接戦って素敵やん
「いやー、またまた番狂わせでしたねースモアンさん。」
「はい、今大会はどうにも先行きの読めない展開の連続です。運営も二回戦目のオッズ組に四苦八苦しているようですね。」
「まさに、混沌の団体戦となってまいりました!続きまして次鋒戦!西の方角!ウパタル探検隊から、ケートモマン選手の入場です!。」
「じゃ、行ってきまーす!。」
俺はみんなに声をかけ入場した。
「どんどんどんどんどん!!!。」
「あんだっちぇんじゃーーねーーぞーー!!。」
「ごうごうーーーー!。」
うわー、四方八方から足踏みや怒号や歓声なのかよくわからない声やら音が渦巻いて、なんだか凄いよ。
これは頭がクラクラして酔いそうだ。
「東の方角!!!!悪鬼夜行より、シャブラン選手の入場です!。」
「ぎゃぁーー!!!。」
「やっちまえーーー!!!。」
「お前に賭けてんだぞぉーーー!!!。」
東入場口から入ってきたのは、すらっとした体躯に二本の角の生えたサラサラヘアーで片目が隠れているクール系イケメン鬼だった。
「ローグスがお世話になりました。今度は私が歓迎致しますよ。」
「よろしくお願いします。」
俺は相手に礼をする。
「フフフ、食えない方ですね。」
「さあ、両者、参加規約に則った戦いをお願いします。では、開始!。」
クール系イケメン鬼のシャブランさんは、ニヒルな笑みを浮かべながら俺に手のひらを向けてくる。
手のひらからは何も感じない、うん?フェイクか。
本命が他所にあるか?
ゆっくり呼吸をしながら、全方位の気配を探ると地面から気配を感じる、それも複数だ。
俺は気配のする地面から下がると、ちょうどその場所から腕が出てきて宙をつかむ。
「ふふ、鋭いですね。」
シャブランさんは、愉快そうに言う。
地面から出て来た腕は、そのまま這い上がるように全身を現した。
ゴツゴツした外見の岩でできた人形が4体。
ゴーレムか。
「さあ、行け!ゴーレム!。」
「おーっと!!なんとシャブラン選手!信じられない事にゴーレムを一気に4体出したーー!!なんと言う魔力だーー!!。」
「それだけではないようですよ、オルホールさん。どうも、4体のゴーレムは武器を持っているようです。それぞれ違う武器で連携して戦うようですよ。これは、凄いですね。」
「なんと言う事だー!シャブラン選手!!余裕の笑みなのも頷けるぞーー!!。」
ほほー、確かにゴーレムは武器を持っている。
一体はトゲトゲ鉄球の着いた鉄の棒、モーニングスターってやつか、2体目は両手持ちの大斧、3体目が両手に大剣、4体目が弓を持ってる。
ウーム、確かに4体が別々の武器を持ってるけど、あんま意味なくない?
飛んでくる矢を払い落し、向かってくるゴーレムに走り寄る。
先頭のゴーレムが振るうモーニングスターをしゃがんで避けて、かえる跳びでアッパーパンチをする。
大分手加減したのに、頭が砕けてしまう。
「何と言う怪力!!ケートモマン選手!まずは1体仕留めたようです!!。」
「いや、オルホールさん、頭を砕いてもゴーレムは止まりませんよ。それにしても、ケートモマン選手、最近話題の舶来品、その製造元となにか関係があるのでしょうか?。」
「いやー、謎が多いですね、このチームは。」
解説のスアモンさんが言うように、頭を砕いたぐらいじゃゴーレムは動きを止めない。
前世界の伝承では、額の文字をひとつ消し意味を変えることで機能を停止させたそうだが、これはそのタイプではないようだ、そうなるとコアの破壊かな。
どちらにしても、動きは速くないし、力もそれほどではないからまったく脅威ではない。
だが、キーケちゃんも言っていたように、余り余裕があるのを見せつけるような戦い方は、目立つばかりかこれで賭けをしている観衆の暴動を招きかねないので避けたい。
というわけで、俺も何とか勝ちを拾った感じにしたいと思う。
「くそー!なんて恐ろしい攻撃なんだーー!!。」
俺は叫んだ。
「ぎゃはははは!!あんまり笑わすなトモちゃん!!あイタっ!何をするおばば!。」
「何をするではない!さっきも散々説明したろう、シエンよ。トモを見習え。それから、これはおばばと呼んだ分な。」
「キャンキャン!。」
キーケちゃんに頭をひっぱたかれてひっくり返るシエンちゃん。
まったく、ホッとする光景だよ。
さて、気を取り直して続きをやりますか。
俺は、放たれる矢を避け、二本の大剣を振り回すゴーレムの懐に入る。
両手をゴーレムの胸に当てて、以前バンミドル成敗の時に使った技、あれは両手で挟んで振動させることで内部にダメージを与えるやり方だったが、この間、キーケちゃんがやったやつ、片側からの打撃で内側にダメージを与えるやつに挑戦してみようと思います。
