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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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嵐の昼にって素敵やん

 嵐の中、漆黒の犬の群れに宣戦布告された俺達は詰め所の中でピリピリとしていた。

 

 「奴ら、襲ってきませんね。あんな事を言って、こっちも人数が居るって事がわかって逃げ出したんじゃないですかね?」


 ミッチが術式武具を抱きしめるようにしながらそう言った。

 希望的観測ってやつか。

 気持ちはわかるが、そうこちらに都合よく物事は動かないもんだ。


 「ミッチにそんな事言われちゃあ、向こうさんも意地になってかかって来るだろうさ、けっへっへっへっへ」


 牢の前で術式武具を構えるスノグ爺さんが笑う。


 「ううっ、怖い事、言うなよ爺さん」


 「おい爺さん、本当に無理しなくていいんだぞ?奥の部屋に行っていて」


 怖気づくミッチに続いてチャレンジさんがスノグ爺さんに言う。


 「何言うんじゃ!牢番はワシの仕事じゃい!何があってもこいつらは奪わせん!」


 「いや、奴らの目的はそいつらじゃないけどなあ」


 息巻くスノグ爺さんにチャレンジさんは参ったねとばかりに言う。


 「ドンッ!ガガガガガガガガガ!」


 突然、前置きもなく轟音が響き渡り詰め所の窓と言う窓が割れ、内部に向かって術式武具から発射された大量の弾丸が雨あられのように降り注いだ。


 「クソっ!!こんなんでやられちゃつまんねーぞ!!」


 「わかってますってボス!!皆さんも頭を下げて!」


 「チクショー!ワシのお宝の酒が!連中、許せんわい!」


 チャレンジさんとミッチが皆に警戒を促す中スノグ爺さんは酒の心配をしている。

 まだ、余裕があるようだな。

 敵の弾幕が薄くなると、皆、代わる代わる窓から外に向かって攻撃を返しはじめる。

 俺も空雷弾を連射するが、外は激しい嵐でまったく様子がわからない。

 こっちの攻撃が効いてんだかどうなんだか、手ごたえがわからないのは非常に神経を消耗する。


 「ちくしょう!向こうの動きはつかめないけど、こっちの動きは筒抜けじゃあやってられないっすよ!」


 ボロボロになったガラス窓を術式武具で叩き割りながらミッチがぼやく。


 「敵はなぜ高威力の武器を使ってこないのでしょう?」


 フォイジャーさんが床に転がった小さな鉄の玉をつまんで言う。

 鉄の玉の大きさは直径五ミリほど、俺が散弾で使用するサイズで考えれば十分高威力に分類するが。

 

 「この辺んで使われてる奴で見りゃあ十分、高威力の武器じゃよう」


 「この辺で使われてる、か。もしかして奴らは、俺達がこの辺の荒くれ者どもに襲われたと偽装するためにそうしてんじゃないのか?」


 スノグ爺さんの言葉にチャレンジさんがハッと気が付く。


 「奴らのやり口から考えればそれは十分ありえるな」


 ザンザもそれに同意する。


 「だったら、勝機は十分にありますね。この辺のアウトローが使わないような高威力術式の使用がおいそれとできないのなら、こちらから打って出て接近戦で仕留めてやればいいでしょう」


 「確かにそうだが、この状況でどうやって打って出る?」


 激しく撃ち込まれる術式武具の攻撃によって弾ける室内装飾品の欠片を浴びながらチャレンジさんが言う。


 「それなら、ちいとばかり当てがあるぞい」


 スノグ爺さんが鼻の下を掻きながら言う。


 「なんだい爺さん?当てってな?」


 「ホントは秘密にしておきたかったんだが、この状況じゃ仕方ない」


 スノグ爺さんは渋々と言った感じで牢に入り、壁際に置かれた安ベッドをずらすと床のレンガを持ち上げて外した。


 「ほれ、ここから床下に出れる」


 「おい爺さん、こいつはなんだ?」


 「昔々にここから逃げ出そうとした奴が作ったんだが、ワシが見つけてそれ以来ワシ専用の出入口にしてるんじゃ」


 「それで爺さんいつの間にか酒を調達できてたってわけか!夜番の時、抜け出してたって事だな!」


 「だから秘密にしときたかったんだ」


 怒るミッチに顔をしかめるスノグ爺さん。


 「後にしろミッチ。今は、やつらに気取られないように外に出てあいつらを静かに仕留めて回るのが優先だ。問題は誰が行くかだが、まず俺はここの責任者だからな行かせて貰うぜ」


 「私が考えた作戦ですから私も行かせて頂きます」


 チャレンジさんに続きフォイジャーさんも手を上げる。


 「嵐に紛れて隠密作戦と言えばこの私にお任せ下さい」


 ラインハートが眼鏡をクイッと上げて手を上げる。


 「うふふ、楽しくなりそうじゃないか」


 「それなら私も参加させて下さい」


 「でしたら私もご同行しますよ」


 リッツとアーチャーが笑顔で手を上げケイトもそれに続いた。


 「いや、お嬢ちゃん達、これはかなり危険が伴うんだぞ?」


 「大丈夫ですよチャレンジさん。彼女たちは強いですから。この漆黒の闇を本当に支配するのが犬なのか我々なのか、はっきりさせてあげますよ。うふふふふ、ねえ?」


 コラスは得体の知れない笑みを浮かべてチャレンジさんにそう言った。

 

