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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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戦の後に先の事って素敵やん

 さらにコゼランちゃんの話は続く。

 正式な声明を出したのはバッグゼッド帝国だけではなかったようで、ドーンホーム教会本部もほぼ同時に正式な声明を発表したとの事。

 その内容とは、ジャーグル王国の侵略行為について激しく非難するもので、ジャーグル王国の国教としての扱いを解消するとの事。これはドーンホーム教会としては大変思い切った事であった。というのもジャーグル王国内の信徒を切り捨てたとも取られかねない行為だからだ。

 ドーンホーム教会はジャーグル王国内のドーンホーム教会信徒に対して、国教としての機能は終わりを告げたが信仰の道筋は同じであるとして今まで通りの行動を促し、ジャーグル王国には信徒に対して非人道的な行いをしないように強く警告したのだが。


 「ところがなあ、ジャーグル王国内のドーンホーム教会がこれに対して真っ向から反論をしてなあ」


 コゼランちゃんがこめかみを揉みながら言う。


 「こちらこそが本流でありドーンホーム教会本部は教義に反しているとかなり強い反応を示してなあ。下手すると割れる可能性もあるな」


 コゼランちゃんの話に記者団側からざわつきが漏れ聞こえた。この話はジャーグル王国とバッグゼッド帝国の今後より大陸に大きな影響を与えるのかも知れないな、タンゼニン氏もこれから色々と忙しくなるだろうな。

 

 「今の所、こちらでつかんでいる情報は以上だ。何か質問があれば答えられる範囲で答えるが」


 コゼランちゃんが言うと記者団が一斉に手を上げる。

 記者団の中にはすました顔をしてポイ姉さんも座っていた。関係各所への根回しは済んだのだろうか?俺の視線に気づいたポイ姉さんはにっこり笑ってウインクを返してきた。

 俺は軽く避けるジェスチャーをしてやると今度は投げキッスをしてきおった。まったくその余裕、ちょっと腹立たしいが俺とは役者が違うって事か。悔しいが仕方がない、俺は死んだ目をしてポイ姉さんを見つめた。

 

 「何をイチャイチャしてるんです?」


 「これがイチャイチャしてる奴の目に見えるか?」


 小さな声で話しかけて来たケイトに俺は白目をむいて見せた。


 「ふぅ、まったく冗談ばかり。それで、昨夜、山で何があったのですか?彼女と関係があるのですか?」


 ケイトはため息をついてポイ姉の方を向き俺にそう言った。鋭い奴め。

 

 「その事は後でコゼランちゃんに報告しようと思ってたんだが」


 質疑応答が続く中、俺はポイ姉さんとロジアンホープが同一人物だという事には触れずに、山中であったことをザックリ話して聞かせた。

 

 「ラスピリーヤはバッグゼッド帝国とは友好関係を結んでいると聞きますが、ロジアンホープ氏の動きはどう見たら良いのでしょうね」


 「敵じゃあないと思うけどな。発見したらせんもひとりでどうこうしようとはしなかったからな。関係筋に根回しして研究班に加えて貰おうとしてるみたいだしな」


 「実際に顔を合わせているジミーさんがそう感じるのでしたら、そうなのでしょうね」


 「ケイトだって一回、会ってるだろ?」


 「あれだけじゃ何とも言えませんね。ジミーさんはあれからも幾度か会ってるようですし」


 ケイトはポイ姉さんの方を見て言う。こいつ、なんとなくわかってんな?それでも直接聞いて来ないって事は俺が話さないのはなにがしかの事情があるとふんでか。

 

 「さすがはモスマン族高官のお嬢さん、ってなもんか?」


 「何をおっしゃられてるのかわかりませんが?」


 ケイトが気取った調子で言う。ケイト流の冗談なのかね。


 「ふふっ、まあ、いいさ。色々、気を使ってもらっちまって悪いな」


 「ふぅー、あんまり女性に気を使わせないで下さいね。気を使うのは男性の仕事ですよ」


 「ごもっとも」


 俺はケイトに頭を下げた。そうこうしていると記者団の質問も上がらなくなり、コゼランちゃんの報告会は終了となった。俺はコゼランちゃんを呼び止め昨日会った事を報告した。ケイトに話した時と同様、ポイ姉さんとロジアンホープが同一人物だという話はしなかった。

 俺からの報告にはファルブリングカレッジ組と、どういう訳だかシャンドレ記者も参加していた。


 「ちょっちょっちょ、待って、待ってくれよ!らせんって、結局、ただの図書館みたいなものだって事かい?」


 俺の話を聞いたシャンドレ記者が前のめりになって俺に詰め寄る。


 「いや、ロジアンホープさんがそう言ってたってだけで、俺には良くわからなかったよ」


 俺は答える。


 「ロジアンホープさんってラスピリーヤの高名な歴史学者でしょ?だったら、そう言う事だよ!なんてこった・・・無限の力って何だったんだよ・・・」


 余程ショックだったのだろう、シャンドレ記者は膝から崩れ落ちた。


 「シャンドレ君だったよな?君がシャルドウトーラスの謎に並々ならぬ関心を抱いていたと言うのは聞いてるよ。拍子抜けする気持ちもわからんではない、しかしな」


 コゼランちゃんがいつになく真面目な顔をしてシャンドレ記者に言う。


 「これはある意味、どんな力よりも価値があるものかも知れないんだ」


 「どんな力より価値がある、ですか?コンパクトな図書館がですか?」


 「歴史が、だよシャンドレ君。歴史を学ぶことは未知への理解を深める事、歴史を知る事は今を生き抜く知恵を得る事。歴史とは人が蓄積した英知であり、現代に生きる我々が触れる事が出来る最も異なる文化なんだ。我々はそれを深く知る事で人々の間に蔓延する多くの苦しみを解決する手立てを得られるかもしれない。それはどんな力よりも価値がある事だとは思わないかシャンドレ君」


