歓声って素敵やん
さて、マッチョ集団ファイティングパワーズとスピード有りパワー有りの鳥人集団ファイヤーバーズの試合は、一進一退を繰り返し大将戦にもつれ込んだ挙句の泥試合で、観客席からもしっかりしろい!しゃきっとせい!と温かい励ましのお言葉が飛び交い、もつれるようにして両者は倒れ、上になっていたファイティングパワーズの選手の勝ちと審判が判断し、結果、ファイティングパワーズの勝利となった。
次の団体戦も取り留めて見るべき山場もなく、まあ、泥仕合の連続で豚顔パワー集団のカスターオイルズと、蛇、トカゲ、カエル顔の爬虫類集団、冷血の決死隊の戦いはカスターオイルズの勝利で終わる。
第三試合、小柄な小鬼、コボルト集団ベイスメントガバリンズと黒衣の魔法使い集団マジックハイハッツの戦いは、三連勝でベイスメントガバリンズの勝利に終わった。
小柄でスピード重視のガバリンズは全ての魔法攻撃を難なく躱し、危なげのない堅実な勝利の拾い方で二回戦へと駒を進めた。
さてと、いよいよ我々の出番だな。
「それでは、皆さま、準備は完了しておりますか?よろしければ選手本戦待合席へいらっしゃって下さい。ご案内いたします。」
ウサちゃん娘のネザーさんの案内に従って本戦待合とやらへ俺たちは移動する。
西側入場口の後ろ、試合場内が見えるスペースに我々は案内された。
「では、本戦開始いたします、場内アナウンスに従って立ち合い下さいませ。ご武運を。」
俺たちは彼女の言葉に従い、試合開始を待ったのだった。
「それでは、第一ブロック一回戦最後の試合です。先鋒!西の方角!ウパタル探検隊からノズトク選手の入場です!。」
「チーム名がウパタル探検隊で先鋒の選手名がノズトクですか。ノズトクはウパタル探検隊の船長の名前でしたよね。船長が先鋒とはどういった作戦なのでしょうね。興味深いです。」
「さて!対するは東の方角!今回の優勝候補!悪鬼夜行よりローグス選手の入場です!」
「さあ、魔力、体力、防御力、全てが高い鬼族で構成されたチーム悪鬼夜行ですが、先鋒はローグス選手ですか。ラフファイトで知られていますが、今日の試合ではどうでしょうか?ノズトク選手が心配です。」
「両者、参加規約に則った試合をお願いします。では、開始!。」
審判の声で、ついに試合が開始した。サマ爺は渦を巻くような歓声にペコペコと頭を下げて答えている。
相手のローグス選手はシュッとしたマッチョで、ボサボサの固そうな金髪の隙間から真っ黒な角がひょこっと出ており、腰に沢山の巾着を吊るしていた。
歓声にこたえているサマ爺を見てニヤニヤしていたローグスは、腰の巾着から何かを取り出しサマ爺へ投げつけた。
ペコペコしていたサマ爺は、それを左手で受け取り即座にローグスに投げ返した。
投げ返された丸い玉のスピードは、投げられた時より格段に速く、しかも歓声に対してペコペコとお辞儀しているサマ爺の姿はどう見ても会場の雰囲気に飲まれたお爺さんにしか見えず、まさか投げ返されるとは思わなかったのだろう。
ニヤついている表情がひきつったまま、それでも反応してのけたのは流石は身体能力の高い鬼族、と言ったところなのだろうか。
身体をひねって避けようとはしたが、サマ爺のコントロールが良かったためよけきれず肩口に当たった丸い球は、はじけて中から何かがこぼれ、それを浴びたローグスの肩から煙があがる。
「チキショーーー!!。」
声を上げて肩をはたくローグス。
「おーっと!これは、どうした事でしょう!スモアンさん!。」
「ローグス選手が投げた玉ですが、強酸性の液体が入っていたようですね。ローグス選手の腰に付けた巾着には危険な武器が多く入っていますからね。」
「そうでしたか、スモアンさん!しかし、ローグス選手も、まさか自分が食らう羽目になるとは思わなかったでしょうね。」
場内がドッと笑いに包まれた。
肩をはたいていたローグスの顔から余裕の笑みは消え、憤怒の表情となっていた。
「クソがっ!調子に乗るなよっ!。」
腰の巾着から二つの玉を取り出し地面にたたきつけるローグス。
叩きつけられ割れた玉から、小さなハエみたいな虫が大量に出てきてサマ爺へ向かった。
「ぎひひゃあーーっ!屍食蜂の群れだ!さっきみたいに投げ返すわけにも行くまい!。」
ローグスがサマ爺を指さして叫ぶ。
「うわ!なにそれ?気持ち悪い名前!。」
「死肉を食べる蜂なんですが、興奮すると生き物を襲う事もあります。シッポの針に毒があるので注意が必要です。さあ、サマ爺はどうやって対抗するのでしょうか?気になるところです。」
解説癖がついてしまったアルスちゃん。
しかし、大丈夫かサマ爺!
「よっと、ほっと。」
サマ爺は腰のあたりをもぞもぞやって、引き抜いた何かの端を握り、手首のスナップを効かせ鞭のようにふった。
シパーーンといい音がして、サマ爺が笑顔になる。
「あれは、手ぬぐいですね。」
アルスちゃんが言う。
にやり、と以外に男臭い笑顔を浮かたサマ爺は、向かってくる屍食蜂の群れを華麗な手ぬぐい捌きで撃ち落としていった。
「次はどんな玉を使いまんのや?」
全ての蜂を叩き落としローグスを指さしビシッと決めるサマ爺。
場内が沸きに沸く。
「玉だけじゃねーぞっ!!。」
ローグスが絞り出すように叫び、巾着から出した分銅の着いた紐を振り回し始めた。
「おらっ!。」
遠心力で勢いの着いた分銅で横殴りに攻撃を加えるローグス。
「玉のが良かったんちゃいまっか?。」
サマ爺が手を添えるようにして分銅の着いた紐を切った。
「バカな!コーラルスパイダーの糸を寄ったものだぞ!。」
さっきから、叫んでばかりいるローグスちゃん。
「きっひっひっひ、サマ爺のやつ暗器使いだったようだの。」
「ええ、時折どこからかそれらしき物を出しては、磨いていましたよサマ爺は。」
「おおー!カッコイイじゃん!。」
「ふっざけんなー!!。」
そう言いながらローグスが凄い速度でサマ爺に向かってくる。
「ホイ!。」
ひょうきんな声を出したサマ爺は向かってくるローグスの首元にとりついた。
まるで、肩車されているように見えたのもつかの間、ローグスは崩れ落ちサマ爺は小さく飛んで着地した。
審判が駆け寄りカウントする。
サマ爺はこちらに向かって歩いてきている。
「どうでっか?かっこよかったでっか?。」
「サマ爺!まだ終わってないぞ!。」
「大丈夫!終わってまっせ!。」
カウントが終わり、勝者ノズトクと言う声が審判より声高に宣言される。
「な?大丈夫でしたやろ?。」
場内に巻き起こる歓声と怒号に、手を振って答えるサマ爺。
いやー、サマ爺、笑顔でこたえているけど半分くらいはブーイングでしたけど。
「うふふ、相手方に賭けていた人たちが怒ってますね。このまま勝ち進んで観客が暴動起こさなければいいのですけどね。うふふふ。」
アルスちゃんが笑いながら物騒なことを言う。
「そうだな、あんまり余裕を見せつけるような戦い方は考えモノだな。サマ爺にも言い含めておこう。」
キーケちゃんが言う通りだ。
次は俺の試合だけど気を付けよう。




