夜の会議って素敵やん
その晩。
「ちょっと社長!ズルいじゃないですかあ!わたしだけのけ者にしようとするなんてぇ!。」
大きな声で主張しているのは、ゴドーさんが社長をしているなんでも屋キングフィッシャーの唯一の社員、イリルさんだ。
「だから、別にのけ者にしようとしたわけではないのだよ。仕事の話が主になるだろうからイリル君にとっては退屈だろうと思ってな。仕事として手当を出せるわけでもないしね。」
「ネンゲウさんも来るんでしょ?だったら、私も呼んでくださいよ!ネンゲウさんにシェリルの事を紹介したのは私なんですからね!。」
「それは関係ないだろう。しかし、まあ、皆さん、ちょっと騒がしくなりますが、イリル君もご一緒させてもらってもよろしいですか?。」
「ええ、それはもう。賑やかなほうが楽しいですよ。」
ふたりの微笑ましいやり取りを見て俺はそう言った。
そうして、ネンゲウさんとの待ち合わせ場所、食べ処飲み処ラクーンホールに到着。
食べ処飲み処ってのは看板にそう書かれていたからなのだが、中に入るとこれが、イスなどの調度品が籐みたいな植物の茎を編み込んだものでできていて、一気にアジアンリゾートといった雰囲気で良い感じ。
「おっ!ゴドさん!こっちこっち!。」
大きめのテーブル席から呼びかけるのはネンゲウさんだ。
「待たせちまったかい?どうしてもイリル君が来たいって言うもんでね。」
「酷い社長!私のせいにして!。」
「まあまあ、とりあえず皆さん、飲み物と食べ物を注文して下さい。」
揉めるゴドーさんとイリルさんを諫めてネンゲウさんが言う。
俺とキーケちゃん、ゴドーさんとネンゲウさんはエールを、残りのみんなはそれぞれ好みのソフトドリンクを注文。
更に、魚介類が美味しいと言うのでその辺りを適当に見繕ってもらい、安定のシエンちゃんは幾つかの肉料理をゴドーさん達がギョッとする程の量頼んだ。
注文した飲み物と食べ物のうちの幾らかが来て、我々はそれぞれ飲み、食べて自己紹介などをした後でいよいよ今回我々が追っている件の話となった。
何度も話しているので説明も上手くなったような気がするよ。
レインザーでの発見者騒動から今に至るまで、説明して聞かせた。
「という訳でね、どう思うネンさん。」
「ウーム、こりゃイチ衛兵隊長の身には荷が勝ちすぎるなあ。勿論、できうる限りの協力はさせてもらうが、しかし、思想商売なんてそんな事は噂話や与太話だと思っていたよ。」
「俺もそう思っていたさ。だが実際に教会が動いているんだ。」
「ただの与太話じゃあないって事か。」
「そう言う事だな。」
「ちょっとこちらからも幾つか伺いたいのですが。」
俺はふたりの会話が落ち着いたのを見計らって質問をする。
「ええ、どうぞ。」
「まず、ストーンキッズ商会の事です。どういった商会なのでしょうか。」
「うむ、ストーンキッズと言えば最大手の武器製造卸の総合商会ですな。他にも商会名は別ですが親族が金融や輸出入貿易の大手商会をしており、まあ、家族代々の大富豪ですな。」
ネンゲウさんが言う。
「更に言うなら武器製造卸では他の同業大手商会の幾つかをほぼ吸収合併していますね。そして、幾つかの国には軍備のみならず軍隊そのものを有料で貸し出していて、そうした国には国防のみならず色々な面で強い影響力を持っているようですね。まあ、大きな国の強い軍事力が王や大臣に独占されないのは、ある意味、好ましいことではあるのだが。まあ、好ましいことばかりではないでしょうな。実質ストーンキッズ王国だと言われる国もありますからね。」
とはゴドーさんの見解。
「しかし、そんな商会を敵に回すおつもりですかい?皆さん方は。」
「いや、ネンゲウさん。基本的な依頼内容は実践会についての調査でして壊滅とかではないですから、現在追っているペイルンと名乗る男が発展途上の団体にアドバイザーとして入り込み、新たなルールを作らせて団体を大きくしているのはわかっていますので、後は彼の後ろにいるのがどんな組織なのかがわかれば依頼は終了なんですよ。ストーンキッズが壁の向こうのようにペイルンにとって逃亡、移動のために利用する駒なのかそれとも彼の飼い主なのか、今のところはそれが問題ですね。」
「そもそも、ペイルンみたいな役割の者は他にもおるだろう。やつを捕えてもヒュドラの首を切るようなモノよ。問題の根本的な解決は教会が動くだろうよ。」
「ヒュドラは真ん中の首を潰さなきゃいくらでも再生するからな!。」
キーケちゃんの話を受けて、実際にヒュドラを退治したシエンちゃんが胸を張って言う。
「なるほど、わかりました。ではこれからいかがなされるおつもりですかな?。」
「まずは、ゴドーさんの掴んでくれた情報から、高レートのルーレット場に行って奴が来るのを待ち、確かにペイルンだとわかればストーンキッズとの間柄を探れるところまで探ってみようと思います。」
「そうですか、それでは私もその方向で協力させて頂きます。」
「なんだゴドさん、腕の見せ場が無いのかって顔をしてるぜ。」
「何を言うかネンさん、剣士の剣は鞘に入っていてこそ切れ味を保てるもんだ。人をバーサーカーのように言わないでくれよ。」
「ふふふ、皆さん、こう見えてゴドさん若い頃は剣鬼と言われてたんですよ。」
「また、よしてくれよ。それに、剣術館の4剣鬼にゃあネンさんも含まれていたろう。」
「ハハハハハ!。」
「うふふ。」
「モグモグ、これ!同じの3人前!。」
「まだ食べるんですか!。」
「シエンさんはいつもこんなですよ。」
「えー!いつもそんなに食べてるのにそのスタイルなんですか!羨ましい!。」
「うふふ、なにしろ良く動く人ですからねえ、でも、イリルさんも十分スタイルよろしいではないですか。」
「いや、アルスさん、イリル君は毎日素振り、乱取りとかなりの量の稽古をしておりますからな、実際、仕事をしているより稽古をしている方が多いんじゃないかってくらいに。」
「社長!もーっ!。」
大勢での食事は楽しいやね。
前世界では飲み会などで仕事の話をするのは本当に嫌だったけど、今は自営業みたいなもんだからなある意味四六時中仕事みたいなもんだしな。
こうして夜に飲み食いしながら仕事の話をするの楽しいよ。
いや、こっちに来てから何かと充実してるってのかね、いい感じだよ。




