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生徒会長は下着泥棒でした。  作者: 熊谷葡萄
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 だから、面白いことを体験しない方がいい。その方が心にいい。刺激(面白いこと)を求めてしまうと、刺激中毒になってしまう。


 冗談を言っているわけではない。刺激は追い求めない方がいい。本気でそう思っている。


 心が動くようなことがなければ、生きていける。何も期待しなければ、何も生まれない。何も生まれないからこそ、安定が手に入る。動かない心が作れる。


 刺激は終わりがない。一度刺激を味わったら、また刺激がほしくなる。

 これは、どんな人間でも同じだ。


 終わりがないとどうなるか。


 大きな刺激を求めるために、犯罪に手を染めるかもしれない。もちろん、可能性の話だ。それに、刺激は必ず生まれるものだ。

 昆布だって、刺激が全くない人生というわけではない。だけど、極端に少ない。だけど、不幸せではない。刺激がないイコール不幸せではないんだ。

 不幸せではないけど、幸せでもない。

 


 昆布は教室にいた。


 誰かがマックのハンバーガーを教室で食べたみたいだ。教室にファーストフード店のにおいが充満している。昆布にとっては、においというより臭いだった。つまり、あまり好きなにおいではない。


 でも、ハンバーガーは好きだ。


 ずっと前から思っていることがある。それは、教室でご飯を食べると、においが残るのでやめてほしい……ということだった。


 しょうがないことだとは思う。だが、教室でご飯を食べないでほしい。これは願望だ。そして、本音だ。


 この学校には食堂がある。そこでご飯を食べてほしい。昆布もご飯は食べる。昆布という名前だから、昆布は食べないようにしているが(共食いになってしまう)、それでもご飯は食べる。だけど、教室では食べない。


 お腹がいっぱいになったときに、教室に戻る。ご飯のにおいが充満している。お腹が空いているときはいいにおいだと思う。だけど、お腹がいっぱいのときは臭いと思う。


 些細なことだ。だけど、イライラしてしまう。なるべくなら食堂でご飯を食べてほしい。


 昆布がそんな風を思っていたときのことだった。


「元気?」

 

 幼馴染が声をかけてきた。


 由香だった。ツインテールの髪型だ。ツインテールは漫画やアニメでよく見る髪型だ。現実でしている人はあまりいない。少なくとも学校ではいない。


 だけど、由香はツインテールだった。


 ずっと下を向いて机を見ている昆布。そんな昆布のことを、由香は元気に思えるのだろうか? 


「元気だよ」


 まあ、こんなものは社交辞令のようなものだ。元気じゃないと答えたら面倒なことになる。だから、元気と答えた。


「そんなに顔色が悪いのに?」


 由香は首を傾げる。


「顔色だけで、人は判断できないよ」

「私はできるよ」

「あ、そうなんだ……」

「うん。昆布の考えていることを当てようか? 顔色で判断するよ」

「いや、いいよ……」


 由香はとても元気だ。薬物でもやっているんじゃないのか? 

 アッパー系か。ということは、覚醒剤か、MDMA。もしくはコカイン。


「いいの?」


 由香は目をキラキラさせている。


「いや、そっちのいいよじゃない」

「ああ。だめってことか」


 由香は肩を落とす。落ち込んでしまってるようだ。

 幼馴染は情緒が安定しないな。もしかしたら、スピードボールを体験しているのか。アッパー系もダウナー系も、両方体験しているかもしれない。だとしたら、悪質だ。


「だめと言われても、当てるよ。今、薬物のことを考えているでしょ?」

 

 由香は言った。昆布はびっくりする。

 

「当たり。なんでわかったの?」


 なかなか鋭い。と、昆布は思った。


「昨日、図書室でドラック大辞典を読んでいたところを見たからね。当てずっぽうで言ってみた」

「ああ、確かに読んでいたような気がする」


 さっきから、ドラックの内容ばかり頭に浮かぶのは本の影響か。


「考えるのはいいけどさ」由香が心配そうに言った。「実際に試してはいないよね?」

「うん。大麻しか試したことがない」

「え! だめだよ!」

「冗談。合法ドラックしか試したことがないよ」

「それもだめだよ!」

「さっきのは冗談。お酒しか飲んだことがない」

「それなら安心か」由香はほっと息をつく。「いや、高校生でお酒はダメだから!」

「ごめん。今さっきのも冗談。法律を違反するようなことも、道徳的にダメなことも、したことがないよ」

「そっか。安心したよ」

「それなら、よかった……」

 道徳的に反する行為はしたことがなかった。だけど今、道徳的にいけない会話はした気がする。下ネタとかよりもひどい内容の話だ。ドラックの話なんて、高校生でしてはいけないと思う。もちろん、大人でもダメ。

「うん。よかった! よかった!」

「じゃあ、もう離れてくれるかな?」

 

 昆布は由香に言った。


「どうして?」

「いや、由香が嫌いってわけじゃないんだけど……」僕は辺りを見渡す。「周りの視線が、ちょっと……」

 

 昆布に視線が集まっていた。由香と話していたからだろう。

 高校というのは、男性と女性が喋っていただけで注目される。なぜなら、思春期だからだ。変に敏感になっている時期だ。


 だからこそ、昆布と由香が話していたら、余計に注目を浴びる。


 昆布が闇ならば、由香は光だ。

 闇というとかっこよく聞こえるかもしれない。だけど、かっこよくはない。ただ、隠キャなだけだ。


 注目されるのは苦手だ。しかも、いい注目のされ方をしていない。どちらかというと冷めた視線だった。


 一人でいるときは、あまり見られることがない。なぜなら、空気のような存在だからだ。空気を注目するような人はいない。


 だけど、明るい性格の由香と話していると、昆布は空気ではなくなる。目立ってしまう。


 由香のことが嫌いではない。だけど、こんな空気になってしまうのであれば、由香は避けなければいけなくなる。


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