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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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迷宮内の歓楽街って素敵やん

「しかし、この穴、あの魔物が住んどった訳でっしゃろ?もう、おらんやろねえ。」


「大丈夫だろ、ほれ、ここ。ここに普段は居たんだろう。」


 そう言って道行くシエンちゃんが指さしたのは、我々が今通っている大きなトンネルの脇にできた大きな空地だった。


「ええ、そうですね。この部屋も先ほどの天井のように大きなトビラで塞がれていたのでしょう。地面と天井部に重量物を擦った痕跡があります。」


 アルスちゃんが地面を指でなぞりながら言う。

 その空きスペースを過ぎるとトンネルの内径はどんどんと小さくなり、すぐにヒュドラサイズでは通ることのできない大きさになった。

 先ほどの部屋から解き放たれたヒュドラが街へ侵入しないために、単純だが効果的な安全策だな。

 俺が立って歩いて両手を上にあげるとギリギリ触れるか触れないか、位の内径でトンネルは落ち着く。

 トンネル内部も迷宮内と同様明かりは確保されているが、まさかとは思うがもしかしたら罠があるかも知れぬという事で、一応念のため光魔法で照度を上げて慎重に進む。

 そうして進んで行くと前方に明かりが見えてきた。


「ようやらやっと出口でんなあ。なごうおました。」


 安堵した声のサマ爺に続き、我々も外に出る。

 外に出ると空は見えず、大きな何かに覆われているようで周りに幾らかの照明は灯っているものの明らかに夜と言った風情だった。

 そして、我々が出た場所は本当に何の変哲もない街角だった。

 知らない人が見れば、我々が出て来た出口は街角にふいにある、下水道の入り口にしか見えないだろう。


「さてと、これからどうするかだが、なにか当てはあるのかサマ爺よ。」


 キーケちゃんが問う。


「いやあ、やっとわての出番でっせ。蛇の道は蛇言いよりますやろ?まあ、任せてんか。」


 そう言って飄々とした様子で歩き出すサマ爺。

 まるで仕事帰りのおっさんが一杯やろうって調子で街を歩いているようだ。

 サマ爺について歩くと、どうした嗅覚をしているのか繁華街のような飲食店街に出る。

 サマ爺はチラリチラリと横目で店を見ながら、時にふらっと店先に立ち中をのぞき、また次の店を探しと言った感じで、いかにも手慣れた様子だよ。


「ここにしまひょ。」


 虹のイラストの上にレインボーベルベットと書かれた看板、サマ爺が示したお店はどちらかと言うと飲み屋さん、それもおっさん上司が三次会で入る行きつけのスナックみたいな様相を呈していた。


「いらっしゃ~~~い。」


 野太い声に出迎えられる。


「ママーご新規5名様ぁーテーブル席ご案内ぃー。」


 あらやだ、かわいい!レッサーパンダ顔の女性にテーブル席まで案内される。


「どうぞ、お座りになってぇー。皆さんはエールでよろしいですか?。」


「いや、我とアルスは酒じゃない方がいいな。それより、なにか食わせてくれ。」


「はーい、ではお品書きがありますからどうぞー。」


「ふむ、我はリンゴ水にする。あとは、ここからここまでの食べ物全部な!。」


「わたしは、アイスティーをお願いします。」


「あたしらはエールで良い、サマ爺も良いだろ?。」


「へい、よござんす。あと、姉さん、手早く出来るつまみを適当に見繕っておくんなまし。」


「は、はい、ありがとうございますぅ。」


 よっぽどシエンちゃんが頼んだ食べ物の量が凄かったのか、レッサーパンダ顔お姉さんは一瞬返事に詰まっとったわいな。


 注文を取り奥へ行き飲み物が乗ったお盆を持って帰ってくるレッサーパンダのお姉さん。


「おまちどうさまぁー、はい、どうぞぉー。」


 皆に飲み物が行き渡ると、レサパンお姉さんが、それじゃあ、沢山頼んでくれたきれいなお姉さん、乾杯の音頭をとって下さいなぁとシエンちゃんに振った。


「いや、そんな堅苦しいのは面倒だ。誰か、変わってくれ!そうだ、この店に案内したのはサマ爺だ。お爺頼む!。」


「へ?わてでっか?まあ、シエンはんの指名じゃあ断るわけにも行きまへんな。ほな、ここにいる全ての皆さんのご多幸を祈りまして、カンパーイッ!。」


「カンパーイ!。」


 冷えたエールをゴクゴクと飲む。


「プハーッ!生き返るぜーっ!。」


「なんだ、乾杯の音頭とはそんなので良かったのか。なら我がやっても良かった。」


「何よシエンちゃん、じゃ、もう一回行く?。」


「いやいや、それはいい。ただ、我が知っとるのはもっとこう、恭しいと言うのか非常に堅苦しいものだったのでなあ。これなら簡単で良いな。」


 シエンちゃんも今まで色々あったようだからなあ、その力を利用しようと、もしくは庇護下に入ろうとそんな連中ばかりが集まって来たって話だからな、そうした場所ではそうだったのだろうなあ。


