記憶
私の特徴はと聞かれて、即答できる人は少ないだろう。敢えてあげるとしたら「冴えない」そんなところだろうか。
これだけで分かる通り、私はただの印象に残りづらい高校生である。今まで彼氏はもちろん、「友達」と呼べる人だって数少ない。
だが一つだけ特徴をあげるとしたら、それはやはり魔法が使えるということになる。
別に望んで手に入れた力でもない。ほしいという人がいれば、私は喜んで差し出すだろう。
魔法が私の自慢だったのは、小学三年生の秋までだった。
ひけらかしていたわけではないが、仲のいい友達には見せていたし、頼まれれば魔法の力で何かと手伝ってやっていた。小学三年生なんて、見たこと聞いたことはどこにでも広める様な歳だ。だがその時の私にはそれがわからなかったのだ。
ある日の夕方、留守番中にインターフォンが鳴った。ドアを開けるとそこには怖い顔をしたスーツ姿の男の人が四人と、優しい表情の女性が一人いた。
「あなた、魔法が使えるの?」
開口一番、微笑みながら女性は聞いてきた。
私の直感は鋭かった。
―――ここで魔法が使えることを明かしたら、どこかに連れていかれて実験体にされてしまうのではないか―――
子供ながらにというのか子供ならではの想像を私はしながらいった。
「魔法って何ですか?私、そんなの使えません」
だが顔が引きつっていたのだろうか、嘘はすぐにばれた。
早く家の中に戻ろうとした私の手を女性はつかんだ。
女性は思えない力の強さに対する驚きと恐怖から、私は思わず魔法を放った。
私の意志とは関係ないところで放たれたその炎は女性の腕を焼いて、女は悲鳴を上げた。先ほどまでとは百八十度異なる表情をした彼女を見て、脇に控えていた男四人が襲ってきた。
私は今度は意識的に魔法を放った。体中から放たれたその香りは、相手を眠らした。
男四人に、絶叫をあげる女を眠らした私は恐怖の中でも冷静に行動した。またもや魔法を使い、私に関する記憶を五人から根こそぎ抜き取った。そのあとに五人をたまたま今朝テレビでやっていたインドまで空間移動で飛ばした。
私は安心と恐怖から、家のベッドにくるまって泣いた。
そしてこの時私は決意した。
もう二度と、人前で魔法は使わない、と。
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