第104話 G と 海上の罠 前編
「チッ……、折角良い気分で帰ってきたのに!!」
私はターボカンクを倒し、そのまま東オーディン大陸へと
戻ってきた所、小型の高速魔導船からの襲撃を受けていた。
それも1隻2隻、なんてものではなかった。
見えている限りで30隻以上は居て
その全てから魔導銃と思しきもので射撃されていた。
身体の様々な部分に当たるも、思った程の痛みは無いものの
私の進路を阻むように素早く連携を取りながら囲んでいて
ニンジャフォームではあるものの、海を渡っている私にとっては
急激な方向転換が出来ず、その囲みを抜け出せずにいた。
そして何より、2人の人が海の上を歩いて
私の所にやってきた事が何より衝撃的だったのです。
「お前がリラか……。」
身長で言えば2メートル以上。
丸いサングラスのようなメガネをかけたスキンヘッドの男が私の名を呼んだ。
「……………あんた誰?」
「アクオルス」
「……………聞いた事のない名前だね。」
「宝瓶宮のアクオルス」
オラクル騎士団の聖道十二宮神……。
「僕も紹介させてもらおうかな。
オラーコロファミリーと言えば解るよね?」
見た目は子供、頭脳は……?
じゃなかった。
もしやガングレリ・F・ラブアセタデユ子爵?
「また変な組み合わせだね……。」
「そうかい?君はとっくに気が付いているんだろう?
オラーコロファミリーとオラクル聖王国の関係性を……。」
「やけに直接的な言い方だね。」
「僕は無駄が好きでは無いんだよ。」
「つまりどちらも同じ穴の貉か……。」
「その言葉は知らないけどさ………。
ちょっと調子に乗り過ぎだよね?
神殿の追放に、今度は東オーディン大陸にも出張ってくるなんてさ。
まぁ、君はどうやら水が苦手らしいね。
こちらのアクオルスは水が大の得意だそうでね。
丁度良いから君にはここで
亡くなってもらおうと思ってるんだよ。」
ガングレリの言葉に、私とガングレリ。
そしてアクオルスだけを囲むように
水の半球体が出来上がった。
これは閉じ込められた、って考えるべきかな??
『母なる核心の存在を確認しました。
この水の壁がそれによるものであるならば
そう考えるべきかと。』
「じゃああとは2人でじっくりと話し合ってよ。
僕は流石にただの一領主であって
戦いは得意じゃないんでね……。」
ガングレリがそう言い、壁に向かうと
その場所だけが開き、外に出ていった。
その場所を駆け抜ければ、なんて事を
許してくれる事も無く、私の前にアクオルスが立ち塞がった。
「宝瓶宮のアクオルス、ね……。
双魚宮のビスケッティの敵討ち?」
その言葉に一言も答えず、アクオルスは
私に攻撃を仕掛けてきた。
それもその攻撃は水。
海水がそれぞれ腕のような形を模し、次々と
海面から私に向かってくる!
両腕を縦に並べ、防御姿勢を取るも
それぞれの海水の腕は防御をうねる様に避け
その全てが私の身体に刺さる様に命中した。
「っはッ!?重い……。」
水とは思えない、というか水だから重い??
とにかく1つ1つが笑えるような攻撃ではなく
激しい痛みを私に与えてきた。
それが次から次へと海面から現れ
そして私の身体に突き刺さってくる。
手で防ごうとしても、それを渦巻いたりして
避けながらお腹に、背中にと突き刺さってくる。
ゴリラアーマーがそれで破損はしなくとも
そのダメージは私の足を鈍らせるには十分だった。
しかもニンジャフォームはそもそも力が半分に下がる。
どうやら防御の面でも下がり、痛みが足を鈍らせる上に
現状、海上に居る私はニンジャフォーム以外のフォームを取れない。
ニンジャフォーム以外で水の上は歩けないからね……。
よく考えられてる、と褒めるしか無かった。
「だけどあんただけが遠距離で戦えると思わない事だね!
ゴリラ武器、ゴリライアット・ガン!」
私も負けじとゴリライアット・ガンを次々と撃つけど
それがあっさりと海面から伸びた腕に遮られていく。
『やはり弾が岡〇三郎商店の「ゴリラの〇くそ」では
水を貫通するのは難しいようですね。』
「誰さ、こんな仕様にしたの……。
ならこっちの出番だよね!『分身の術』!!」
ニンジャフォームなので、ミニゴリラ達もニンジャ仕様!
次々とミニゴリラ達がアクオルスへと仕掛けていき
アクオルスは海面から生み出す腕で
次々とミニゴリラを排除していく。
「ゴリラ武器『バナナックル』!!」
そして私がバナナックルを装備すると、ミニゴリラ達も全員
バナナックルを装備状態へと変わった。
「防御が避けられるなら、全部滑らせてやる!!」
襲ってくる海水の腕をバナナックルで滑らせていく。
けど、すぐに方向転換してまた向かってくる。
その動きに徐々にバナナックルが間に合わなくなっていった。
「ならこれでどうだ!ゴリラ武器『バナなまくら刀』!!」
『マスター!?』
私はバナナックルをバナなまくら刀へと変えた。
「ちぇすとぉ!!」
そしてこの海水の腕をこのバナなまくら刀で切る!
このバナなまくら刀は何も切る事が出来ない刀。
つまり水を切る事も出来ない。
それは水をかき分ける事が出来ないと言う事。
そして私のイメージ通りの結果が出た。
海水の腕に刃を当てても切れない、水をかき分けないのだから
海水の腕はそのまま刀の勢いに引っ張られていく!
腕の途中なら、本当の腕の途中に木刀が当たったかのように
その方向に腕が引っ張られる!
海水の腕はバナなまくら刀が当たった事で決して水飛沫ともならず
まとまった形のままねじ伏せる事が出来たのです。
ただ黙ったままのアクオルスも
そのままの状態を放置しておくとは思っても居なかった。
海水の腕は一旦全てが海面に入ったと思えば
今度は銃弾のような、丸い水滴状になって
私に向かって海面から次々と発射されてきたのです。
「ゴリラ武器『ゴリラグナロク』!」
むしろここなら水平線まで叩き切ったとしても
決して問題にはならないだろう。
そう判断し、丸い水滴状の海水に対して。
そしてアクオルスごと切るように、私はゴリラグナロクを振るった。
まず、周囲に切ってはならないものが存在しないか。
それを気にしながらでなければ使えないゴリラグナロク。
幸か不幸か、ここで振るえば少なくとも巻き込まれる人は居ない。
このゴリラグナロクの力を十分に発揮出来る場所、海上。
丸い水滴状の海水が、未だ次々と飛んでくる中
水が切れて、すぐに戻ったのかは解らない。
それこそ剣筋の分しか切れないからだ。
だけどアクオルスの首と身体は、既に分かれ
頭だけが静かに海の中へと沈んでいったのです……。
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