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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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悪者達のラプソディーって素敵やん

 マスターホフスに事の次第を報告し、今後の対策について話し合った俺は急ぎお化け屋敷の地下に戻り、アルヌーブとフェロウズに連中の見張りを頼んでおき、ハルハを控室に呼び出した。

 

 「これは俺の考えなんだけど……」


 事の次第を伝えた俺は、この事を連中にそのまま伝えるよりも何も知らせず本人たちには勝算ありと思わせたまま衛兵に引き渡すほうが得策ではないかとハルハに提案した。


 「なるほど、確かに今聞かせると対策を打たれる可能性が高くなりそうですね」


 「だろ?そこでお願いがあるんだが、これから俺は闘技場に戻ってアルヌーブとフェロウズをこっちに寄こすからさ、ふたりにこの事を上手い事、説明してくれないか?」


 「ふふっ、その間に君は連中に何か仕掛けるつもりですね?」


 「まあな、あいつらって今まで酷い事をしてきただろ?国が然るべき報いを与えるだろうけどさ、これまで自分がやって来た事の罪の重さを十分に感じられるように、せいぜい彼らには希望を持って貰って絶望的な事実を突きつけられた時の落差を楽しんでもらおうと思ってね」


 「クルース君も人が悪い。ですが私もそのプランには賛成です、ふたりには上手く説明しておきますから任せて下さい」


 笑って答えるハルハに俺は改めてお願いし闘技場へ戻る。

 アルヌーブとフェロウズに、ハルハから話があるから控室に行ってくれと頼む。


 「なんだよ?どういう事だよ?ここじゃ、ダメなのかよ?悪い知らせなのかよ?」


 フェロウズが不安そうな顔をして俺を見るが、いいから早いとこ話を聞いて来いと半ば追い出すように控室に向かわせた。


 「ふふふっ、どうしたんだね?その様子じゃあ、あまり良い知らせじゃないようだなあ」


 ワターが嫌な笑みを浮かべる。


 「うるせー、黙ってろ」


 俺は不機嫌に返す。


 「くっくっくっく、もう少し丁寧に応対した方が良いのではないかね?」


 「へっ、言ってろ」


 不敵に笑うワターに俺は言い捨てる。


 「少し良いかね?」


 ワターの隣りにいる白髪長身初老の男が俺に声をかける。話し方といいルックスといい表面上は上品に見えるが、全体から漂ういかがわしさや強欲さは消せていない、いわゆる似非紳士って奴だ。


 「その沈黙は黙認ととらせて頂きますよ。私はセザキス経済産業研究所のターゲンド・セザキスだ。私の名前を聞いた事くらいはあるのではないかね?」


 セザキスと名乗った男は尊大な口調で言う。この期に及んでたいした余裕だよ、自分が所属している団体の力を信じているんだろうけど、今回ばかりはそう上手くはいかないよ。自分達の力が通用しないと気づいた時の顔が見れないのが少々残念だが、この手の輩はどこにコネや内通者を抱えてるかわかったもんじゃないからな、ここはあくまで当初のプラン通りで行くぜ。


 「ふんっ、聞いた事ないね」


 「聞いた事がないのならば黙って良く聞きなさい。セザキス経済産業研究所は大バックゼッド帝国中央覇道連合研究所によって作られた東バックゼッド国思(こくし)会の一員なのだよ」


 うわー、また怪しい名前が出て来たよ。やっぱり、ろくでもない連中だったな。しっかし、大バックゼッド帝国中央覇道連合研究所は今、ジャーグル拉致事件絡みで圧がかかり動きが取り辛くなってるはずだぞ?そんな事情も知らされないくらい下っ端なのか?それとも、関係各所に事実を曲げて何もダメージを受けてないって情報を流してるとか?こっちのほうがありそうだなあ、前世でもそう言うやり方はよく見たからなあ。

 

 「は?こくしかい?国に死をって事か?随分物騒な会だなあ」


 俺はすっとぼけて挑発気味に言ってやる。


 「国を思う会だよ、まったく無知な男だな。国を憂慮する志の高い者の集まりだ」


 「国を憂慮?やっぱ皇帝批判じゃねーか。クーデターでも起こそうってのかい?経済と産業はどこ行ったんだ?旅に出てる間に暴力と無法に家を乗っ取られたのかい?」


 俺は更に挑発してやる。


 「ふんっ、安い挑発は意味がないとまだわからんのか?我々を裁くのは無理だと言っているんだよ」


 「ふーん、そりゃ凄いねえ。ところで、これはなんなんだい?」


 俺は似非紳士セザキスの話しを軽く流してロストヘパタロスを足でつついて言う。


 「よせっ!下手に刺激するな!」


 おや?何を焦ってるんだセザキスは?似非紳士の仮面が剥がれかけてるぞ?


 「へえ、まだこいつにはなにかあるってのか?」


 俺は動かないロストヘパタロスを持ち上げて人形遊びをするように動かす。


 「こんにちは、僕はロストヘパタロスのロスロス君、仲良くしてね」


 ロストヘパタロスを動かしセザキスの肩をポンポン叩きながら腹話術の要領で言う俺。


 「よっよせ!そいつはまだ死んじゃあいないんだ!!」


 「へえ~、そりゃあ面白いねえ。そんじゃあ、俺がちょっと用足しにでも行ってる隙に急に動き出す事もあるかも知れないって訳だ。ふ~ん、なんかトイレに行きたくなっちゃったなあ、どうしよう?」