 おおー!コゼランちゃんが賢そうな事を言ってるー!!俺は驚いたが、良く考えてみりゃコゼランちゃんは国家機関で働くスーパーエリートだった。いつもチャラけてるから忘れてたよ。


 「コゼっちかっくいいーー!!」


 集まった人の間から顔を出したディアナがコゼランちゃんに言う。


 「そうだろ?俺ってカッコイイのよ実は」


 コゼランちゃんが胸を張る。


 「シャンドレ記者はご先祖様がシャルドウ教祭司だったから特別な思い入れがあったんですよね?」


 「うん、そうだよ」


 ストームの言葉にシャンドレ記者が頷く。


 「だからご先祖様が後世に残した物は凄い物であって欲しいって思った」


 「そうなんだよ。きっと何か素晴らしい力なんじゃないかって、バッグゼッド帝国の魔導技術をまた先に進めるような、人々の暮らしを明るくするような素晴らしい力なんじゃないかって思ってたんだ。確かにコゼランさんが言うように歴史的な価値はあるかもしれないけど・・・、いや、それも立派な事だもんね」


 シャンドレ記者は立ち上がり膝のホコリを払って言った。


 「いや、ロジアンホープさんの言葉が本当ならばこれは一般の人々の生活をガラッと変える凄い発見になるかもしれないですよ」


 ストームが言う。


 「え?本当に?」


 「ええ。情報の集積、管理に革命を起こす可能性があるシステムだってロジアンホープさんは言ったんだよね?」


 「あ、ああ、確かにそう言ったけど」


 こっちを見て言うストームに俺は答える。


 「だとすればこれは凄い事だよ。今まで沢山の紙束で運ばれるか口伝えで扱われてきた情報が、実体のない、それこそ水のように流動的な物として扱われる事になるのなら。家にいながら膨大な情報を得る事が可能になるという事ですよ。それこそ、全ての家庭に帝国図書館と最新の新聞があるような状態、いやそこにもって世界中の噂も集まるような、そんな未来がすぐそばに来ているのかも知れないんですよ。考えただけでゾクゾクしますよ。世界の果てで起きた事がすぐに各家庭で知る事が出来るようになったら。いや、待って下さいよ、情報の拡散も手軽にできるようになってしまう可能性があるって事か。となると、いや、これは、もしかすると大量破壊術式以上に扱いに注意が必要な技術かもしれないぞ。今までの噂レベルじゃない、もう、誰にも制御できない自然災害のような情報の渦に我々は晒される事になるのかも知れない。いや、これは、マズいですよコゼランさん!早めに手を打たないと!!」


 ストームの奴はシャンドレ記者にこのシステムがいかに凄いか話しながら、それが将来生み出すかもしれない弊害に辿り着き顔色を変えた。

 シャンドレ記者も含めて集まったほとんどの者はキョトンとしていたが俺はストームの言っている事が理解できた。こいつの言ってる事ってのは、俺が前世で見て来た事に非常に近いからだ。つまりインターネットが人類に及ぼした影響に。

 そして、ストームの言っている事に気付いた人がもうひとり。ストームと同じく情報を扱うプロ、コゼランちゃんだった。


 「ストーム君。研究チームにアドバイザーとして加わって貰いたいのだが、構わないか?」


 「ええ、こちらこそお願いします」


 コゼランちゃんに真顔で言われ力強い返事をするストーム。


 「そんなに凄い事なんですか?」


 コゼランちゃんとストームの真剣さから事の重大さに気付いたシャンドレ記者が恐る恐ると言った調子で尋ねる。


 「まだまだわからんが、ストーム君の言うような事になる前に、まずは限られた場所での運用を想定したものから始めるだろうと思うが。問題は量産コストだな、魔導飛行船や魔導列車のようにコストがかかれば一般普及にも時間がかかるから急激な拡散による弊害は考慮しなくても良いが、魔導通信機のようにコストが左程かからず一気に普及可能だと問題だ」


 「その場合はやはりコントロールが必要でしょうね。同時にこれがどういうものでどのようなメリットデメリットがあるのか周知する必要があるでしょうね」


 コゼランちゃんに続いてストームが言う。


 「とにかく、あれは凄い力を秘めたものって事なのかな?」


 シャンドレ記者が俺に尋ねる。


 「ええ、それこそ世界を変えるかもしれない力ですよ」


 俺が答えるとシャンドレ記者は嬉しそうに笑った。

 まあ、現実的な事を考えると、さすがに前世のインターネットのようにはいかないだろう。まずは動力源だが前世では電気、こっちだと魔力。バッグゼッド帝国では普及率が高いが、他の国では個人で魔力蓄積装置や魔力で動くものを持つような家庭は稀だ。まだまだ世界的に見れば貧しい人の方が圧倒的に多いのだ。前世では貧しくても電気は使える家庭がほとんどだったがこっちの貧しさはそんなレベルじゃないからな。

 更に問題なのが国家間の関係の悪さだ。この状態では世界的通信網なんて夢のまた夢だろうな。

 だが、そうは言ってもバッグゼッド帝国内で言えば一気に普及する可能性は十分あるわけで、そうなると前世であったようなネットの弊害、誤った情報の拡散や個人情報の流出、誹謗中傷などのトラブルは十分起き得るだろう。

 安定しない国際情勢を考えれば、国家を騒乱させるような情報を拡散させる者が現れる事も十分考えられる。

 コゼランちゃんとストームの心配はそんな所にあるんだろうな。


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