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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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子供のお使いって素敵やん

「キッパはオーディナスへの道は知っているのかい?。」


 キーケちゃんが優しく聞く。


「うん、友達と一緒になら何度か通った事があるから。ここに出る魔物は動き遅いから今日も簡単に逃げれたんだけど、あんなに大きなのに囲まれるなんて思わなかったから。」


「うふふ、魔物も相手の数や大きさを見て襲ってきますからね、気を付けたほうが良いですよ。」


「そうなんだー。知らなかった!。お姉ちゃん物知りだね!。」


「ものひりさんだねえ。」


 アルスちゃんの説明に答えたキッパを真似するルッパ。

 カワイイね、ハティちゃんよりも小さいものなあ、みんながほっこりするよ。

 とは言え、俺はチョコチョコ出てくるグールにヘッドショットするお仕事がありますけどね。


「グールみたいに見境なく襲ってくるのもいるからな。」


 シエンちゃんが言う。

 俺はヘッドショットを続ける。

 同じ事を続けるのも面白くないから、水魔法で氷の手裏剣を発射してみたり、高圧水カッターで打ちぬいたり、土魔法で作った石の玉を高速でぶつけてみたり、とにかく、頭以外にダメージを与えない精密射撃の練習をしたのだった。

 そんなこんなで俺はグールを倒し、みんなはキッパに魔物の習性を教えながら湿地帯を抜けて行く。

 湿地帯を抜けると幾らもしないうちに街に出る。

 街は大人の肩程の高さの柵に囲まれており、それは外敵避けと言うよりは境界線や獣除け程の意味なのかそれ程物々しくなく、門のようになっている個所も開放厳禁と書かれているだけで番をする者がいるわけでもなかった。


「ここから入ると薬屋さんに近いんだよ。」


 そう言うキッパに続いて我々は門を通って街に入る。勿論、開けっ放しにはしないように気を付ける。

 トットコトットコ歩いていくキッパとチョコチョコとそれに続くルッパ。

 見ていて微笑ましいね。

 微笑ましいのだけど、さっき湿地帯を抜けている時なんて2人ともサッサカサッサカと足元の悪い中を進むんでちょいとビックリしたもんね。

 アルスちゃんが言うには、スワンプゴブリンは元々は沼地などを好む種族なのでこうした場所はそれこそ彼らにとっては得意な場所なのだと言う。更に言うならば、そうした種族的特徴が驕りを生んで危険地帯に幼い身ながら足を踏み込む結果となったのだろうとの事。

 皆がキッパに口を酸っぱくして言い聞かせるのも、そうした背景ありきだったわけだ。

 俺は、ちょいとばかりクドイけど、まあ、命がかかってる事だしな、なんて思っていたが、あにはからんや。

 やはり、シエンちゃんもアルスちゃんも、キーケちゃんも、皆、俺より長く生きておりこの世界についても良く知ってられる訳で、改めて今後もご指導ご鞭撻のほど宜しくお願い致したい所存でございますよ。

 薬屋さんに着くとキッパは腰につけていた巾着袋からコインを出して小瓶に入った黄金色の液体を購入していた。


「なんなの?あれは?。」


 俺はアルスちゃんに聞いてみた。


「あれは、ポーションハニーですね。回復材の原料となる花の蜜を集める蜂の巣から採れた蜂蜜で、体力回復、滋養強壮、疲労や発熱などによる消耗時の栄養補給にすぐれた効果を現します。」


 なんだか、ファイトー!!と叫びたくなる薬効だよ。

 まあ、病で臥せっている母に子供が買うものとしては最善だとは思うけど。

 こうして、初めてかどうかはわからないが、子供達のお使いミッション、半分は終了だ。

 後は無事に送り届けるだけ。

 俺は時間がかかっても安全のため、湖迂回の街道ルートで帰ったほうが良いのではないかと提案したのだが、キッパとルッパがなるべく早く帰って母にポーションハニーを飲ませてあげたい、と言う。

