決戦、サッカー部のイケメンキャプテン①
すみません、遅れました!その上今話はストーリーがあんまり進まないので、明日頑張って2部以上投稿します。
「……凛香、そろそろ離れてくれないか?」
「もう少しだけ……」
俺と凛香は教室へ戻っているところなのだが、彼女は俺の背中に顔をうずくめていて。……抱きつくようような構図になっている、てか抱き着いていた。
当然、辺りの視線をほぼ全部集めてた。近くにいた男たちが、ひそひそと何やら話している。
「おい、見ろよ……桜庭さんだ」
「え!?何で男が」
「お前知らないのか?有名な話だぞ、桜庭さんがあの卯月とかいう男にベッタリなのは」
「マジか……!狙ってたんだけどなぁ」
「まあまあ、付き合ってはないみたいだし」
……全部聞こえてるんだよなぁ。ああ、周りから浴びせられる視線が痛い……。が、もう目の前は教室だ。
「ほら凛香、教室着いたぞ」
流石に教室に着いたから離れてほしい。そういう思いも込めて言ってみたが、
「……やだ。机に着くまでこうしてたい」
全く効果はなかった。……甘える姿、可愛いかよ。
「はぁ、分ったよ」
凛香のお願いを無理に拒むことなんて出来るはずがない。観念して扉を開けると。
教室内の生徒達が、一斉にこちらを向いた。いつも以上に距離の近い俺達に驚いている様子で、凛香に好意を抱いている少なくない男子から殺気が送られてくる。
頬が引き攣るのが自分でもわかった。
「しゅう君、お弁当食べたい」
しかし相変わらず凛香は平気なようで、甘えるような声で言ってくる。
……そんな懇願をされては、彼女に弱い俺は絶対に断れない。
「分かった。一緒に食べよう」
言うと、少しだけ凛香が微笑んだ。ちょっとてはあるが、元気を取り戻しつつあるみたいだ。この調子でなるべく早く元気になってくれたら嬉しいな。
昼食を食べるため、弁当の蓋を開けるようとした時、
「いや~、今日も熱々。というか見せつけてくれますねぇ!」
「ヒューヒュー!ホント、早く付き合っちゃえよ!」
やけにテンションの高い男女二人がこちらに近付いてきた。どちらもニヤニヤとした笑みを顔に浮かべていて、小学生みたいな揶揄い方をしてくる。
「からかうなよ……、悠太と梨華」
男子の方が田代雄太で、女子の方が金田梨華。こいつらとは小学校の時からの付き合いで、今も遊びに出掛けたりと仲良くしている。ちなみに、二人は中学生の頃から付き合っている。
「てか、凛香ちゃん目が赤いけど……、何かあったの?」
梨華はそう言って、凛香の顔を心配そうに覗き込む。
「その……」
さっき起こったばかりだし、上手く説明できないだろう。代わりに俺が話すことにした。
「簡単に言うと多田とかいう三年のバカが、凛香に振られて逆上したんだ」
それを聞くと、二人とも呆れた表情になった。
「あー……、私も一時期、しつこく迫られたなぁ」
「あいつ、何やってるんだよ……」
どうやら、この二人は多田の本当の顔を知っているみたいだ。
「で、大丈夫だったのか?」
「ああ、勿論。多分今校舎裏で気絶してると思う」
心配そうに聞いてきた秀太に俺は言った。すると、
「……何があったかは聞かないでおくよ」
秀太は安心したような苦笑いを浮かべていた。
「というか……。お前もお前で、告白についていける勇気が凄いよ」
「そうか?だって多田の悪い噂をほぼ把握していたからな。どうすんだ、凛香に何かあったら」
凛香は美少女なのだし、もしものことを考えても見守っておいた方が良いはずだ。
「過保護だなぁ……。てか、いっつも思ってたんだけどさ。お前やけにそういう噂に詳しくないか?」
「あー、言ってなかったっけ」
「「「何も聞いてない」」」
三人の声が見事にシンクロした。……皆知りたがっていたのか。
トップカーストでもない、平凡な俺がそういった噂に詳しい理由。
ちょっとここでは言いにくいことなんだよな……、何と言って誤魔化しておこうか、悩んでいると。
「おい、このクラスに卯月と桜庭はいるか!?」
その思考は途中で断ち切られた。何故か、生徒指導の先生が慌てた様子で俺達の元へやって来たのだ。
「はい、どうしました?」
嫌な予感がする。俺は問題児でも何でもなく、この2年間生徒指導の先生にお世話になったことなど一度もない。唯一思い当たる節と言えば、多田との一件しかなくて……。
「放課後。職員室に来い。何があったかはしらないが、多田がお前に殴られたと言っている。」
マジかよ。先生は、険しい顔をして言い放った。
あれからまだ十分ほどしか経ってないというのに、いくらなんでも早すぎる復活であった。
……そんなことより、
「放課後、自由なしかなぁ……」
俺は、放課後もあいつに時間を取られるという事実に心底腹を立てた。
感想で録音について書き込んでくださっていた方、……申し訳ありません!字数の都合で、その話については次回になると思います……。