ゴーレムに当てた手のひらを振動させながら、電撃魔法と純粋な気を送り込んでみる。
ファサーー。
上手くいったのかな?ゴーレムの胸元が粉状になって崩れ、奥に光る鉱石が露出すると硬質な音を立ててひびが入り砕けた。
俺は後ろから振るわれる大斧を派手に転がって避ける。
「ふふふ。やりますね。私も本気を出さなければいけないようですね。」
そう言ってズブズブと地面に入って行くシャブランさん。
うわっ、地中を移動できるのか。これは凄いねえ。
土魔法の応用なのかな。
俺は破壊したゴーレムが持っていた大剣一本を両手で持ち、頭を破壊したゴーレムを上段の構えで切り下ろした。
左右に二つになったゴーレムは胸のコアも破壊されて、崩れて消えた。
振り下ろした剣は地面にぶつかって折れてしまったので、今度は今倒したゴーレムの持っていた武器モーニングスターを手に取ろうとしたのだが、地面から気配がするので止めて、一拍置いてからその位置に蹴りを入れると、丁度シャブランさんが右手に持った剣で突いてくる所で、俺の蹴りは手首に当たり剣を弾き飛ばした。
地面から出て右手を押さえるシャブランさん。
痛みのせいでゴーレムを操ることが難しくなったのか、ゴーレムたちは途端にギクシャクした動きになる。
俺は弓持ちゴーレムにモーニングスターを思い切り投げつけた。
胸元に当たった弓持ちゴーレムはひっくり返って、手足をバタバタさせている。
動きが緩慢になった大斧持ちゴーレムから大斧を奪い取り、その大斧で横殴りにする。
ゴーレムの左脇から胸元まで斧は食い込み、ゴーレムはサラサラと崩れていく。
俺は未だ手を押さえているシャブランさんの前に行き、どうしますか?まだやりますか?と尋ねた。
シャブランさんは、両手を上げてクールに笑い首を降った。
ジタバタもがいていた弓持ちゴーレムは崩れ、近づいてきた審判に負けを宣言するシャブランさん。
審判は俺の勝ちを宣告した。
俺が片手を出すとシャブランさんは快く俺の手を取り立ち上がった。
シャブランさんは、笑顔で俺の手を上に掲げた。
「完敗だよ。君は強い。」
さすが爽やかイケメン!。
「いえ、紙一重でした。」
俺はシャブランさんにそう答え、握手をして歓声の中退場した。
うーん、いいねえ!こういう戦いがしたかったんだよね!
でも、退場するとき女性の声援はほぼシャブランさんに向けられたモノだったのは、地味に効いたけど。
本戦待合に戻ると、入れ違いでアルスちゃんが呼ばれるところだった。
「ギリヤドフォークロア選手の入場です!おーっと!!かなり小柄な選手ですねえ。」
「小柄と言うよりもお子さんではないでしょうか?。」
「しかし、このチーム、なかなか実力者ぞろいのようですから、油断はできません!。さあ、東の方角!悪鬼夜行から、はい?はい。えー、申し訳ありません、只今、悪鬼夜行サイドより選手入れ替えの申し出がありました。こちら、大会規約により認められておりますので、選手交代となります。改めまして、東の方角!悪鬼夜行よりガンギュウギン選手の入場です!因みにガンギュウギン選手は元は大将登録されておりました。」
「おおーーいっ!アルスぅーー!交代するか?してもいいぞ!大丈夫だぞ!。」
シエンちゃんが待合場所から闘技場へ身を乗り出して大声で叫んでいる。
「ダメですダメです!闘技場内へは選手以外の立ち入りは禁止です!。」
「ちぇー。大丈夫かー!!。」
引っ込みながら更にデカい声で叫ぶシエンちゃんと、間近でとんでもない大声出されて耳を押さえて目をぱちくりする審判さん。
「大丈夫ですよー!お任せください!。」
力こぶを作るようにギュッと拳を握るアルスちゃん。
可愛いったらないね。
東入場口から入ってきたガンギュウギン選手は、筋骨隆々の大男で今までの選手も身長は高かったが、それに比べても二回りは大きい。
そして持っている武器も大きかった、自分の身長程の長さの大剣で刃幅も広く、まるで鈍器のようだった。
審判がお決まりの説明をし試合開始となった。
開始早々、凄い速さでアルスちゃんの間合いに入り横殴りに大剣をふるうガンギュウギン。
アルスちゃんは土魔法で地面から岩を発生させ、それで大剣のショックを緩和させたように見せて、実際は剣と同じ速度で振りぬかれた方向へ飛んだ。
「おーっと!!ガンギュウギン選手の疾風の様な攻撃にギリヤドフォークロア選手良く反応しました!。」
「ええ、良い反応速度でしたね。ただガンギュウギン選手の猛攻を凌ぐにはちょっと魔法の威力が足りませんでした。」
「くふふ、アルスの奴めなかなか芝居上手じゃないか。」
