世界と願い
それから八年、両親や友達から魔法に関する記憶をすべて消して、極力目立たないように生きてきた。だから「冴えない」女子になったし、何もかも平均的な女子を演じるようになった。
だがもうそれも限界だった。
魔法というものは長い間使わないでいるとストレスのように体の中にたまっていき、私をイライラとさせる。発散方法が魔法を放つしかないというのも難点だ。一度耐えられなくなって隠れて魔法を使ったが、ずっとたまっていた魔力は強大すぎて近所で騒ぎになり、収拾が大変だったのでもう使いたくない。
いくらこんな理由があるからといって何年も何もかも壊してしまいたくなるような衝動に耐えてきたのはすごいことだと我ながら思う。おかげでずいぶん辛抱強くなった。
だが八年目にして限界が来た。
もうこれ以上耐えられない。最近はたまっていく怒りのせいで睡眠もままならない。私はどうするべきか考えた。何年も貯めているため、魔法を放ったら周り一体吹っ飛ぶかもしれない。魔力を小出しにするのは、何年も魔力を使っていないため調節できなかった場合がリスキーすぎる。
悩みに悩んで、私はついに閃いた。
魔法がこの世界の特異であり非常識なら、世界の方を変えてしまえばいいのだ。魔法が平凡の世界へと。
正直自信は半々だった。私の魔法は心で念じれば必ず具現化されたし効果も生まれたが、「世界ごと変える」なんてぶっ飛んだことはしたことがなかったし、何しろ何年も魔法を使っていないのだ。そもそも魔法を使えるかすらわからない。
だが今の私には、それ以外に道はなかった。とにかくやるしかない。
私は自分の部屋の中で目を閉じ、願った。
「世界よ、私の思い通りに変われ!」
そう叫ぶと、体中を懐かしい感覚が支配した。魔力がすうっと体から抜けていくこの感覚。
私は体中から怒りが消えていく気持ちよさに、思わず泣きそうになった。
―――駄目だ、今は魔法に集中しろ。
自らに言い聞かせながら願った。
神様、お願いします。私はこんな体に生まれたくなかった。魔法なんて言う特異はいらなかった。死にたくなるような、あの不快な怒りを植え付けたのがあなたなら、今私の思い通りになってください。
「どうか世界を、創らせてください」
そう口に出した瞬間、世界が白く弾けた。
書きだめがあったので、どんどん書き込んでいます。
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