決戦、サッカー部のイケメンキャプテン②
すみません、また遅れました……!あと、ちょっと雑な部分あるかもしれないです……。今日はあと一部投稿します(そちらに録音の件入ってます)
放課後。
「緊張するね……」
「落ち着け凛香、多分大丈夫だから」
俺と凛香は、一緒に職員室まで来ていた。勿論ここへ来ることとなったのは、多田との一件が原因だ。
先程から、凛香はかなり緊張している。彼女の気持ちを汲み取ってこのまま帰りたいが……、流石にそういうわけにはいかない。
「「失礼します」」
覚悟を決めて俺達が扉を開けると、
「やあ、よく来たね」
職員室の端に、もう復活したらしい多田がいた。生徒指導の先生はまだ来てないようだ。多田はこちらに鋭い視線を送ってきていて、それに怯えた凛香が俺の背中に隠れる。
「……せめて、反省する素振りくらい見せてみろよ」
流石に呆れた。反省のフリくらい誰だって出来るだろうに、彼はそれすらしないのだ。そして、
「反省?さあ、何のことだか。僕が何をやったと言うんだい?」
当然俺の発言も受け入れず、多田はとぼけてみせる。その表情からは全く反省など感じられず、むしろ俺達の事を馬鹿にしている様にも見えて。
「こいつ!」
凛香を脅しおいてこの態度、心の奥底から猛烈な怒りが込み上げてきた。我を忘れて、俺が掴みかかる勢いで詰め寄ろうとすると、
「しゅう君、落ち着いて!」
凛香に止められた。それにより、段々と頭は冷えてくる。もしも彼女の制止がなくて、あのまま彼を殴ったりしていたら、完全に悪者になってしまう所だった。
「……すまん」
こんな状況でも冷静でいてくれた凛香に、心の中で感謝していると。
「お、揃ったか。俺が生徒指導の鎌田だ。」
生徒指導の先生がやってきた。
「じゃあ、早速だが説明頼む」
鎌田と名乗った先生が俺に促す。面倒なことになったなぁ、とは思いつつもここで黙っていれば疑いの目は俺に向くので大人しく説明することにした。
「はい、まず多田先輩が凛香に告白をしていたんです。それで、断られて逆上した先輩が凛香に襲い掛かろうとしていたので……。」
鎌田先生は、俺の話を黙って聞いている。途中で口を挟んでくるタイプではないみたいだ、よかった。
俺はそのまま説明を続くけるが、それも終盤に差し掛かった頃。
「まあ、殴ったことは事実です。ですから」
「先生、卯月君は嘘を話しています」
俺の弁明は、最後の最後で多田の涼し気な声に遮られた。さてはこいつ、タイミングを見計らっていたな?
「ほう?」
すると、鎌田先生は俺の方をジッと見つめてくる。間違いなく疑われている、そう思った。気まずい沈黙が続く中、多田がゆっくりと語り始める。
そして、
「まず、僕と桜庭さんは親しい仲にあります。」
「なっ!?」
気でも狂ったのか、意味不明なことを話し始めた。こいつ、何を言っているんだ!?多田と凛香は全く親しい関係などではないし、何なら今回の一件で凛香は完全に嫌いになったはずだ。
「おい、何言って……」
勿論抗議しようと思ったが、その途中で奴の真意を理解した。多田は表面的には穏やかに振る舞っているため、先生からの信頼も厚い。
普段目立たない俺と違って、周りからの評価が高いのだ。
きっと、それを利用した最後の悪あがき。振られた腹いせに、俺と凛香の仲を少しでも遠ざけようとしているのだと思う。
「告白したのも彼です。彼が逆上して襲い掛かろうとしていたので、間に入って守ろうとしたんです
よ」
しかし先生達は、そんなことを知る由もない。多田が言葉を繰り出す度、鎌田先生の視線は鋭くなっていく。
「ですから、振られて逆上してきたのは卯月君の方なんですよ」
多田の説明が終わると、辺りの空気は一層冷え切っていた。俺に対して、他の先生達から浴びせられる視線が冷ややかになっていくのが分かった。
「おい卯月!確かに桜庭は人気だろうがな、相手の迷惑をきちんと考えろ!」
多田の言葉に騙された先生が、俺のことを怒鳴りつける。
「……先生、嘘を話しているのは彼の方ですよ」
すでに頭の血管が浮き出るほど苛ついていたが、ここで爆発しても良くないので我慢する。怒りを堪えて、もう一度説明しようと口を開ける直前、
「せ、先生……それは違います」
怖いだろうに。俺の為を思ってか、震える声で凛香が加勢しようとしてくれた。殺伐としていた心が一気に暖かみを持つ。が、
「卯月、この後お前の両親も呼んでじっくり話そうじゃないか!」
何と、先生は彼女の言葉を無視したのだ。こいつらは俺を攻めるばかりで、被害者であるはずの凛香の声に耳を貸そうともしない。自分の言葉を聞いてもらえなかった凛香は、目に涙を浮かべ途方に暮れていて……。
そこで、完全に堪忍袋の緒が切れた。今まで堪えていたものが、大爆発した。俺は、怒りに任せて机を力一杯叩く。
「いい加減にしろよ」
俺の怒気をはらんだ声によって、職員室は一瞬で静まり返り。
緊張感のある雰囲気が漂い始めていた。