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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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丁度良い落としどころって素敵やん

 ブルブル振るえるポンドマークを落ち着かせて話を聞く事にする。

 まずは、この覆面男達だがポッサムズのメンバーだと言う。

 ネンゲウさんによると、ポッサムズと言うのはガルムレース周りを仕切っている暴力組織で、まあ変な言い方だが我々が探っている件に関してはあまり関係のない組織のようだった。

 ポンドマークは調教データの流出関係でのトラブルだと思い逃げ回り、そうした時の用心棒としてポッサムズが出て来たのだと語った。

 我々が聞きたいのはその件ではなく、ストーンキッズの客人についてなのだと伝えると拍子抜けしたようでペラペラと喋りだした。

 ストーンキッズには調教データ以外にもガルムレースに関わる情報は逐一流し、その代わりにポッサムズへの協力依頼といくばくかの金を貰っているのだと言う。

 元々、ポンドマークはポッサムズ系列の金貸しに幾らかの借金もあったのだが、それもストーンキッズに肩代わりしてもらっているため逆らえない状況なのだと言う。

 まるで被害者のような口ぶりだが、借金は自身のギャンブル癖のせいで、調教師はガルムレースでの賭けは禁じられているから、どうしても慣れないギャンブルをする他なかったのだ、だから負け続いて借金することになったのだ、などと語り、自分に問題がある事に気づいていないようで、まあ典型的な小物であった。

 そんな小物でもストーンキッズには扱いやすい駒だったのだろう、客人の接待を任される事もあったようだ。

 ポンドマークが任された接待は2回で、どちらもあまり喋らない気味の悪い男で、1人は褐色肌の耳長族、もう1人は青い肌の耳長族だったと言う。

 そのふたりには勝てるガルムレースをやってもらったり、娼館を案内したりしたのだと言う。

 ふたりともチップのひとつもくれないしみったれだった、とはポンドマークの感想で、まあ、どこまでも自分勝手な男だよ。

 だが、青肌の男は酒を飲んだ時に、レインザーで仕事だった、仕事は上手く行ったのだがイレギュラーが起きて継続は難しくなった、と語ったそうだ。


「それはトモトモの件でしょう。どうやら、当たりのようですねえ。」


「ああ、そうだね。かなりの確率でそうだろうね。」


「では、一旦キングフィッシャーに戻りますか。それからポンドマーク、今度からは相手の目的がわかってから逃げるなりこいつらに頼るなりしろよ。こいつらもいい迷惑だろう。今日はしょっ引かないでおくから、お前も気を付けろよ。」


 ポンドマークは震えながら、ありがとうございますと繰り返すばかりだった。

 キングフィッシャーに戻ると衛兵さんが集まっていた。


「おい、何があった。」


「あっ!隊長殿!お疲れ様であります!それが、よくわからないのですが、どうやらロザムンドフューリーズの連中がキングフィッシャーに押し入ったところ、返り討ちにあったらしいのです。」


「らしい、と言うのは?。」


「いや、倒れているのは確かにロザムンドフューリーズの連中なんですが話を聞ける状態ではなくてですねえ、突然押し入ってきたってのも、あちらのお嬢さん方の証言のみでして、しかもお嬢さん方はケガひとつないもので、私たちとしてもどうしたものか困っておりまして。」


