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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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受付の列って素敵やん

 俺たちはサマ爺に続いてエントリー会場へ行った。

 場所は、街の中心にある闘技場だった。

 闘技場では今晩も催し物があるようで、沢山の人たちが集まっていた。


「えーと、受付は確か西入口横だと言っとったんやが、あったあった!あそこやな!。」


 サマ爺が言う先には、大きな机とそれに並ぶ人々が列になっていた。

 そしてその横には明日開催団体戦!ドキドキメルヘン祭り受付会場、と書かれた看板が出ていた。

 看板には恐らく主催者のメルヘンベルの絵だろうか?デフォルメしているのかわからないが、可愛らしい狼少女が笑顔でファイティングポーズをとっている絵に吹き出しがあり、そこには、優勝団体には賞金と豪華晩餐会に招待しちゃうのだ!!とあった。

 トホホ。なんだかメルヘンベルと言うお方、珍妙な方のようで、余り関わってはいけない感じがしてきたよ。

 こういう予感は当たるんだよね。

 結構参加者がいるんだね、俺たちは列に並んで順番を待つ。

 やはりこうした大会に参加しようなんてのは腕自慢が多いのだろう、並んでいる方々はいづれもガタイの良い強そうな方々ばかりだ。

 そして、柄が悪い人が多いね。

 俺たちの後から並んできた人も、額に刀傷のあるジャガー顔の男で、さっきからこっちをニヤニヤしながら見ている。

 余計なちょっかいをかけてこなけりゃいいけど、なんて思っていると案の定、やっぱりこういう予感は当たるもんだ、いちゃもんをつけて来た。


「お前ら、何の列だかわかって並んでんのか?食い物の配給じゃねーぞ。女子供老人が来る場所じゃねー。」


「そうだよっ!邪魔なんだよっ!どけよっ!。」


「出ても怪我するだけだぞ!俺たちゃ親切で言ってやってんだぞ!なんなら、そこの姉ちゃんは面倒見てやってもいいけどな。」


「そうだな、ガキと年寄りは帰んなっ!。」


 まあ、好き放題言っちゃってるよ。


「おっ!トモちゃん!食後の運動してよいか?。」


 シエンちゃんが、また嬉しそうに言うけどシエンちゃんに任せると派手になるからな、今回は地味に済ませたい。


「いや、ここは余り派手にしたくないからさ、俺が穏便に済ますよ、穏便に。」


「なんだよー、トモちゃん、穏便とか言っちゃってー!ホントは暴れたいんだろ!もーっ!まあ、いいぞ!他ならぬトモちゃんだもんな!いいだろう、譲ってやろう!だけどな、トモちゃん!これは我からのアドバイスだがな。」


「なあに?。」


「殺しちゃダメだぞ。」


 まさか、シエンちゃんから言われるとは。俺は天を仰いで頭を押さえた。


「ほらな、やっぱりな!我が忠告しなければ殺しとるとこだったろ!どうだ!見たか!我は大人だからなあ、まったく自分の知性が恐ろしいよ!。」


「なにを勝手なこと言ってやがんだ!。」


「じゃかましいわ!。」


「バボッ。」


 あちゃー、言ってるそばからこれだよ。

 シエンちゃんの肩をつかんで凄んだ馬顔マッチョが、デコピンされて後ろ向けに倒れた。


「おほほほほ、本当に恐ろしい知性です事。おほほほほ。」


 アルスちゃんが笑ってるよ。


「まあまあ、皆さん、落ち着いて。ね?今のは、ほら、事故!事故ですよ!どうも、足を滑らしてしまったようですねえ!大丈夫ですか?ね?ほら、皆さん、明日の大会に出場するんですよね?だったら、ねえ?これ以上つまらない事故にあっても面白くないでしょ?よしましょうよ、ね?。」


「嘘だろ、岩石パキチが一発で。」


「マジかよ、アイツの頭を噛んだキラークロコダイルの牙がぼろぼろになったの見た事あんぞ。それが、デコピンで?。」


「事故って言ったよな、また事故にあうぞって言ったよな、ヤベーよ、これ、ヤベーよ。」


 残りの柄悪マッチョ達がざわつき始めた。

 あー、これ、もう一押しで平和的解決できるんじゃね?

 俺は、大海樹でアルスちゃんとシエンちゃんから教わった、害意を乗せた意識を軽く放ちながら声をかける。


「ほら、列も進んでますから、無益な争いは止めて、ね?。」


「ひーーっ!無益な殺生をさせるなだってえーー!。」


「息の根を止めてやるって言ったよな!ヤベー、ヤバすぎるぜ!ずらかろうぜ!。」


「ヤベー!ずらかるぞ!パキチに手を貸してやれ!早く!。」


「ひぃーー!。」


 ありゃあ、やりすぎたか。まだ、調整が難しいな。

 ゴロツキ風味の方々は振り向きもしないで去って行った。


「ぎゃははは!こりゃ傑作だ!気に当てられて狼狽しすぎだろ!どんだけ気弱なんだよ!あいつらの目にはトモちゃんがゴリゴリの悪鬼に映ってたろうな!いやーー!笑った笑った!。」


 シエンちゃんが大受けしてるよ。


「トモトモは気の使い方をもう少し練習した方が良いですね。先ほどの方々、なかなか場数を踏んでらしたようでしたからあれで済みましたけど、あの強さで当てては下手すると恐慌状態になりますよ。対象範囲の調整は良く出来てらっしゃったので良かったですけどねえ。お気を付けくださいねえ。」