 皆も、このメンツなら問題はないだろう、と言うのでそれでは湿地帯ショートカットで参りますか、という事になった。

 キッパとルッパにはアルスちゃんとキーケちゃんの2人が付き、鉄壁のディフェンスでもって魔物の破片ひとつ届かせはしなかった。

 俺は相変わらずのグールヘッドショットトレーニング、グール以外の魔物はシエンちゃんが殴ったり蹴ったりウッキウキで退治していた。

 グール以外で出没した魔物は、こうして歩いて渡れる浮島湿地帯の付近の水は浅いのか魚系の魔物は出ず、半水棲とでも言うのか、爬虫類両生類系統の魔物が多かった。

 手足の生えた巨大な蛇みたいな魔物はよくよく見れば頭部に感覚器官がついており、身体も蛇と言うよりはハイギョに近いようなヌメヌメした鱗のないモノで、前世界のオオサンショウウオに似ていた。

 シエンちゃんがそのワニサイズのオオサンショウウオを、ヌメヌメ野郎にはこれだ!と生えていた木を引っこ抜いてのタコ殴りで倒すとキッパがこいつは肉が美味しくて精がつくから高値で売れると言う。

 シエンちゃんは、丁度いいから持って帰ってキッパとルッパの母さんに食べさせよう!と言うがキッパはこんなに沢山は食べきれないよと言うので、じゃあ、持って帰って食べれる分だけ残して後は売ってしまおうという事になった。

