表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/9

第一話  vsサッカー部のイケメンキャプテン①


時は流れて登校中。


「はぁ、テスト勉強面倒だなぁ」


「凛香。お前はいっつも成績良いだろうが」


俺達は他愛もない会話で盛り上がっていた。


 俺達の通っている私立高校は、別に偏差値が滅茶苦茶高いわけでも低いわけでもない、ごく普通の学校である。しかし、それなりにテストは難しいし面倒なのは確かだ。



「そういうしゅう君も、良い点数取ってるじゃん……。でもさ、嫌なものは嫌だよ。」


凛香は、テストの話題になってから本当に嫌そうな顔をしていた。……ここら辺で、彼女の機嫌を直してやった方が良いかな。


「じゃあ、今回も一緒にテスト勉強するか?」


彼女を喜ばせるために俺が提案してみると、


「え?勿論!やる、やります!」


 凛香は大喜びで賛同してきた。……彼女の喜ぶ姿を見て、何故か犬が尻尾をブンブンと振っている幻影が見えた。こういうとこホント可愛いんだけど、他の野郎に見られたりしたら面倒だからなぁ……。

 そんなことを思っていると、


「桜庭さん。昨日の手紙、見てくれたかな?」


一人の男子がこちらに向かってきた。出た、爽やかイケメン(表だけ)多田竜吾。

昨日ラブレターを渡してきた張本人であり、今は馴れ馴れしく凛香に話し掛けている。


「うん、読んだけど……」


反応に困ったのか、凛香は曖昧な言葉で濁す。


「そっか。じゃあ、昼休み待ってるよ」


「……分かりました」


凛香の表情は、彼と会話が進んでいく度に沈んでいった。


「ん、元気なさそうだね?」


多田がわざとらしく凛香に言う。いやお前のせいだよ。とは口が裂けても言えないので、二人の様子を黙って見守ることにする。しかし。


「浮かない顔してると、幸せが逃げていくかもよ?ほら、元気出して」


多田はそう言って、何故か凛香の頭に手を伸ばし……。おいおい、マジかよこいつ。確かに他の女子は、こいつに頭を撫でられれば大喜びだろうが。凛香は断じて違う。


 いくらゲス野郎でも、会話するぐらいなら別に何とも思わない。けれどそこに、相手が望まないスキンシップが含まれるとなれば流石に止めるべきだろう。



「おい、何やってるんだ」


俺は、凛香を遮るようにして間に立った。そんな俺を見た多田はと言うと、


「はぁ?誰だい君は?」


お、敵対心丸出しで突っかかってきた。

その瞳には嫌悪、侮蔑、怒り、様々な悪感情が込められているようにも感じる。

 このまま本性さらけ出して、天罰でも下ってしまえ。


「凛香が怖がってんだろ、止めろよ」


「ぷっ、ははは!」


俺が注意すると突然、彼は堪えきれないといった様子で笑い始めた。何だ?


「何がおかしい?」


俺は別に、笑われるような事をした覚えはない。眉をひそめて聞けば、


「名前呼び?いや、君は桜庭さんの何なんだよ!君みたいに平凡で、いかにも低スペックそうな冴えない男子が、彼女と釣り合うとでも思っているのか?」


 そう言って俺のことを嘲笑してきた。ああこいつ、絶対に凛香に近付けたくないタイプである。


「桜庭さんも、迷惑ならそう言わないとダメだよ……?」


彼はそういって、再び凛香の頭に手を伸ばそうとするが。


「嫌なんかじゃないです!何ですか、聞いていればしゅう君のことを馬鹿にしてばっかり!」


凛香は、その手を乱雑に振り払った。その顔には明らかな怒気が浮かんでいる。

多田も想定外だったのか、突然怒った凛香を見て焦っていた。


「さ、桜庭さん違うんだ!これは、えっと……」


「しゅう君、早く行くよ!」


彼女をなんとか制止しようとしていたが、全く聞く耳を持っていない。

自分の発言を無視し、俺の手を引く凛香を見て。多田は、ポカンと口を開けた間抜けな顔で、こちらを見つめていた。


「へっへ~、嫌われてやんの~!」


 俺もムカついていたので、せめてもの気晴らしとしてあのバカを煽る。小学生みたいな煽り方だが、まあこれくらいは許されてしかるべきだろう。


「……」


 だが、俺の挑発に多田は反発してこない。ただ唇を噛み締めているだけだった。俺が尚も煽ろうとすると、


「ちょっと、何してんのしゅう君!」


呆れたように、凛香がこちらを見ていた。それはきっと"その辺にしとけ"ということだろう。確かに、下手に煽りすぎて後で恨まれたら危険かもしれない。


「ごめんごめん。凛香、時間もないし早く学校行こうぜ」


多田から視線を外して俺が言うと、


「はーい!」


 凛香は、彼には向ける事のなかったとろけるような笑顔を向けてくる。それを見た彼は、悔しそうにこちらを睨んでいた。






校門前。徐々に生徒も増えはじめ、女子は生暖かい視線。男子は嫉妬心丸出しの怖い視線を送って来る。……いつものことなのだが、非常に心地悪い。

そんな中で、


「はぁ、嫌だなぁ」


凛香は憂鬱そうに零す。どうやら彼女は、視線があまり気にならない質らしい。


「多田のことか?」


「うん。あの先輩、いっつもしつこく話し掛けてくるんだよ?……正直、怖いし嫌だ」


凛香は、ああいうタイプの男を非常に苦手としている。元々強引な人間が嫌いで、そういう対応をされると怯えてしまうのだ。

俺は、不安そうに呟く彼女を安心させるために言う。


「安心しろ、何かあったら俺を頼ってほしい。出来る限り力になるから」


……ちょっとカッコつけすぎた台詞だったかな。少し後悔していると、彼女から予想もしていなかった言葉を浴びせられた。


「うん、ありがとう!しゅう君大好きだよ!」


「え!?」


いくら恋愛に疎い凛香でも、大好きなんて言葉は軽々しく言わない。大体、このタイミングでその発言。それって、もしかして……。


「これからもずっと親友だよ!」


「……おう」


まあ、ソウデスヨネー……。勝手に期待していた自分をぶん殴りたくなった。


もしよろしければブックマーク・感想・評価ポイント等頂ければ嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 多田、放課後何か仕掛けてきそうですね。告白を断わられたら、実力行使しかねなさそう。凛香に警告と、警護が必要では?幼馴染を護りぬけるよう頑張ってほしい。絶対寝取り阻止!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