キャンパスって素敵やん
司会者の挨拶からゴゼファード公、来賓代表の貴族氏、チルデイマ商業ギルド長、デンバー会長、と続いてエドマンク理事長の挨拶が終わり、やっとうちの子たちの公演が始まった。
新素材で出来た空中ゴマは滞空時間も長く高度もあり、よりダイナミックな演技ができる様になっていて、見ごたえ十分だった。
カホンの音が以前と違いバシャっといったバズ音が混じっていたのでもしやと思いデンバーさんに聞いたところ、案の定、打面の裏に金属製の響線を取り付けたのだと言う。
シンたちダンス班から、もっと雑多とした賑やかな音色が欲しいとリクエストがあったそうで、マギーたちカホン製造班が試行錯誤して打面の裏に色々と仕掛けを施す事にたどり着いたのだとか。
他に小ぶりな鈴を取り付けたモデルも製作中なのだそうで、今後の商品展開のヒントになっているんだってさ。まったく、大したお子達ですよ。
そして、待ってました!のハティーちゃん。
最初にステージに上がった時は、あんまり小さい子が出て来たものでその可愛らしさに多くの人が笑顔になったが、歌いだすと凄かった。
多くの人たちは、なにかほのぼのしたものを想像していたのだろう、いい意味で期待を裏切られる事になった観衆は驚きに顔を押さえ、立ち上がり、どよめき、指笛を鳴らし、拍手をした。
勿論、俺も立ち上がって拍手喝采、感動と興奮の時間を過ごさせてもらったのだった。
最後にケインがステージに上がりケイトモ事務所はチルデイマ学園を応援している旨を告げ、カホンと空中ゴマを寄贈すると発表した。
立派になっちゃったなあ。
そうして無事に式典は終わり、これからは具体的な実務のお話しとなる。
出来たばかりの学園会議室。
「まずは皆さん、お疲れ様でした。貴族、商会側の教師含め他の教師達の紹介は改めて明日行わせて頂きたいと思います。今日、皆さんにお伝えしたいのは具体的な担当教科についてです。まずはアウロ先生には主に鍛冶を通して商業について道徳的なことも含めた全般を教えて頂きたい。」
エドマンク理事長の説明は続く。
キーケちゃんは政治、そして剣術を通して心の鍛錬を、アルスちゃんは歴史と芸術を、シエンちゃんには若いうちの体つくり、いわゆる体育を、そして俺は実際の事務所立ち上げ経験などから、演芸や玩具、楽器等趣味嗜好品の商業化そしてその可能性について、また、そうした事に伴う将来的に見込まれる職業の多様化などについて教えて欲しいと言う。
「そして、ここに集まっている先生方に特にお願いしたいのが、式典前に私とルホイ記者が言っていた事なのです。私もルホイ記者もこれからのレインザーに必要な人材は世界を視野に置ける人間だと考えています。つまり、狭い場所で狭い価値観に囚われることのない、広い世界で多様な価値観と共生できる、そうした人間を育てたいと思っています。それは、簡単なことではないでしょう、教師の中にさえ狭い価値観に囚われてそれを押し付けるような教育をする者もいる事でしょう。ですが、私はそれに屈するつもりはありません。ここにおられるゴゼファード公も共同出資者であるデンバー会長も、この考えには賛同して頂いております。どうか、皆さん、学園の将来のため、そしてこの国の未来のため、お力をお貸しください。」
エドマンク理事長が頭を下げた。
「ゴゼファード公とデンバー会長に許可は取っているのであるが、この学園がこれからどうなって行くのか取材をさせて頂き、その記録を、それこそ世界中の学園が見本として役立てることができるように残したいと思っているのである!そんな訳でちょくちょく取材に来させて頂く事になる。皆さん、よろしくお願いいたしますなのである!。」
スーちゃんまで神妙な顔をして頭を下げる。
「微力ですが、こちらこそよろしくお願いします。」
俺も立ち上がって頭を下げる。
「我らに任せておけい!ビシビシ鍛えてやるぞ!。」
「きひひ、よくわかった。若者を導くのも年寄りの仕事よな。」
「はい、キーケ殿のおっしゃられる通りですな。」
「うふふ、楽しい学園にしたいですねえ。」
「よし!素晴らしい学園になると私は確信する!皆さん!頼んだぞ!。」
ゴゼファード公の力強い言葉。
「始業は明日からですが、皆さんは特別講師ですので、毎日の登校でなくても構いません。その辺りは調整可能です。そして、住居についても学生寮の近くに教職員寮が用意してありますのでご利用されても構いませんし、通いでも結構です。学園内に食堂もあります。こちらも自由にご利用して頂いて結構です。これから実際に学園内をご案内致しましょう。」
そう言うエドマンク理事長に続いて、会議室を出て学園内を歩く。
俺は前世界では高卒で大学には行ったことがないのだが、こうした感じなのかね。
前世界でもし大金が手に入ったらやって見たい事に、大学に通ってみたいというのがあったのだが、こっちに来てちょっと違うが近い形で叶った感じはするな。
まあ、要するに、ワクワクしているって事だ。
真新しい建物の匂いもまた心を騒がせる。
廊下を歩きながら、明日からここに生徒たちがいる風景が見れるのかと思うと甘酸っぱい気持ちになる。
いいねえ!非常にいいねえ!青春だねえ!