 ほいじゃ、あちきが持ちますかい、と俺が持って行くことにした。

 以前の坑道での巨大ウナギの時もそうだったが、ヌメヌメしてるから地面に引きずる部分も摩擦が少なくて運びやすいよ。

 そうして、目的地の退廃街に無事到着。

 キッパの案内で肉屋に行き、一部を取り分けて残りを売却する。

 肉と売却金は、案内賃としてキッパとルッパにあげてよいかとシエンちゃんが提案する。

 俺たちは特に異論も無く、じゃあ、そうさせてもらうぞというシエンちゃんに任せることにした。


「おい!キッパとルッパ!。」


「なに?お姉ちゃん?。」


「なあにい?。」


「2人は今日は頑張ったな!もう危ない事はしないと約束もしてくれたな!。」


「うん!約束する!。」


「しゃくそくぅ!。」


「よーし、それじゃ、この肉と肉を売ったお金は、お前たちの今日のお駄賃だ。我らをこの街まで案内してくれたからな。」


「いいの?守ってもらってただけなのに。」


「キッパは立派にルッパを守っただろ。これからも兄妹力を合わせて、お母さんを悲しませないように頑張るんだぞ。」


「わかったよ!ありがとう!お姉ちゃん!。」


「わかっぱー!。」


 ええ話やないか!ほんま、涙が出てくるがな!って!ルッパちゃん!わかっぱって言ったよな!カッパって!おいおい、わかってて言ってやしないだろうな。

 俺たちは、なにかもてなしたいから家に寄ってくれと言うキッパに、お母さんが元気になったら立ち寄らせてもらうよ、と告げ2人と別れたのだった。


「いやー、いい事すると腹が減るな!さっきの肉を食わせる店を探して飯にしよう!。」


「きひひ、シエンらしいの。しかし、ジャイアントニュートの肉は美味だと聞く。これは食さねばなるまいて。」


 いつも通りのシエンちゃんの意見にキーケちゃんも賛成し、我々は先ほどの魔物、ジャイアントニュートの肉を出している店を探し入ることにした。


「我も食べたことがないのだが、お爺は食べた事あるのか?。」


「いや、わても初めてだす。楽しみだんなあ。」


「アルスちゃんも初めて?。」


「はい、初めてです。美味だとは聞いてますけど、レインザーではあまり生息していない魔物ですからね。」


 どうやら、俺も含めてみんな初めてのようだ。

 店に入るとなかなか賑わっており、どうやら人気店のようだった。

 お店の人にテーブル席へ案内されメニュー見ていると。


「すいませんお客さん、相席お願いできますか?。」


 お店のお姉さんに声をかけられる。

 皆、別に構わないとの事で、お店のお姉さんは、すいませんねえと言いながら一人の男性を連れて来る。

 長身でがっちりした身体、頭からは二本の角が除いている、ちょっとニヒルな感じのするワイルド系色男だ。

 隣に座っていたアルスちゃんが俺のこめかみに触れる。


「アーマーオウガさんですね。この街の王様の配下かも知れませんね。だとすれば、なかなかの情報網をお持ちのようです。」


 うひゃ、アルスちゃんの指先が震えて直接声が響いてくる。

 すげーなこりゃ、魔法版骨伝導と言ったところか。

 俺はゆっくり頷いた。


「すまないねえ。皆さんはこの店は初めて?お初だったら、俺がおすすめを教えるよ。」


「じゃあ、頼むか。お前のオススメを人数分と、その中でも一番のオススメをとりあえず5人分頼むよ。」


「おおー!シエンちゃんにしては控え目じゃないのさー。」


 俺は思わず言ってしまった。


「まあな。まだどんな味かわからないからな、我は食には慎重なのだ!。さあ、頼め!お前の分も頼め!お前のオススメが本当に美味かったら御馳走してやろう。」


 そう言われて面食らったアーマーオウガの兄さんは、それでもすぐに元のニヒルな表情になり店員さんを呼んで注文をしていた。


「自己紹介が遅れたな。俺はビドリ。よろしくな。兄さん方は冒険者かい?。」


 俺を見て言うアーマーオウガの男、ビドリさん。


「はい、そんな感じですね。」


「そんな感じ、ねえ。人探しでここに来た、とか?。」


 おや?こりゃ、アルスちゃんの言った通り、ある程度の事がわかっていてカマかけてるのかな。


「ほう、よくわかるのう。それで、デクラインとやらのお使いの坊やは、どんなご用件かの?。」


 キーケちゃんの言葉に頬をヒクつかせるビドリさん。あら?怒った?


「ふぅー、なら話が早いや。ちょっと顔貸してもらおうかな。」


「おっ!肉が来たぞ!話はその後だ。まずは肉だ!。」


「いや、ちょっと。」


「いいから!話は後だと言ったろうが!いっただっきまーす!。」


 ニヒルキャラだったビドリさんも、肉を前にしたシエンちゃんにはそのキャラを崩されるわな。


「おっ!!モグモグ、こりゃ!モグモグ。うんまーーい!!でかしたビドリ!こりゃ美味い!約束通りお前の分は我が驕ろう!!モグモグ。」


「いや、そうじゃなくてだね。」


「まあまあビドリさん、食べてからにしましょうよ、こうなったらシエンちゃんは止まりませんので。ね?。」


「そうそう、考えたら負けでっせ。こん人らと付き合うなら、流れに身を任せなはれ。悪いようにはならんさかいに。」


 俺に続いてサマ爺までそんな事を言うもんだから、ビドリさんも観念してやってきた料理を食べだした。

 その後、5人前を平らげたシエンちゃんは、更に気に入ったジャイアントニュートのスープを5人前ペロリと食べてから、腹八分目だ!と高らかに宣言しお食事フィニッシュとなった。

 ビドリさんはシエンちゃんの食べっぷりに明らかに気圧されており、更に本当にシエンちゃんが驕ってくれるに至っては、もう両手を上げたようなものだった。


「ちょっと、兄さんたちには色々な意味で敵いそうもないな。でも、こっちも仕事なんでね、このまま御馳走様でしたと帰るわけにもいかなくてね。力づくじゃあ、どうにも無理そうだが、何とかついてきて話を聞かせちゃ貰えないだろうか。」


「いいぞ!な?みんなも別に構わないだろ?。」


 シエンちゃんがきっぱりと言う。何をわかりきった事を言うのだ、と言わんばかりだ。

 俺たちはデクラインに繋がるものならば、逆に話を聞きたいくらいだってんでシエンちゃんのいう事には賛成だった。


「なんとも、兄さん方には肩透かしを食うなあ。これでも、かなり覚悟を決めて言ったんだぜ。でも、そう言ってもらえると正直ありがたいよ。俺も、近々所帯を持とうかなんて思ってたもんでさ、今、死ぬのも未練が残るってなもんでな。」


