vsサッカー部のイケメンキャプテン②
すみません、ちょっと雑かもしれないです。後で手直しします。
そして迎えた昼休み。
「校舎裏だっけ」
「うん、そうだよ」
俺は朝に約束した通り、凛香の告白現場へと一緒に向かっている。何故俺も行くのか、それは勿論彼女を守るためである。
凛香は美少女だし、告白を断った相手が逆上して襲い掛かって来る可能性もあると思うのだ……と言ったら流石に過保護すぎるだろうか。
「じゃあ、俺はここら辺で待っているから」
まあ二人並んで現場に行くのもどうかと思ったので、少し離れた場所から見守ることとしようか。俺が言うと、
「分かった、じゃあまた後でね!」
彼女は可愛く微笑んで、向こうへと走り去った。その様子を見て、
「大丈夫かなぁ……」
やっぱり心配になる。あんな子供の様に純粋無垢な笑みを向けられたら、誰だってそうだろう。
計画変更。俺は、告白現場をもう少し近くで監視出来るように彼女の後をつけた。
数十秒後、俺は二人にバレないギリギリの距離で足を止めた。……足音で気付かれたりしてないよな?恐る恐る覗いてみると、
「や、やあ。よく来てくれたね」
勿論、そこには多田竜吾がいた。こちらには気付いていない様子でひとまず安心する。それにしても……、
「と、ところでさ!最近出来た喫茶店の話知ってる?あそこのデザートが本当に美味しくてさ」
朝の騒動があったからか彼は少しぎこちない。だからなのか、まず遠回しな話から始めようとしていた。
ひとまず凛香が持っている苦手意識を払拭しようと考えているのだろう。いや早く終わらせろよ。
「で、話っていうのはなんでしょうか?」
しかし凛香は、世間話すらしたくないといった様子で早速本題に入ろうとしていた。その調子だ、もっと冷たく接してほしい。
彼は、塩対応な凛香に少し驚いていた。しかし、
しばらくの静寂の後、覚悟を決めたように深呼吸をして。
「君の美しい姿に一目惚れした。もしよければ、俺と付き合ってほしい!」
そんな、一瞬で思いつきそうな言葉を口にした。……もう少し告白の言葉を練ってくるとか出来なかったのだろうか。
当然ながら、
「ごめんなさい」
彼女は頭を下げて断った。
「え、じゃあお試しで付き合うってのはどうかな?」
多田は断られるとは思っていなかったようで目を丸くするが、すぐに別の提案をした。てかお試しってなんだよ。そういう軽い所も含めて、本当に気に食わない奴だ。
当然、
「すみません、それも無理です」
凛香は、再び頭を下げてそれも断る。正直謝る必要なんてない気がするのは俺だけだろうか。……まあ、これで彼も引き下がるだろう。そう思っていたのだが。
「そ、そうか……。じゃあ友達からっていうのは!?」
俺の予想は外れてしまったみたいだ。彼はまだ粘ろうとしているみたいだった。彼氏、お試し彼氏、そして極めつけは友達。いや、しつこすぎるだろ。
「いや、しつこすぎるだろ」
彼の態度に苛立っていたこともあって、思わず口に出してしまった。すぐ我に返り、急いで首を引っ込める。
「え……だ、誰かいるのか!?」
危ねぇ……。あと少しで、俺が隠れていることがバレるところだった。別に見つかったからといって何か問題があるわけでもないが、やっぱり気まずいと思う。
あとは、凛香がどうにか誤魔化してくれるはずだ。
「キ、キノセイジャナイデスカネー」
おい凛香、棒読みは止めろ。ますます怪しまれるだろうが。多田は、何か考えるように不気味な沈黙を貫いている。……ひょっとしてこれ、バレてしまうんじゃないか?、内心ヒヤヒヤしていると、
「まあ良いか。で、友達からでも始めてほしいなって……。」
彼はそれ以上追及せず、場を仕切りなおした。よかった、見つかってはない。
というか友達から始めようって……なるほど、相手の罪悪感を利用するテクニックだ。"友達から"だと断りにくい人も少なくないだろうし、その良心につけ込む質の悪い作戦。
……確かに優しい凛香なら、その提案は断れないかもしれない。が、その心配は杞憂に終わった。
「え~、それはちょっと……」
彼女は気まずそうに、というか心底嫌そうな顔でその提案すら断ったのだ。凛香、自覚はないと思うが容赦ないな……。
すると突然、
「なぁ……、流石に失礼だろそれは」
今まで温厚だった多田の様子が豹変した。
「え、失礼って……」
凛香も、彼の豹変ぶりに怯えている。そんな彼女を……、
「分かんねぇのかお前!」
彼は、凛香を思いっきり怒鳴りつける。何も悪い事をしていないのに、ただ彼の提案を受け入れなかっただけなのに。
彼女は今にも泣き出しそうな顔をして震えていた。
「友達ぐらい良いだろうが!ちょっと容姿が良いからって調子乗ってんじゃねぇぞ!」
そんな彼女にも構わず、彼は攻め続ける。こいつ、本当に最悪の人間だ。
「嫌なものは嫌です!」
しかし彼女は挫けない。怖いはずだが耐えている。涙をこぼすまいと、気丈に振る舞っている。だけど、
「そうか、もういい。お前を力ずくでも手に入れる」
その態度が彼の怒りに火をつけたようだった。
「何を言って……」
「ここなら、誰も来る心配がないよなぁ!」
多田は叫んで、凛香に迫ろうとする。
「たっぷり可愛がってやる!」
「きゃぁっ!?止めてください!」
そして彼の汚れた手が、凛香に当たる直前。
「おい!」
俺は校舎の陰から飛び出すと同時に、精一杯の大声を出した。俺の声に、多田がビクリと肩を震わせる。
「な、なんでお前が……」
沸々と、俺の中で怒りが燃え上がっていた。よくも凛香を怯えさせたな。俺は、多田の言葉も無視して怒鳴りつける。
「何やってるんだよ馬鹿野郎!お前、人の気持ち考えたことないのかよ!?」
「何って、こいつが失礼なのが悪いんだろ!」
すると、彼はまさかの逆切れ。そんな性格で、良く今まで大したボロが出なかったものだ。
ふと凛香の方を見ると、
「しゅう君、助けて……」
彼女は涙を流していた。さっきまで耐えていたのに、我慢できなくなったのか次から次へと零れ落ちていく。
頭の中で、何かが切れる音がした。
「な、なんだよ」
俺はゆっくりと多田に近付く。
「おい、何か言えよ!」
彼は動揺していたが、そんなの知るか。俺は、思いっきり多田の顔面をぶん殴った。
「ぶへっ!?」
倒れた彼を睨み付けて、警告だけしておいてやる。
「お前、凛香にこれ以上危害を加えようとするなら容赦しないぞ!分かったか!」
それから彼は、気絶したのかピクリとも動かなくなった。