校舎は大きな長方形の三階建て。1フロアに教室が4つ。
そうしたものがカタカナのロ型に並び、各々が渡り廊下によって繋がっている。
四角形になる校舎の一辺は生徒たちの出入りするスペースを取っているので一階の教室数が2つとなっており、現在の総教室数は46、そこには職員室や専門授業用の教室、さらには生徒の自主的な自治会、つまりは生徒会のための部屋や授業以外のクラブ活動部屋も用意されていると言う。
校舎に囲まれた中央スペースは中庭で、木が植えてありちょっとした公園のような感じ。
いずれはここで、告った告られたなんて甘いイベントも数多く開催されることになるのだろうなあ、くぅー!青春やんけ!
そして、運動場はトラックになっておりそれを見たシエンちゃんが、ここが我の戦場か!と意気込んでいた。
さらに運動場の向こう側には屋内運動場、いわゆる体育館が作られておりお金がかかっていることがひしひしと感じられるし、それだけ期待されているのだと軽くプレッシャーも感じてしまうのが俺の気が小さい所よなー。
そして、生徒のための寮は男子寮と女子寮に別れており、それぞれの寮に管理人さんが常駐しているとの事で顔合わせさせてもらう。
寮には今現在既に複数の生徒が入居しているとの事。
寮と校舎の間には食堂があり、寮生は基本ここで食事をとることになっている。
食堂も大きくてキレイで、楽しい学園生活を想像させる。
厨房には調理担当の方が既におられ、今晩の寮生の食事の準備を早速していたので軽く挨拶をさせてもらう。
職員寮にもすでに幾人かの教職員が入居しているとの事だった。
教師だけではなく、施設の管理保全のための職員もいるとの事でこの学園に居住する人の数はちょっとしたものになりそうだった。
実際に、この学園を運営するにあたってこの街の雇用需要がかなり増加し、景気が上向いているとの事。
建設するのもそうだし、維持管理にあたっての消耗品の補充など継続した商取引も発生するわけだしね。
投資しがいのある事業ですよ、とデンバーさんは笑顔で言った。
プレッシャーを感じてしまうのは仕方ないが、ゴゼファード公もデンバーさんも力になってくれるだろうし、理事長も良い人のようだ、そして何よりアウロさんと我がパーティーメンバーもいる。
「きひひ、トモよ、そう気負いすぎずに楽しんでやればよい。今までもそうして成功してきたろう。」
「確かにキーケちゃんの言う通りだ。楽しんでいくか!。」
「そうだぞ!あまり難しく考えても仕方ないぞ!子供なんてのはな、こっちが思ってるより余程しっかりしとるものだ。」
「シエンさん、うちの子たちと比べてはいけませんよ。みんながみんな、ああではないのですから。」
「そうなのか?フーム。ムグリもしっかりしていたぞ。」
「ムグリも基準にしちゃ他の子がかわいそうだよ。アイツは男としてかっこよかったもん。」
「さて、皆さんはいかがなされますか?寮に泊まられますか?。」
エドマンク理事長が我々に尋ねた。
「私はビエイナに用があるので今日はそこで宿泊する予定です。明日は寮を使わせてもらいますかね。」
「わかりましたアウロ殿。他の皆さんは?。」
「お子達にも報告したいしな、いったん今日は帰るとしよう。明日は馬で来ればよかろう。久しぶりに乗ってやりたいしの。」
「それがいいな。寮についてはまた考えようよ。どう?」
「我もそれでよい。」
「はい、そうしましょう。」
という事で我々は一旦ノダハに帰ることにした。
事務所のみんなにも報告したいし、ノダハに住処を用意してもらったばかりだからねえ。
まさかこっちでも通勤どうするか悩むことになるとは思わなかったよ。