 「むう、コラス君がそこまで言うならわかったが、くれぐれも無茶はしないようにな。それから、ここに残るみんなは俺達が抜け出した事を悟られないように派手に撃ちまくってくれ。頼んだぞ」


 「わかりましたボス!」


 牢屋の床に出来た穴に身を投じながら言うチャレンジさんにミッチが敬礼をして答えるので、俺達も同じように外出組に向かって敬礼をする。

 チャレンジさんに続いてフォイジャーさん、ラインハート、リッツ、アーチャー、ケイトが次々と床の穴に身をくぐらせて行く。

 全員が出て行った後、スノグ爺さんは丁寧にレンガを元の位置に戻していった。

 

 「さあ、いっちょ派手にやりますか!」


 俺は皆の顔を見て笑顔で言う。


 「いいねえ!派手なの大好きよん!」


 「私も嫌いじゃないですが、彼女たちの方が派手好きですからねえ」


 攻撃術を外に放ちながら嬉々として答えるコラスと肩をすくめるヒューズ。


 「なんでも派手にやった方が景気がいいってなもんだ!ここにある術式武具を全部使ってやろうじゃないか、イヒヒヒヒ、一度やって見たかったんじゃよ、こういうの」


 スノグ爺さんが術式武具を大量に抱えて笑う。


 「大丈夫か?残ったのはヤバイ連中ばかりじゃないか。まともな連中はみんな外にいっちまったのかい?」


 「ちょ、自分はまともっすよ!」


 ニヒルな笑みを浮かべて術式武具を放つザンザに不服を申し立てるミッチ。

 残された人間達の気力も十分のようだ。

 反撃の狼煙を上げるとしますかい!

 嵐の中、漆黒の犬達に囲まれ詰め所での籠城戦を強いられた俺達だったが、敵さんの計略上、高威力兵器の使用はまずなさそうだと気付き、スノグ爺さんの秘密の抜け穴から別動隊がこっそり抜け出し奴らに接近戦を挑む計画を経てる事になった。

 別動隊はチャレンジさん、フォイジャーさん、ラインハート、アーチャー、リッツといメンツ。チャレンジさんは両手に花どころか花だらけ状態だが、そんな事を言ってる余裕もないだろう。


 「撃て撃て撃てぇー!」


 「キャッホホォーーイ!どっからでもかかってこんかい!酒持ってこんかーい!」


 興奮して攻撃を放つミッチに完全にハイになってるスノグ爺さん。大丈夫か?特に爺さん。


 「なんか、ただ撃ってるだけじゃ飽きるね。的も見えないし」


 「そう言わずに、外へ行ったみんなのためにももう少し派手にお願いします」


 ちょっと前まで派手なの好きよんとおどけてたのに秒で飽きてるコラスを辛抱強く諭すヒューズ。

 ヒューズ君、ちょっとコラスの事を甘やかしすぎじゃないかい?


 「お?なんか始まったんじゃないか?」


 嵐の中で紫色に光る局所的な稲光のような物や、闇を裂くように軌跡を描く緑色の光、連続的に激しく瞬く白い光など今まで見られなかった光が各所で発生し始めたのを見て俺は言う。

 キラキラとときおり光を反射するのはケイトの鱗粉か?晴天時でもあいつの鱗粉ステルス迷彩は簡単には視認できないからなあ、こんな状況なら尚更だろう。

 ラインハート、リッツ、アーチャーは、まあ、言うに及ばずだな。なんせコラスの言う通り、彼女たちの方が漆黒の住人歴は長いからな。トマトジュースならぬ牛乳で血への渇望は制御できるようになったとはいえ、いや、制御できるようになって更に能力が研ぎ澄まされているフシもあるからねえ。

 こりゃ、漆黒の犬さんが尻尾巻いて逃げ去るのも時間の問題かな。



 「ああ、始まったみたいね」


 「皆さん、あの光を避けて攻撃するようお願いします」


 コラスに続いて言うヒューズの言葉に俺達は頷き、各所に発生した光に当たらないように気を付けて攻撃を放った。

 徐々に敵の弾幕は薄くなり、時折こちらの攻撃に手ごたえまで感じ始めて来ると後は早かった。

 嵐の中で瞬くカラフルな光は徐々に消え、敵からの攻撃は一切なくなった。


 「終わったんですかね?」


 「恐らくはそうだろうが、外出組が戻って来るまでは油断しなさんなよ」


 ホッとした様子で言うミッチに俺は声をかける。

 

 「そうそう、クルポンの言う通り。勝ったと思った瞬間が一番気が緩むからね」


 「カッ!!!」


 コラスが珍しくまともな事を言った瞬間、凄まじい光が発生し俺達は目を覆った。


 「うわっ!なんだ!」


 ミッチが声を上げる。

 俺は目を薄く開け外を見る。

 そこに見えたのは上空に漂う巨大な火の玉だった。

 なんだありゃ?敵さんの新しい攻撃か?


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