 焦るセザキスに俺は言う。


 「よせっ!やめろっ!我々が居た席にこいつを制御するための人形が置いてある!それを早く持って来い!!」


 「持って来い?命令出来る立場なのかなチミは?どう思うロスロス君?うん、自分の立場がわかってないんだと思うなあ僕ちん」


 俺は一人二役でロスロス君の所は声を変えて喋り、セザキスの肩にロスロス君の手を回す。


 「わーっ!よせ!やめろ!動き出したらどうするんだ!早く!人形を!」


 「わかったわかった、悪ふざけはこの辺にしてやるからどういう事なのか詳しく話してみ?」


 俺はセザキスからロスロス君を離して問う。

 

 「そいつは、この闘技場を発見した時に見つけたんだ」


 セザキスはロスロス君とこの闘技場を発見した時の事を話し出す。

 元々、この上にあった商会を半ば詐欺に近いやり方で破産させたセザキスは、残った建物の利用価値を探るため隅から隅まで調べているうちに地下に続く通路がある事に気が付いた。

 地下を探索し闘技場を発見した時、闘技場の今はボックス席になっている場所にロストヘパタロスとその姿を小さくしたような人形が埋め込まれていた。

 埋め込まれた壁には所々消えかけた文字があり、その残った文章を解読するとこの場所は古代の闘技場であった事、ここに埋め込まれたものはヘパタロスであり、ここで戦う戦士や魔物の制御が不能になった時に鎮圧するための物である事、そしてそのヘパタロスを制御するのが一緒に埋め込まれた人形であり、これを離し一定の時間が経つとヘパタロスが動き出す事、人形を操ればその通りに動き出す事、人形に触らないと近くにいる生き物に無差別に襲い掛かる事、ヘパタロスは体内に核があるが普段は見えない事、核を破壊すれば一定時間動きを止める事がわかったのだという。

 

 「ちょっと待てよ、そんなもんを発見しといてなぜ上の建物の権利をマルっと買い取っちまわなかったんだよ?」


 そこまで聞いて俺は疑問に思った事を尋ねてみた。だいたい廃墟になんてしてなけりゃあ、お化け屋敷に見せかけるなんて妙な隠ぺい工作をしなくても良かったんじゃないか?


 「そこは頭の使いようでね。権利関係を複雑にしておけば税の支払いが少なくて済むのだよ」


 自信満々に言うワター。何が頭の使いようだよ、おかげでボロが出てんじゃねーか。

 

 「まあ、いいよ。ほんで一定時間ってどの位なんだよ?」


 「それはわからん、どうやっても核を破壊する事など出来なかったのだ。だから早く!頼むから早く人形をここに!」


 「しょうがないなあ」


 セザキスの焦りっぷりがあんまりなんで俺はボックス席にゲイルで飛んで人形を取って戻る。

 

 「人形ってのはこいつか?」


 俺は取って来た人形をセザキスに見せる。


 「そ、そうだ。そいつを近くに置いてくれ」


 セザキスが言う。

 人形の大きさはニ十センチ程、素材はゴムみたいな感触で動かすとちょっと抵抗があり手を放したポーズで止まるのは、まるで昔の針金入りゴム人形みたいで懐かしい感触。

 何回も動かすと中の針金が金属疲労で折れたりしたもんだよ。

 こいつはそんな事はなさそうだが、ロストヘパタロスの攻撃がもっさりしていたのはこの人形の特性によるものだったんだな、納得したよ。

 ちゅー事はあれか?そこそこ力があって器用な奴が操れば、もっと激しい動きや精密な動きも可能って事か。操り手によっちゃおっかねえなあ。

 俺は地面に横たわらせたロストヘパタロスの胸の上に人形を置く。


 「あなた、口では悪ぶってるけど本当は良い人よね?私にはわかるのよ。私はフェルスフル家の関係者なのよ、わかるでしょ?あのフェルスフル家よ。あなたが望めば近衛騎士へ推薦できるわよ?どうかしら?悪い話しじゃないと思うけど?」

 「ちょっと待て、ならば私はスンダイジ鉱山の利権の半分をお譲りしよう」

 「私はミケンズ館にご招待するわよ?本当は貴族しか利用できない超高級娼館よ?どう?あなたも若いんだから嫌いじゃないでしょ?」


 主催者連中が口々に騒ぎ出す。

ロストヘパタロスの脅威が去った途端、買収しようとやっきになるとはなあ。逞しいやらくだらないやら。まあ、人間らしいっちゃ人間らしいか。

 俺は肩をすくめる。


 「どうせ、あんた達は釈放されるんだろ?だったら俺なんぞ買収しても意味ないんじゃないか?」


 「問題はその後なのだよ。君達の存在、特にロストヘパタロスを無力化してのけた君の存在は、なんというか」


 「うっとおしいってか?」


 言い淀むセザキスに俺はハッキリ言ってやる。


 「まあ、そう言う事だ。我々と同じ席に着いてくれれば安心なのだよ」


 「その席に着かなかったら?どうするんだい?」


 俺はセザキスを見る。


 「さあ?足が疲れるんじゃないかな?」


 セザキスが笑みを浮かべる。ちぇっ、しゃれた言い回ししやがって、言ってる内容はクソ汚いっての。


 「遠慮しとくよ、立ってるのが好きなんでね」


 「席があるうちに座った方が賢いと思うがね?」


 「さあ、どうだろうなあ。座ったら座ったでエライ事になりそうだし、やっぱやめとくよ」


 「ふふっ、どうやら君はとんだ臆病者らしいが、そのエライ事にもう足を突っ込んでいるとは思わないのかね?」


 「もう良いセザキス君、それが彼の運命という事だろう。我々に出来る事は彼が安らかに眠れるよう祈るだけだ」


 ワターが嫌な笑みを浮かべセザキスを制する。ほう?これは露骨に脅しとるよなあ?

 まったく、これまでどれだけの罪をもみ消して来たんだか知らんが、果たしてお前らのカードはボンパドゥより強いカードかな?

 俺は不敵に笑うワターを見てそう思うのだった。


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