第108話 G は ゴリラ の G
「ミニゴリラ!そして全員ゴリ光!」
日の届かない深海に、ミニゴリラによる光の舞台を作り出した。
「来なよ、前哨戦なんだからさ。
死んでもあんたには問題ないだろう?」
「人間風情が生意気な!」
「違う!ゴリラ風情だ!」
身の丈の差による腕の長さなんて
ゴリラアーマーの前では然程の問題にもならない。
私からすればただの2メートルを超える男で
目と口が光っているだけの男だ。
そして相手はその男を経由してただ話すだけで
覚悟も、気概も、感じられない雑魚だ!
「だがここは深海1万メートルの海の底だ!
殴るしか能のない貴様がこの抵抗の強い場所で
どう戦うと言うのだ!!」
いや、それはあんたも一緒だろうが……。
だけどね……。
「経験のない奴が語ったところで、そりゃただの机上の空論でしょ?」
私は身体を捻り、右腕を左に伸ばして
その手首を左手で掴んだ。
そして右腕を前に出すように力を籠めて
左手はその右腕が飛び出さないように力を籠めた。
左手さえ離せば力を籠めた右腕が飛び出す。
何も拳は正拳突きだけが拳じゃない!
裏拳だって立派な拳だ!
「ゴリラ裏拳!」
飛び出す力を押さえ付けていた左手を放せば
右裏拳が飛び出していく、いわゆるシャコパンチ!
生きたシャコに下手に触れれば
指の骨が折られると言う位、力が強い。
バネの様な力を溜めたシャコのパンチは
貝すら叩き割る強力な1発!とネットサーフィンしていて
見かけた事がある!
しかも実は水中の方が威力が高い。
それはパンチの威力がありすぎて、空気中で空振りすると
その威力で自らを傷つけてしまうから、とされているとか。
多分だけど私も力があり過ぎて
意識的にパンチの威力を抑えている可能性が高い。
しかしここには海水と言う水がある!
右腕が前へと飛び出していくのに合わせて
私の身体の捻りをも戻していく!
そしてガングレリの顔へと裏拳を当て
そのまま右へと払う!!
裏拳が入っても、ガングレリはあまり吹き飛ばない。
そりゃそうだ、吹き飛ぶ事にだって抵抗がある!
「そしてこれが正真正銘のゴリラパンチ!!」
左腕が後ろに引っ張った影響で身体の後ろに下がったのを
今度は身体の捻りを戻すのに合わせて
2発目のパンチの威力を増すのに利用する!
ガングレリの頬に右の裏拳が入り
身体が軽く吹き飛んだところに
今度は左の拳を叩き込む!
上から下へ!
今度は逃げ場の内容に、海底に叩きつける様に!
裏拳が入ったばかりのガングレリの頬に
私の左拳を入れ、払い腰のように身体を払い
全ての威力を一点にぃ
「籠めるぅぅぅぅぅぅぅ!!」
そしてそのまま押さえ付け
リンゴを握ったかの形に右手を握り開く!!
「私のこの手がゴリッと唸る!ガングレリを没せとウホッと叫ぶ!
神滅!Gクラッシャー!!」
右の拳を心臓の位置へと右手を叩きつけ
そのままガングレリの身体へと指を埋没させていく!
私の右手には鼓動していない心臓。
そしてその中に、硬い核心の感触と
その心臓を模した形が伝わってきた。
「クレンチドォォォォォ・フィスト!!!!!」
そして一気に握りつぶす!
それと同時にガングレリだったものは、心臓の位置を中心に
徐々に砂のように崩れ始めた。
「はっ……満足したか……?」
崩れ始めはしたものの、まだガングレリだったものは
動きはせずとも喋りはした。
「いや、全く。だけど覚えておきなさい。
あんたもいずれこうなるんだってね。」
「ありえないな……。」
「そんな事はないさ。
だって私の記憶が確かならば………。
覚悟の無い奴は殺しなんてしちゃいけないんだよ?
私は自分がこうなる覚悟は出来ている。
ガングレリもこうなる覚悟があるのは……当然でしょ?
私がこうなるのか!ガングレリがこうなるのか!
2つに1つなら、ガングレリがこうなるんだよ!!