 マジで一旦は死をも覚悟したのだろう、そのプレッシャーからの解放が、どうにも口を軽くさせているようだった。


「きひひ、だったら尚更の事、死に急ぐな。お主は相手の力量を読む事は出来るようだから、それを上手く使うと良い。それにな、我らは皆、基本的には殺生を好まぬ。」


「ふふ、そうするよ。」


 ニヒルに笑うビドリさん。

 俺たちはビドリさんに案内されて退廃街を歩いた。

 しばらく歩くと、子供の声がする。


「あーー!!お姉ちゃんたち!それにビドリさんも!知り合いだったのー?。」


 元気よく声をかけてきたのはキッパだった。


「おう!キッパ。母さんは大丈夫か?。」


「うん、ポーションハニー買ってきたから、それを飲んで寝てるから大丈夫!。」


「お前、まさかオーディナスに行ったのか?湿地帯を通らなかっただろうな?。」


「ごめんなさい。どうしても、早く買ってきたかったから。」


「ダメじゃないか!あそこは本当に危険なんだ。子供だけで行っちゃダメだと言ったろう。大丈夫だったのか?危ない目に合わなかったか?。」


「うん、そこのお姉ちゃんたちに助けてもらったから。」


 キッパはビドリさんに今日あった事を説明し始めた。

 母を思う一心で危険な事と分かりながらやってしまった事を、そして、シエンちゃんたちに助けられ、魔物の怖さや習性について沢山教わった事、お母さんのためにももう危険なことはしないと約束した事、そして、街への案内のお駄賃でジャイアントニュートの肉とそれを売ったお金を貰った事、今晩はジャイアントニュートの肉でお鍋を作るからってお母さんが言ってた事、そして妹と一緒のちょっとした冒険譚、等々、キッパは身体中を使って説明した。


「・・そうか、わかった。無事でよかったよ。母さんには無理をするなと伝えておいてくれな。」


「うん!わかった!夕飯には来てくれる?。」


「ああ、行かせてもらうよ。」


「やったー!母さんも喜ぶよ!じゃあね!お姉ちゃんたちも、またね!!。」


 キッパは元気に手を振って去って行った。


「あいつらの親父は俺の同僚でな。ルッパが生まれた時に、イービルレイクで魔物を狩って祝い物を買うんだって出かけて行って大型の魔物に襲われてな。俺たちが駆け付けた時にはもう息を引き取っていたのさ。それから、面倒を見てたんだが、まあ、な。」


「そうかあ、いきなり2人の子持ちってわけね!おめでとう!キッパもルッパもいい子たちだからねえ。ルッパちゃんのお母さんならキレイな人なんだろねえ。もー!このこのー!お幸せに!。」


「いや、あ、おう。ありがとう。どうやら色々と世話になったみたいだな。本当にありがとう。」


 そう言ってビドリさんは深く頭を下げた。


「いやいや、大した事はしておらぬ。それより、あの2人には良く言い聞かせたから、帰っても余り怒らんでやってくれ。」


 今日のシエンちゃんは一味違うぜ。


「ああ、わかった。子供達の恩人となれば、このまま連れて行くわけにも行かない。すまなかった。」


「いやいや、連れて行ってもらわねばこっちが困るわい。またデクラインに通じる者を探さなければならなくなる。それは面倒だ。」


「ホンマでんなあ。連れてってもらえると助かりまんなあ。」


「そうそう、人助けと思って連れていってよ。」


「いや、しかし俺が言うのもなんだが、うちは大分荒っぽいぞ。」


「おー!荒っぽいのは得意だ!任せろ任せろ!どうも、あの湿地帯は歯ごたえ無くてなあ。」


「うふふ、わたしも今日は出番が余りありませんでしたからねえ。ちょっと動きたいですね。」


「まあまあ、シエンちゃんもアルスちゃんも程々に、別に喧嘩になるとは限らないんだから。」


「えーー?限らないのかー?つまらんなあ、アルス。」


「ねえ、シエンさん。」


「いや、まあ、穏便に済むように俺も力を尽くすから、出来れば戦闘は無しで願いたい。」


「きひひ、まあ、努力するかねえ。」


「ああ、そうしてもらえると助かる。」


「では、案内頼みますね、ビドリさん。」


「おう、なんだか妙な成り行きになったが、了解した。」


 確かに妙な成り行きだが、まあ、この調子ならそれ程心配しなくても大丈夫だろう。

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