「きっひっひ、シエンは芝居下手だからなあ。」
「我はどうも苦手だ。アルスはシシリー達と良くやっていたよなあ。」
「へー、何やってたのよ。」
「きひひ、ちょっとしたお芝居、まあ、ごっこ遊びじゃな。」
「へー、そうかー、そういう年相応な遊びもやってるんだね。安心したよ。」
「いや、子供の遊びにしては設定を煮詰めすぎだよ、シシリーは。戯曲家にでもなるつもりかと思うわ。」
「ほぉー、シシリーにそんな面があるとはねー。それ仕事にも生かせそうだなあ。」
「また、トモちゃんは直ぐに仕事に結びつけようとするなあ。」
「きひひひ、それが、案外トモだけではないのだぞ。サラがシシリーの作る話を気に入ってなあ、自分の作品作りに反映させたりしておってな、それの売れ行きが良いのにデンバー商会が目をつけてな、商品ありきで劇を作ろうと言う話が持ち上がっていた所だ。」
おおー!まるでメディアミックス的展開じゃないか。
「そいつは凄いねえー。」
「きひひ、まあ、今はアルスの試合を見てやろうじゃないか。」
「いっけね!そうだ!。」
試合場を見ると、ガンギュウギン選手が大剣を振り回しながらアルスちゃんを追いかけていた。
アルスちゃんは時折、大剣に氷の槍をぶつけてみたり、ガンギュウギン選手の胸元あたりに火の玉を投げつけてみたりと、応戦らしい事をしているようで場内はかなり盛り上がっていた。
見ているとアルスちゃんはガンギュウギン選手の大剣を避けながら、応戦している氷の槍や火の玉の数や威力を少しづつ増やしたり強くしたりしている。
「おーーっと!ギリヤドフォークロア選手!!徐々に、本当に少しずつですが、魔法の威力が上がっているように見えますが、スモアンさん!。」
「良く気づかれましたね。その通りです。これはギリヤドフォークロア選手、戦いの中で成長していますね。こうした事も闘技場で起きる奇跡の一つと言えるでしょう。我々ファンを惹きつけてやまない魅力の一つなんですねえ、オルホールさん。」
「さすがはアルスよな!そう思わせるための作戦だろ?あれは。」
「そうだろうね、いやあ、大したもんだよ。」
実際、会場はヤンヤヤンヤの大喝采で、ガンギュー!!ギリーー!!と両者を応援する声と足踏みの音が大きく響いている。
少しづつ数や威力を増やしていたアルスちゃんの魔法に、ガンギュウギン選手がだんだん対応できなくなってきて被弾し始めて来た。
「おーーっと!ガンギュウギン選手、魔法を食らい始めていますが、大丈夫でしょうか?。」
「お互い決め手がなく長丁場になってますから、疲れも見えてきていますね。両選手ここからが踏ん張りどころですね。」
展開に焦れたのかガンギュウギン選手が風魔法に乗せて大剣を投げつけ、同時にアルスちゃんに襲い掛かった。先に到達した大剣を水魔法の氷槍で撃墜し、ガンギュウギン選手の飛び込み右ストレートをボディーに受け両手を前に突き出し後方へ飛ぶアルスちゃん。
ストレートを放ったガンギュウギン選手は、そのままばったりと倒れてしまう。
「何が起こったのでしょうか?。」
「これは、ギリヤドフォークロア選手がガンギュウギン選手のパンチを腹部に受けた際に両手を前に突き出していましたよね。何らかの魔法によりガンギュウギン選手にダメージを与えたものと思われますね。」
「おーーっと!審判カウント、数え、数えました!ガンギュウギン選手立てず!!ギリヤドフォークロア選手の勝利です!!という事は?。」
「はい、優勝候補だった悪鬼夜行チーム初戦敗退、スーパールーキー、ウパタル探検隊が第二試合へと駒を進めたことになります。」
「両者の健闘をたたえて会場割れんばかりの大喝采です!!第一ブロック初戦全てが終了しましたが、いかがでしたかスモアンさん?。」
「はい、どれも素晴らしい試合でした。特に最後の試合ですが。」
実況解説が続く中、アルスちゃんが帰ってきた。
「お疲れ様ー!。」
「お粗末様でした。」
「いや、アルス!見事な芝居だったぞ!。」
「せめて試合と言っとくんなはれシエンはん。」
「ところでトモちゃん!次は我が先鋒で良いか?アルスのように上手にやるから!な?。」
「俺は別に構わないけど。」
「わても構いまへんで、そうだこの調子ならわて大将やらせてもらいまっか。次は休ませて貰いまひょかい。」
「そういうことなら、アルスかトモかどちらかも休むと良い。あたしが出よう。」
「でしたら、わたしが休ませて頂いてもよろしいですか?中々、演じるのって難しいですね。シシリー達は凄いです。」
という事で、次の試合は先鋒シエンちゃん、次鋒俺、中堅キーケちゃんでお送りいたします。
大丈夫かね、次の対戦相手の心配しちゃうよ。