「困ることはないだろう、ここはれっきとしたキングフィッシャーの庭だ。それだけで不法侵入だろう。とっとと倒れている奴を起こして話を聞いたらよかろう。」


「いや、意識が戻ってる者もいるにはいるのですが。」


「なんだ、歯切れが悪い言い方をして。」


「何と申しますか、直接聞いてみて下さいとしか言いようがないです。」


「仕方のない奴だな。よし、直接聞こうじゃないか。」


 という事でネンゲウさんと一緒に中に入れてもらう事になった。


「おーい!トモちゃん!こっちこっち!。」


「あっ!ネンゲウさん!それにクルースさんとアルスちゃん!。」


「あら、あなた、遅かったですねえ。」


 シエンちゃんとイリルさん、そしてネンゲウさんをあなたと呼んだ猫顔おっとり系の女性はシェリルさんだろう。


「トモちゃんに見せたかったなあ!我ら3人で押し寄せる悪党どもをちぎっては投げちぎっては投げ!。」


「やだ、もう!投げ飛ばしてたのはシエンさんだけで、私とシェリルは木剣で叩きのめしただけですから。」


「ねえ。」


「それはそれは。大変だったねえ。」


 俺は周りに転がる男共を見渡して言う。

 中には膝を抱えて震えながらなにやらブツブツと呟いている者もいる。


「いや、全然大変じゃなかったぞ。ふたりはなかなかの手練れでなあ、我の出番など少なかったぞ。」


「またまたー!シエンさんたらー!。」


「そうですよ、大喜びで次から次へと男の人達を放り投げてお手玉遊びみたいでしたよ。」


「きゃははは、これがホントの男を手玉に取るってやつだな!。」


「あら、うふふふふ。」


「やだー!もー!。」


 キャッキャウフフのガールズトークだが内容はバイオレンスな事この上ない。


「アルスよう、そっちはどうだったのだ?。」


 シエンちゃんに聞かれてアルスちゃんが経緯を話す。


「そっちもそっちで面白かったようだな。だが、襲ってきた相手はハズレみたいだなあ。こっちはどうなんだろうな。」


「キングフィッシャーを襲ったって事は、ゴドーさんキーケちゃん組が核心に迫ったって事かねえ。」


「それが、どうやら両方とも当たりだったようですよ。」


「お、ゴドーさん!どうでしたか?。」


 戻ってきたキーケちゃんとゴドーさんに話を聞く。

 門下生が経営する高級食材の卸業、そこの社長に話を聞きストーンキッズがらみの客人が宿泊する宿を突き止めたふたりはその高級宿に向かう途中で集団に襲われ返り討ちにした、捕らえた者に話を聞くとストーンキッズの客人について聞きまわる者が現れた時には警告するように複数の組織が依頼されているのだと言う。

 その男は末端構成員だったので依頼主はわからないが、友人知人に他の組織の構成員もおり同様の依頼を受けている話は聞いているとの事だった。


「おっ!ゴドさんお帰りですか。フューリーズの連中はみんな骨抜きになっちまって話を聞くのが大変でしたよ。どうも、正体不明の金主から依頼を受けていたようですよ。」


「ストーンキッズの客人について嗅ぎまわるやつがいたら警告しろってかい?。」


「おっと、その様子じゃあゴドさんも?。」


「ああ、こっちはマッシブカースの連中だったが。」


「ほう、カースとフューリーズは敵対していましたが、それでも同じ依頼を受けて同じように動きましたか。」


「こりゃ、依頼主は結構な力と金を持っているって事だなネンさん。」



「どうやらそのようですな。これは、どうされますかなクルースさん。」


「ええ、皆さんにはご迷惑をおかけしまして申し訳なかったです。自分としては、ここまでくれば状況証拠は揃ったも同然と思っています。ありのままを報告すれば後は教会が判断し手を打つ事でしょう。問題はここにいる方々の事です。我々が引き上げた後に同様の事が起きないか、もっと酷いことにはならないか、それが心配なのです。」


「いや、迷惑なんてことはないですよ、それに今後の事は心配いらないですよ。向こうも警告だと口をそろえて言っています。まあ、今回は警告にしては荒っぽ過ぎましたが、彼らとしては依頼通りに行ったわけなので業界の筋は通してますし、我々もこれ以上深入りしなければ向こうもそれ以上のちょっかいは逆効果になるとわかっているでしょう。落としどころとしては、ここいらが丁度いいと私も思いますよ。」


「ゴドさんの言う通り、私たちゃあ迷惑だなんてひとつも思っちゃいませんよ。今後の事も心配にゃあ及びません。襲ってきたやつらも義理は果たしたでしょうからね。これ以上の事をするなら衛兵隊と剣術館門下生全部を敵に回すことになりますからね。さすがにこの街でそんな事をすれば国も黙ってませんしね。」


「そうですか、そう言って頂けると私も安心出来ますよ。ありがとうございます。我々はワソト司祭に事の次第を話して依頼終了になるかと思います。皆さん、本当にありがとうございました。」


「なあに、感謝するのはこっちです、楽しい仕事でしたよ。キーケさんから武術について色々と伺えましたしね。」


「きひひ、精進するとよいぞ。」


「はい。」


「報酬については後日、教会から支払われますので受け取ってくださいね。それでは、バタバタしたままですが本当にお世話になりました。」


 俺は今一度、ゴドーさん、ネンゲウさん、イリルさん、シェリルさんに頭を下げる。


「楽しかったですよ、またいらして下さいね。」


「うふふ、久しぶりの実戦に腕が鳴りましたよ。」


 イリルさんとシェリルさんが笑顔で答える。


「皆さん、今度は観光でいらして下さい。」


「そうですね、今度はゆっくりしていって下さい。」


 そう言うゴドーさんとネンゲウさんを見て、アルスちゃんがハッと何かを思い出したように口を開いた。


「そうでした、わたしこれを持ったまんまでした。これ、どうぞ皆さんで。」


 そう言っていつも身に着けているサイドバックから出したのは、ルーレット場のチップが入った小袋5つ。

 お菓子のおすそ分けみたいな感覚でそれを渡すアルスちゃん。


「いや、皆さんでと言われましてもこんな大金。」


「持っていても仕方ないですから。これで皆さんで何か美味しいものでも、ね。」


 とまどうゴドーさんに笑顔で言うアルスちゃん。

 どうもアルスちゃんの言い方は親戚のおばちゃん風味なんだよなあ。


「では、すいません。遠慮なく。」


「社長!みんなでって貰ったんですからね!ひとりで使わないで下さいよ!。」


「わかってるってイリル君。換金して4人で分けよう。」


「4人ってゴドさん?。」


「勿論、ネンさんと奥方も今回の功労者なんだから。アルスさんも皆さんと言ってくれた事だし、な。」


 なんだか換金しちゃった自分のセコさに小さくなるよ。

 そうして、皆で再会を約束し笑顔で別れたのだった。

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