言えばアウトですからね?』
「ははははは!さっさと枯らしてしまったんだから
嘘じゃないからセーフ!
っていうかなんで夏休みに花の観察日記なんてものを
書かなければいけないのか、今なら小一時間問えるよ!?」
『社会に出て実用性がある事だけを学んでも
応用が利かない人間が出来るだけですからね?』
当然、ナックルウォーキングの速度の所存により
しっかりと夜は木の上で睡眠を取り
2日後にはこの国、ライスパディフィル王国の王都タニーガに到着。
「ヤバい!これは予想していなかった絵面!!
」
なにしろこの国、主食が麦ではなく米。
市場には多くの米が並んでいるのだからワクワクが止まらなかった。
「おおおおお!しかも安い!」
『マスター、しっかりゴリラ鑑定しないと
すぐに落胆しますよ?』
「え?」
ニクジュバンニに言われてゴリラ鑑定。
その結果市場にある15パーセント程
いわゆるジャポニカ米とも言える短粒種。
日本で見かける普通に米、と呼ぶものとうるち米、もち米があった。
そして実に8割程が実にインディカ米と呼ばれる長粒種。
有名なものとしてはタイ米。
そして5パーセント程がジャバニカ米と言う私も知らなかったもので
大粒種とも言うのだとか。
見た目は太ったジャポニカ米だけど味や調理法は
インディカ米に近いものだとか。
「つまり私が求める米は2割くらい?」
『うるち米やもち米などは極端に少ないですね。
そもそも地球でも生産されている8割はインディカ米です。』
「こういうのはあれだけど、私平成5年の冷夏の大不作で
タイ米炊いて食べたけど、匂いが無理だった……。」
『女性には多いようです。
ジャポニカ米であっても、妊娠するとお米の炊く匂いが駄目等。』
「あるあるらしいね、私にその経験は無いけど……。
っていうかなんで気候の違う国の米がこんなにあるのかね……。」
『どうやら国が縦長で温帯のジャポニカ米、熱帯のジャバニカ米。
そして比較的暖かい場所でインディカ米が作られているようです。』
「まぁ好き不好きの問題ってより習慣的な問題が一番大きくて
その次に恐らく個人の好みの問題だよね。」
『そうでしょうね。
で、マスターは何故王貨を握りしめていらっしゃるのでしょうか?』
ゴリラコンテナからウィンガード王貨を取り出したのを
ニクジュバンニに見つかったようだ……。
「当然!私はジャポニカ米に生きる!!
この身体には日本の米とそれを作る米農家への愛情!
そして血には尊敬と感謝の念が流れているのです!!」
『つまりは商業ギルドで換金してから
ここのジャポニカ米を買い占めるおつもりですね?』
「とも言う!」
いやだって、日本人と言えば炊いたお米に味噌汁世代ですよ?
朝食にパン?
食べるけど出来ればお米が良い。
炭水化物ダイエット?なにそれ、美味しいの?
そもそも太らなくなった私にとって
炭水化物は脳のご飯たる、ぶどう糖の原材料!
ぶどう糖が足りなくなれば頭の回転も悪くなるのです!
昨今はご飯抜き、人工甘味料ばかりとか
そういう食事も聞くけど、私には無理だね。
むしろ果糖の方が太りやすいとか聞くから
そっちを重視してる位だよ……。
『好きな飲み物が無糖のカフェオレとコーラと言う
両極端なマスターとは思えない言葉ですね。』
「コーヒーは無糖派!ソフトドリンクは炭酸飲料!と
分けてるだけだよ?むしろ牛乳大好きっ子だから
脂質の方がヤバい気がするけど
今の私には無問題!
太らず、いくらでも食べられる!ビバマイ能力!!」
『この世界一の喜びの所申し訳ありませんが。』
「はい?」
『先程からガンガンとジャポニカ米が売れてますよ?』
「ナンデスト!?」
そして私は商業ギルドへと駆け込み
手にした膨大な資金を背景に、市場のジャポニカ米を根こそぎ買った。
買おうとしていた人には悪いと思うが後悔はしていない……。
どこでも買えるのであれば買い占めイクナイ、と思うけど
再度この国に来るかすら解らない現状。
他所とは値段が段違いに安いので
買い占める以外の選択肢などありえないのです!!
スーパーの安売りで一家族様おひとつ限り、と書いてあって
それを一家族で複数買ったり、レジに並び直したりするよりは
私にとっては健全、かつそこまで酷くないと思うのです!!
今は有事でも無いのですから!
そして私の血肉の為に、米は必須なのです!!
「ふふふ、これで思う存分お米が食べられる……。
お餅も作ろっと。」
『なぁーにぃー!殺っちまったなぁ!』
「ニクジュバンニは黙ってて……。」
『ゴリラ!』
「合いの手じゃないからね!?
お餅を作るのに必ずしも臼と杵は必要ないんだよ!!」
『手捏ねですか?』
「ハンバーグみたいな言い方ぁ……。
まぁ間違ってはいないけど。
そもそも蒸して搗くように捏ねれば良い訳だよね?」
『つまり熱々ぶよぶよになったもち米を
手で持ち、捏ねて拳で搗くのですね!』
「ぶよぶよじゃなくてせめてもちもちで……。
でも実際、言葉にすると荒っぽい感じしかしないね。」
その日の夜。
私は餅を作ろうと思った所、餅とり粉を作っていない事を思い出し
ゴリラ能力のすりばちセットで
ゴリゴリと生米を磨り潰して餅同士がくっつかないようにする
餅とり粉、つまりもち米の米粉を作るに留まったのです……。
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