口八丁って素敵やん
「どんだけいるんだよこれ!!」
俺は光魔法のフォーカス剣を形状変化させテニスラケットのような形にしたのを両手に持ち、そいつで球体をぶっ叩きながら言う。
最初は普通にフォーカス剣でやってたんだが、次から次へと現れてキリがないので形状を変化させて一度で沢山潰せるようにした結果こうなった。
「無限という事もあるまいて、文句言わずに頑張れ」
ホフスさんに言われてしまう。
確かに無限って事はないだろうが球体のサイズは卓球の玉程のサイズだ、持ち運びなど運用の利便性も高いだろうしどれだけ用意できるんだか見当がつかない。
皆の戦い方を見てると射程距離の長いキーケちゃんが一番多くの球体を倒している様に見える。とは言え鞭の軌跡上の敵を倒せるアルスちゃんの技もかなりの数の敵を削っているし、手数が多く踊るように移動しながら攻撃しているシエンちゃんも多くの球体を破壊している様に見える。
正確な撃破数がわからないのは各々、周囲に毒付きの刃が転がらないように粉砕するなり地面に埋まるほどめり込ませるなりしているからだ。
俺はと言えば両手に持ったフォーカス剣改ラケットをやたら滅多振り回しちゃあいるが、ブンブン飛び回る球体は結構素早く思うほど叩き潰せない。
まるでまとわりつく蚊柱をはらっているいるみたいでじれったい事この上ない。
しかもこの球体は毒の刃を回転させてるもんだからつい及び腰になり思い切り動けない。
まったく、ストレスのたまる戦いだよ。連中の狙いはそこなのかもしれない。
なんて思っていると突然暗雲が立ち込め周囲が暗くなる。
「今度はなんだ?」
俺は空を見る。
「何か空から来る、備えよ」
キーケちゃんが短く言うと、稲妻が光り生暖かい風が吹いたかと思うと猛烈な雨が降り注いできた。
勢いが猛烈すぎる。
と言うか、雹が混じっている。
俺は左手のフォーカス剣ラケットを頭上に掲げる。
周囲の視界が猛烈な雨と雹で遮られる。
雹に当たった球体が弾かれて予測できない動きをしだす。
「クソっ、なんじゃこりゃたまったもんじゃねーぞ!」
「この勢いと持続時間、風魔法や水魔法じゃあないな。気象現象を操る技術でも確立したのか」
「可能性はあるな。精霊の気が大量に消費されておる」
俺の愚痴に合わせるようにキーケちゃんとホフスさんの声が聞える。
このとんでもない大嵐、叩きつけるような猛烈な雨と雹と風はダウンバーストか?それを人工的に?やつらどんだけ兵器を持ってんだ?
やっぱり、奴らはこの場所で新兵器の実験をしてたってのか?
そんでもって、実験してた兵器の実戦使用を俺達でやってるってのか?
クソー、調子に乗りやがって!
「どぉぉぉぉぉぉん!!」
大きな声がしてまばゆい光に周囲が包まれる。
光は天に向かって伸び空を覆う暗雲を貫く。
空を覆っていた厚い雲にぽっかりと大穴が開き太陽の光が差し込む。
大穴が開いた雲は自然現象では見れないような渦を巻き四散する。
「どんなもんじゃい!」
空を見上げてシエンちゃんが叫ぶ。
今のはシエンちゃんのフォーカスレーザーだったか!シエンちゃんの場合、口から発射するから光の束が太くて威力が凄い。シエンちゃんは俺のフォーカスレーザーのが光が収束されて威力が強いって言ってくれるけど、実際に見るとやっぱりシエンちゃんの方が強いよなあ。
「ハンプトンクラブよ、もう、いい加減に出てきたらどうだ?我らは逃げも隠れもせんぞ?」
ホフスさんが周囲に響き渡るような大きな声で言う。精霊術を用いて声を拡散させているんだろう。
視界が晴れるとしつこく飛んでいた毒刃球体の姿は消えていた。
ダウンバーストの間に皆が全滅させたのか、それともハンプトンクラブが撤収させたのか。
「キィィィィィィン」
金属音のような不穏な音が響き周囲の風景が歪んだ。
「残っておった認識疎外がはがされとる」
ホフスさんが小さな声で言う。
蜃気楼のように歪んだ風景が収まると、そこに現れたのは倒れた草木と例のガニメデスイオそっくりの恰好をした連中だった。
周囲の草木は我々がいる場所を中心に放射状に倒れている。
さっきのダウンバースト、どんだけの威力だったんだよ。
「派手にやってくれたのう」
ホフスさんが連中を見て言う。
「精霊の巫女とジャーグルを裏切った工作員はわかる。残りの者達は何者だ?」
「やーっと口をきいたのう」
ホフスさんが笑う。連中は頭にカエルのようなヘルメットを被っているのでどいつが喋ったのかはわからない。
