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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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人に事情アリって素敵やん

 「すべて話しても良いな?」


 「いえ、自分で話します」


 ホフスさんの言葉にマイルさんはそう返した。


 「最初に約束して貰いたいのですが、私はどうなっても良いのでホフスさんを・・・、ホフスさんの事を守って欲しいんです。お願いします」


 マイルさんはそう言って頭を下げた。


 「マイルよ・・・、わたしの事なら心配いらぬと言っておろうに・・」


 ホフスさんが困ったような呆れたような、それでいて少し嬉しそうな、そんな複雑な笑みを浮かべる。


 「ホフスは優秀な術師だ。あたしらの力など借りずとも大概の問題は対処できよう。そもそも、ほとんどの奴はこの場所に辿り着く事すらできまい」


 キーケちゃんが言う。


 「連中はその辺のチンピラとはわけが違います」


 マイルさんはきっぱりとそう言った。


 「連中とはいったい誰の事なんだ?そいつらが不自然に曲がった木やいるはずのないファントムが居る事と関係しているのか?」


 キーケちゃんが尋ねる。


 「まずはホフスさんの安全確保を、バッグゼッド帝国として約束して貰いたい」


 「バッグゼッド帝国として、だと?あたしたちはファルブリングカレッジの依頼で来た冒険者だと言ったはずだが?」


 「あなた方が只者ではないのは私でもわかります。ホフスさんが信用されたのは、あなた方の実力と後ろ盾が国だと見抜いての事とお察しします」


 キーケちゃんの顔をまっすぐに見るマイルさん。


 「考えすぎだマイルよ。さすがに精霊も後ろ盾まではわからんよ」


 「経験から来る観察眼では如何です?」


 「・・・・、まったく、お前は・・・。確かに、わたしもそう見るよ、これだけの実力者たちが今、この状況でやって来てこの森で起きた妙な現象を調べている。国が絡んでいると考えるのが妥当な線だろうが実力や物腰から考えて国に使われている感じではない、実際に学園のために動くと言っておったから融通は効きそうだ。なにより彼らは実に紳士的な態度でわたしに接してくれている、こんな怪しいババアにな、かっかっかっか」


 大笑いするホフスさん。


 「怪しいババアってんならキーケちゃんだって負けてないからなっ!ぎゃふん!!」


 また余計な事を言ったシエンちゃんの顔に空気のかたまりが猛烈な動きでぶつかる。

 

 「あばばばば、目がちかちかするじゃないか!」


 シエンちゃんが柑橘類の汁を浴びた猫みたいに顔を盛んに擦る。


 「今のは目がちかちかどころの技じゃあないがなあ。どれだけ丈夫なんだこの娘っ子は」


 「きっひっひ、丈夫さなら我らの中でも一番だ。なんせ火山の噴火を喰らっても軽い火傷ってなもんだからな、こいつは」


 キーケちゃんが笑って言いマイルさんが凄い顔をする。


 「あれは熱さより煙に注意したほうがいいぞ?煙くて喉がイガイガするからな」


 シエンちゃんが教え諭すように言うが、そんな事は誰の参考にもならないよ。


 「確かにあたしらは帝国の上の人間とも通じておるが、基本的には好きなようにやらせて貰ってる。だから、あたしらから見て看過できなければ誰であろうとそれなりの償いはしてもらうし、逆に国や民にとって害悪にならず真面目に生きているのならばいちいち目くじら立てるような事もせん」


 キーケちゃんが言い、俺達はうんうんと頷く。


 「・・・・、わかりました。そう言う事なのでしたら私の話を聞いて判断して下さい」


 マイルさんはしばらく目を閉じ何かを考えていたが、ゆっくりと目を開き腹をくくったような表情になり話を始めた。


 「私の名前はマルコス・アワースキン。ジャーグル王国対外連絡局在バッグゼッド工作部隊所属の工作員だ」


 「えええええ!!」


 俺はびっくりして思わず声を上げる。


 「ふふ、驚くのも無理はない。あなた方の国に害をなす存在の筆頭だろうからね。だが、捕縛するのは少しだけ待って欲しい」


 「いや、驚いたのはそこじゃないんですよ。マルコス・アワースキンって言いました?」


 「ああ、いかにも」


 「って事はですよ?あなたはマール・ワッキネンさん?」


 「なぜその名を?」


 「ワッキネンさんで間違いないんですね?」


 俺は念を押す。


 「ああ、それは私の昔の名前だ」


 「マジかーーーーー!こんな事あるんだーー!いやーーーっ良かった良かった!オッシュキンさん喜ぶよ!」


 俺は立ち上がってマイルさん改めワッキネンさんの手を取る。


 「!!それは、マーガレットの事ですか!」


 ワッキネンさんは驚きに目を丸くして俺の手を強く握りしめた。


 「そうそう!マーガレットさんね!」


 ジャーグル名マーガレット・アワースキンさん、バッグゼッド名マーゴット・オッシュキンさんだ。ややこしいな、もう。


 「マーガレットの居場所がわかるんですか?」


 「わかるわかる!つーか、会いたければいつでも会えるよ!」


 俺は興奮気味になりマーゴットさんの事を話して聞かせた。ワッキネンさんを思い慕い続けていた事。ワッキネンさんの行方についてはっきりしないジャーグル上層部に不信感を抱き、自身がテストパイロットをやっていた秘密兵器ガニメデスイオをジャックしバッグゼッド帝国にワッキネンさんを探しに乗り込んできた事。ジャーグルはガニメデスイオごとアワースキンさんを亡き者にせんと画策したがなんとか撃退した事。


 「その時に俺はマーゴットさんに命を救われてね、そんな事もあって今彼女は御父上の保護下にある。バッグゼッド帝国内で行方不明になってる君を探すって言ってたよ。実際、君の身柄は捜索対象になっていた」


 「ジャーグルは飛行山を出してきたんですか・・・、それは本気で存在を消そうとしたって事ですね・・。私のみならず妻までも・・・」


 ワッキネンは拳を強く握り唇を噛み締めた。


 「・・・しかし、ガニメデスイオの威力範囲内で飛行山を破壊するなど、とても信じられませんが・・・この御三方と一緒に冒険者パーティーを組んでいらっしゃるという事は、やはりそう言う事なんでしょうね」


 「いやいや、ただ体内魔力量が人よりちょっと多いだけ」


 俺は首をブンブン振って顔の前で手をブルブル振る。


 「ふふふっ、ちょっとですか。敵いませんね・・・、妻を救って頂きありがとうございました」


 ワッキネンはそう言ってゆっくりと頭を下げた。妻かー、この歳で大したもんだなあ、立派だよ。


 「こっちも助けて貰ってんだからお互い様だよ。それよりもホフスさん、なぜ彼にこの話しをさせたかったんです?なぜ私達の目的と関係あると思ったんです?」


 俺はホフスさんに尋ねた。


 「それはな、こやつがここに来た理由と関係があるからだ」


 「すいません、きちんと私の口から説明します」


 ホフスさんの言葉の後、目頭を押さえながら顔を上げたワッキネンが口を開く。

 

 「私はこの村で木工細工職人の見習いとして潜伏するように指示され、行き倒れを装いひとりの職人の元に転がり込みました・・・」


 そうしてワッキネンは自身の過去について口を開きだすのだった。


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