表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生徒会長は下着泥棒でした。  作者: 熊谷葡萄
4/5

4


「どうしたの? なんだか、キョロキョロしているね」


 由香は言った。


「キョロキョロしたくもなるよ。だって、由香と帰っているんだよ」

 

 昆布は言う。


「私、何か悪いことしたかな?」

「悪いことはしていないと思う」僕は首を振った。「だけど、目立ってしまっている」

「どうして?」

「由香が人気者だからだよ。可愛いし、明るいし、生徒会長だし。……だから、僕みたいな奴と一緒に帰っちゃダメだよ」

「私は人気者じゃないよ。もし、人気があったとしても、昆布と帰って人気が落ちる。……その程度の人気だったら、そんな人気はいらないよ」

 

 由香は笑った。


 その程度の人気? 由香はわかっていない。人気というのは、脆いものだ。綻びやすいものだ。芸能人ですら、不祥事を起こしたら復帰が難しくなる世の中だ。


 人気者という地位を軽くみないでほしい。とても重要なことだ。人気は少しでも不信感があると、すぐに不がつく。不人気になってしまう。


「私は昆布と帰りたかった。だから、一緒に帰ろうと言った。それがダメなんて、おかしいよ」


 由香は大きな声で言った。


「いや、おかしいよ。僕は変な人だからね。一緒に帰ると、不信感を抱かれるよ」

「変な人? 犯罪でもしたの?」

「いや、何もしていないよ」

「じゃあ、変な人じゃないよ。法律を犯していなかったら、普通の人じゃない?」

「犯罪はしていない。だけど、変わり者ではあると思う。それに多分、隠キャだと思う。由香は陽キャ。だから、あまり僕と関わらない方が……」

「楽しく会話することの、何がいけないの?」由香は言った。「隠キャとか陽キャとか、変なカテゴライズだよ。同じ人間でしょ? しかも、話す言語が違うというわけではない。それに、私達は幼馴染だよ? 会話してまずいことなんて、何もないよ」

「そうかもしれないけど……」


 正論だと思う。

 変なカテゴライズは必要ない。確かに、そう思う。

 だけど、やっぱりダメだと思う。理屈ではなく、心がそう言っている。由香と関わっちゃいけないと言っている。


「私と昆布が関わっちゃいけない? そんなのおかしいよ。私と関わっちゃいけないなら、まだわかる。でも、昆布と関わっちゃいけない理由はない」

「ちょっと待って。どうして、由香と関わっちゃいけないの? 由香は完璧な人間じゃん。勉強もできるし、容姿もいい。おまけに話もうまい。……関わっちゃいけない理由はないと思うんだけど……」

「それは、私のことをよく知らないからだよ。私は私のことをよく知っている」

「まあ、自分のことは自分が一番知っているよね」


 そうとも限らない場合もある。

 他人の方が、自分のことを知っている場合もある。だが、内面的なことなどは、自分しか知らない。他人に自分の心の声は聞こえないからだ。


「私は、あまり人には言えないことをしているんだ!」


 由香が楽しそうにいう。


 人には言えないことをしているのか。だったら、楽しそうに言うな、と思う。


 まあ、大したことではないだろう。じゃないと、こんなに明るくは話せない。そこまでの秘密ではないはず。


「よかったら、家に遊びにきてよ」

 

 由香は言った。


「え、家? 誰の?」

「もちろん。私の家だよ」

「ど、どうして、家に遊びに行くの? どういう意味?」


 昆布はテンパってしまう。女性に家に誘われたことがないからだ。


「別に変な意味じゃないよ。ただ、遊ぼうって思っただけだよ」

「遊ぶって、何をして……?」


 どうしても、変な意味に聞こえてしまう。これは、童貞特有の妄想かもしれない。


「遊ぶというより、ちょっと、見せたいものがあるんだ」

「何を?」

「それは、今は言えない。直接見てよ。きっと、驚くから」


 由香は目をキラキラさせている。

 なんだか、楽しそうだ。


「驚くものなんだ。見てみたい、気もするかな」


 昆布は言った。

 一体、何を見せたいのだろう?



「ただいまー」


 由香は言った。


「お、お邪魔します」


 昆布は言った。そして、由香の家に入った。


 本当に来てよかったのだろうか? と、昆布は思っている。由香とは幼馴染だ。だけど、仲が良かったのは小学生のときくらいだ。中学生になってからは、昆布は由香を避けるようになった。


 思春期はそんなもんだ。女性を意識していない小学生の頃は、仲良くできた。男性も女性も一緒だと思っていた。だけど、思春期になってからは違う。どうしても、女性を意識してしまう。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