「あちゃあ、気を付けます。」


「アルスの言う通りだぞ。その技は使い方次第でとんでもない事になるからな。人が多く集まる所でやったりした日には、人死にが出ることもある。レインザーでも以前に大勢の人々が集まった礼拝施設で、敵国の工作員が邪法を使いそこに集まった人々を恐慌状態に陥れたことがあった。」


「うわっ、どうなったの?。」


「施設の出口へ人々が殺到し、ぶつかり転がり踏まれして多くの死傷者が出た。それ以来、多くの人々が集まる場所には精神鎮静効果を持つ法具の設置が義務付けられた。」


 うわー、災害時のパニックによる被害と同じだなあ。


「本当に気を付けよう。人が沢山いる室内では上手く調整出来るようになるまで使わないでおこう。」


「きひひ、まあ、そうした方が無難だ。おぬしならば、それを使わずとも相手を無力化させる事はできようて。ま、しばらくは練習だな。」


「ウイッス!。」


「きひひ、良い返事だの。」


「アカン、もう、なんだか麻痺してきましたわー。」


「あら、サマ爺さんも中々でしたよ。さっきのトモトモの気に反応してらしたでしょう。こっちには向いていなかったのに、感じ取ってらっしゃいましたよねえ。」


「いやあ、アルスお嬢、臆病なだけでっさかいに。」


「きひひ、臆病なほうが長生きできるものよ。あたしもそうだ。」


「ぎゃははは!キーケちゃんが臆病とな!そんな訳あるか!キーケちゃんほど勇敢な者はおらんぞ!。」


「いや、シエンよ。臆病と勇敢は相容れぬものではない、臆病だからこそあらゆる事態に備え、慢心せぬ。それは、現実的な強さにもなるのよ。」


「ふむ、確かに思い当たる節はあるな。前にもちょいと話したが、昔、フライングアーミーフィッシュの群れにちょっかいをかけたことがあった。あれは、確かに慢心であった。何も備えず突っ込んだからな。小魚なんぞ吹き飛ばしてやるくらいに思っとったのだが、あれは、なんせ、よく飛ぶのなあ!おまけに歯がギザギザしておって、食いつかれるとなかなか剝がれないときてる。あれは、参った。もう、あれにはちょっかいかけぬと決めたもんよ。サマ爺も気を付けろよ。」


「誰があんなもんにちょっかいかけまんのやっ!!勘弁しておくんなはれだっちゃ!溶岩に手を突っ込むようなもんでっせ!!。」


「ああ!あれも熱いもんな!しばらくジンジンしたぞ!。」


「シエンさん、その辺にしてあげてくださいな。シエンさんの話を聞いて、後ろから来た方が何組か帰られましたよ。」


「なんだ、意気地のない!我の失敗談を聞いて怖気づくとは!。」


「きひひひ、シエンよ。お前の失敗談は普通ならば死ぬ度合の事よ。あまり、脅かしてやるな。」


「シエンちゃん、人前ではそういう話は程々にお願いしますよう。」


「うふふ、失敗談が武勇伝とはシエンさんらしいです。」


「そうか?いやあ、そんな褒められると照れるな。」


「なんか、一部、褒めてる感じとちゃいましたけども、まあ、よろしゅおます、さっさと受付済ませまひょ。」


 サマ爺に促され順番を待ち、受付となったのだが。


「チーム名ですか?。」


「はい。必須となってますのでお願いします。」


 受付のお姉さんに笑顔で言われるが、さてと、どうしたものか。


「どうしたものかねえ。」


「まあ、何でも良かろう。誰でもよいから適当に決めたらよい。」


 キーケちゃんが言う。


「はい!はい!はい!はい!我に名案あり!。」


 シエンちゃんが笑顔で手を挙げる。嫌な予感しかしないが、無視もできない。


「はい、シエンちゃん、どうぞ。」


「トモちゃんドラゴンズが良い!。」


「それはズルいですわ!でしたらトモトモノーライフキングスのが良いです!。」


 あちゃー、もうこれだよ。野球チームじゃないんだから。それに、ふたり共、正体をばらしてどうする。


「ふたり共、冷静になれ。あまり目立たぬ名前にせよ。仕事に障るわい。」


「すいません、つい。」


「我としたことが。」


「じゃあ、改めてサマ爺決めてよ。」


「え?わてでっか?えー?困りましたなー。フーム。ほな、こうしまひょ!ウパタル探検隊。これにしまひょ。」


「よろしいですか?では、それで受付させて頂きますね。」


 受付嬢がひきつった笑顔で言う。内心、早くしろって思ってたんだろうなあ。すまん!。


「それで、サマ爺、ウパタル探検隊ってなに?。」


「ありゃま!クルースはん、知りまへんのかいな?古代神話にあるエルミランド発見の英雄譚でっせ。」


「うふふ、有名な古代神話ですね。世界中を探検し、数多の困難を乗り越えて沢山の財宝と土地を発見した探検隊の名前ですね。男の子だったら一度は憧れる話ですね。」


「うひゃひゃひゃひゃ、わてもまだまだ男の子でっさかいになあ。」


「うひゃひゃひゃひゃだって!変な笑い声出しよってお爺!面白いヤツめが!。」


「またあ、せっかくの若者気分に水を差しはりますなあシエンはん。」


「さあ、明日に備えて休むとしようではないか。」


「ああ、そうでんな。ほな、手頃な宿をさがしまっか。」


 俺たちはサマ爺が探してくれた手頃な宿に泊まることにしたのだった。

 サマ爺が選んだ宿は、何だか前世界の温泉旅館みたいな佇まいでメチャメチャ落ち着くのであった。

 でかした!サマ爺!

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