いや、意外と3つ目の選択肢の可能性もあるかもね。」
「3つ目……?」
「ガングレリと私、どちらもこうなる可能性だよ!!」
私はそれ以上ガングレリと話すつもりはなく
左手でガングレリだったものを払い、顔を崩した事で
ガングレリは二度と喋る事は無かったのです。
「さてと……。
あとは海面に居る連中か………。
ニクジュバンニ?」
『………………………………………。』
「ニクジュバンニちゃん?」
『………………………………………。』
「あんた私が戦ってるのに堂々と寝てるんじゃないよ!」
『どこに寝ている要素があるんですか!!』
「なんだ、起きてるじゃないか。
返事が無いのはしかばねの知らせっていうんだよ?」
『便りが無いのは良い便りの間違いですよね?
既読スルーじゃあるまいし、勝手に私を
殺さないで貰えますか?』
「なんだなんだ、調子が戻って来てるじゃん?
その調子だよ。」
『何がその調子ですか!!
これまで変だ変だと思っていましたけど
何故これまで黙っていたんですか!!』
「え?そりゃ知らなかったもの……。」
『はい?馬鹿にしてますか??』
「いや、全く。っていうか記憶辿れるなら
辿ればいいじゃん。
説明するよりそっちの方が早いって……。」
マスターがそう仰るので
マスターの記憶を追っていったのです。
確かにマスターは知らない事ばかりだった。
それは邪神、そして前の創造神様が
マスターに記憶の制限などをかけていて
私が接続できなかった記憶領域。
その殆どが今回の事ばかりだった。
マスターはゴリラの神様が亡くなっている事に
薄々は感じていたものの、確信はなかったようだった。
それらも含めて記憶の中でも制限された中に
保存されていて、マスターが知らなかったと言うのは
間違っていないし、私に語る事が出来なかった事も理解出来た。
そうだ………。
私はマスターを殺した。
それはゴリラの神様の神託によるものだった。
思えば非常に変な神託だった。
しかし神様が直接地上に手を下せば邪神となってしまう。
私達眷属はそこに疑問を持つ事が無かった。
いや、わすれていたのかもしれない……………。
それが今の創造神、ガングレリによるものだとは
全く気が付かず、そしてこの世界にマスターを
呼び寄せてしまった。
そしてマスターの隠れた記憶に触れた事で
私は理解した。
マスターは毛先の程も私を恨んでいなかった。
マスターはむしろあの昏睡していた中ですら
私を按じて下さっていた。
何故かは解らない……、だけどそういう記憶だ……。
そしてこの出来事について按じていた。
ゴリラの神様の眷属は今や私だけだからだ……。
何故、私だけが。
それは私だけが身体を持たず、このゴリラアーマーに
入り込む事となり、そして護られていたからだった。
ゴリラの神様の残してくれた神器の力によって……。
そしてマスターがこれからどうするのか。
その全てが見えてしまった。
マスターは………これを本当に快諾したのだろうか。
いえ、確かに快諾している。
だけどこれは……………。
「はいっ!そこまでー!」
『え?』
突如マスターの声に、記憶へのアクセスが途切れた。
「あんたさぁ、個人情報保護法とか
地球にいたから知ってるでしょうが。
世の中、知って良い事と悪い事がある事位の
常識的な分別くらい持ってるでしょ?
そういう事してると、あんたが動物園から
バナナ盗んでたのバラすよ?」
『!?』
「って事で触れて良いのはそこまで。
で、あんたどうすんの?進むの?進まないの?
終わった事はもうどうにもならないんだよ?
時間が巻き戻せるならそもそも私を生き返らせろって話であって
終わった事でどうこういうなら最初からやれって話だよね。
私もウィンガード王国で自責の念にかられたのを覚えてはいるよ。
だけど、そんな事で足を止めてる暇があるなら
動けば良いって思ったんだよね。だから私は前に進むの。
あんたは進む?それともここで足踏みする?
神様だろうが殿様だろうが雷様だろうが死ぬんだって私は知ってる。
でも記憶にはちゃんと残ってるんだよ。
土曜8時と言えば6か8かで悩む中……」
『あの、マスター?』
「何?」
『いつからオレたちひ〇うきん族と〇時だョ!全員集合の話に?』
「……………あれ?」
『…………………進みましょう。
それが眷属として、マスターの支援役としての務めかと。』
「いいよ、もう相棒で。
でも私が〇京さんの立ち位置ね。」
『シーズン途中で降板する位なら
相棒でなくて角〇課長、じゃなかった。
支援役で良いです……。』
私はともかく前を向いて、進む事にした。
かなり変なマスターと共に……………。
【ゴリラアーマーがスキルポイント1を獲得しました。】
スキルポイント合計:29
残りの核心 あと89個。
残りの母なる核心 あと11個。
邪神の復活まであと3800年?
星5点満点で「面白い」や「面白くない」と
つけていただけると、作者が一喜一憂します!