「我らをハンプトンクラブと決めつけたのは誰の入れ知恵かな?そこの赤毛か?我らの動きを探っていた所からすると、第三世界の情報機関員か?」
チビガニメデスイオが言う。
「何?第三世界って?」
俺は小声でアルスちゃんに聞く。
「開発途上の国を指す言葉です。バッグゼッド帝国とそこに属する国を第一世界、エグバード王国とそこに属する国を第二世界と呼び、第三世界はそのどちらにも属さない国というニュアンスも含まれています。帰ったら歴史のお勉強をしましょうねトモトモ」
「あざぁーっす」
俺はアルスちゃんに頭を下げる。
「そっちのとぼけた男は森の曲木を調べに来た冒険者といった所か」
チビガニメデスが俺の方を見て言う。
「とぼけててごめーーんねっ!!」
俺は言い返す。
「いずれにしても、我らと争う意味はないはずだ。我らはここで実験がしたいだけだ、大人しくこの場を立ち去れば殺しはしない。立ち去ると良い」
「うっそつけーー!」
俺の愛嬌あふれる懇親のごめんねを軽く流したチビガニメデスに言ってやる。
「なぜ嘘だと思う?」
「問答無用で攻撃しといて今更それはないっしょー。殺そうとしたけど上手くいかなかった、結構手ごわそうだから見逃すとか言って油断させて後ろから攻撃しようってんでしょーー?見え見えなんすけど?」
「手ごわい?随分と自己評価が高いな」
「またまた~、今だってこちらがどうでるかピリピリしてるっしょ?その衣装、攻撃は緩和するみたいだけど精神状態は筒抜けっしょ。そっしょ?」
「貴様ぁ面倒なことになるぞ」
お?怒った怒った。チビガニメデスには煽り耐性はついてないみたいね。
「面倒な事?もうなってるっしょ。わけわかんない集団が来て森で平和に暮らしている人々を脅かしてるんだから」
「では、今から貴様らの殲滅に移行するがいいのだな?」
「だから、なんでいちいちお伺いを立てるのよ?」
俺はチビガニメデスを煽る。
「伺いなど立ててはない、確認しているだけだ。せめて死に時くらいは決めたいだろう?」
「わかりやすいよ、あなた。ギャンブル弱いっしょ?君達ハンプトンクラブがなぜこの森を選んだか私が推理してみよう」
「ほう?面白い、聞かせてみろ」
チビガニメデスの声に余裕が感じられる。
「まずひとつめは、精霊の濃い場所だからという事。君達は元々精霊学研究者の集まりだったから、そうした場所の特定はお手のものだった」
俺は大仰に指を一本立てて言う。
「ふふふっ、陳腐な推理だがまあ良い。続きを聞かせてみろ」
「ふたつめに、実験により大きな災害が起きても当事国に被害が及ばない事」
俺は指を二本立てる。
「ほーう、少しはマシになったか。それだけか?」
楽しんでいるような声で言うチビガニメデス。
「みっつめに矛先をジャーグルに向けるため」
俺はゆっくりと更に大仰に言い三本目の指を立てる。
「ジャーグルだと?」
「そう。つまり君達に依頼した国はジャーグルを陥れたいと考えているって事だ。依頼国はジャーグルが国際的に追い詰められる事を望んでいる、それはなぜか?」
「・・・・」
チビガニメデスが押し黙る。
「それは、依頼国が追い詰められたジャーグルが無茶をして弾けると得をするからだ!」
俺は人差し指でチビガニメデスを指差した。
チビガニメデスの右手の指がタイピングするように動く。仲間に何かを伝えているのだろう。
「依頼国はジャーグル以外にも陰で技術供与をし武器を売っている。大陸の情勢が悪化すればするほど自国の利益になるって訳だ。更に言うなら・・」
「もう良いよ、面白い見世物だったがこちらの準備は整った」
チビガニメデスがこちらに手のひらを向けて大仰に言った。
「トモトモ、良いですよ」
アルスちゃんの声が聞える。
「それはこっちのセリフなんだよ!」
俺が叫ぶとアルスちゃん、シエンちゃん、キーケちゃんが一斉に何かを引っ張るような動作をする。
「ぬおっ!」
「がっ!」
「あぶっ!!」
「なっ!」
周囲の倒れた木の影から声がし何かがこちらに向かって飛んで来る。
「なに!!!」
チビガニメデスの驚いた声が聞える。
時間稼ぎをしていたつもりだったんだろうが、実際にイニシアティブをとってたのはこっちだったって訳だ。
「さてと、何が起きたのか説明してやろうか?」
俺はチビガニメデスに言う。
ヘルメットをしていても驚いた顔が見えるようだ、今まで余裕ぶってこちらを軽んじていたが気持ち良いったらないね。