「そうでしょ?次はシエンちゃんにお願いするからね!。」


「おう!任しておけよ!。」


「おつまみお待ちどう様でーす。」


 うひゃ!今度は鼻筋が白いハクビシン顔の姉さんが、生野菜スティックやらクラッカーみたいな菓子やら、炒めた豆やらを大皿で持ってきた。

 各自それらをつまみながら飲み物を飲む。


「ご注文の品、お持ちいたしました。」


 サイ顔のいかついお兄さんが両手に大きなお盆を持ってやって来た。


「オウフッ、な、なんちゅう量頼んどりまんのやぁーっ!。」


 サマ爺が驚くのも無理はない、サイ男の後ろには同様のお盆を持っている男が4人続いている。


「何を驚いてる?こんな物は前菜だぞ。ほら!皆も食べろ!お姉ちゃんたちも食べろ食べろ!何か飲みたいなら頼め!パーッと行こう、パーッと!。」


「あらぁー、お奇麗なだけじゃなくて、太っ腹なお方っ!それじゃあ、遠慮なく御馳走になろうかしらぁ。」


「きゃー!ありがとうございますぅー。」


 ハクビシン顔の姉さんは嬌声を上げて、サマ爺さんにしなだれかかってる。

 その後はもう、シエンちゃんが平らげる端から食べ物が届き、飲みもしないカラフルなお酒がテーブルを賑わして、昭和のスターか?ってぐらいの注文っぷりに俺は見ていて気持ちよくなってきた。

 いやー、シエンのアニキと呼ばせてつかぁさい!

 エンシーのキニアーがイーガーキーセイのチャンネーのセーミーで、イーダーユーゴーっすわ!

 そんなこんなで場が盛り上がってきた頃。


「ちょっと、失礼しまっせ。」


 そう一言告げてサマ爺さんが席を立ち、カウンターの方へとひょこひょこ歩いて行った。

 目で追うとサマ爺さんはカウンターの向こうにいる、トラ顔の大柄な女性と話をしている所だった。

 この店に入った時に、真っ先に野太い声をかけてきた女性だ。

 お店の娘達の話からしてどうやらママさんらしい。

 テーブル席の俺たちは変わったそぶりも見せず、食べて飲んで談笑を続ける。

 大量にあった食べ物をシエンちゃんが粗方かたずけた頃、サマ爺がカウンターからひょこひょこと帰ってきた。


「いやー、楽しいお店でしたわ、ほな、そろそろお暇しまひょかいな。」


「おう、丁度良かった、食べ物もなくなったしな。行くか。」


 シエンちゃんが同意する。

 我々も勿論異論はないので、会計を済ませ店を出る。

 店を出てからしばらく無言で歩くサマ爺の後を、我々も無言で続く。


「この辺でいいでっしゃろ。」


 人気のない路地裏まで来てサマ爺が言う。


「ほな、お仕事のご報告といきまひょ。」


 サマ爺がさっきのお店で聞いた情報、それは、一昨日にメルヘンベルの元に来た客人の事だった。

 案内人付きでこの街に訪れるものは少なくない。むしろ案内人抜きで来るものなどいないのだが、まあ、商人や旅人、侠客、武闘家、色んな者が色んな目的でこの街に訪れるのだが、一昨日の客人はメルヘンベルの側近が案内人であり滞在場所もメルヘンベル邸、つまりこの街の最高権力者のお屋敷だってんで軽く話題になったらしいのだ。

 勿論、その話題の客人とは特徴から言ってもキズメに他ならないのだが、少し面倒なのはメルヘンベルの懐に入りすぎていることだった。

 下手に話を拗らせれば、この街全てを敵に回すことになってしまう。

 できればそんな事は避けたい。

 そこで、サマ爺が仕入れて来た有益な情報というのが、明日この街の中心にある闘技場で開かれる闘技大会だ。

 それの優勝者は賞金とメルヘンベル主催の晩餐会に出席する権利が与えられるのだと言う。

 闘技大会はカテゴリー別に行われており、明日から行われるのは団体戦だと言う。

 団体戦は先鋒、次鋒、中堅、副将、大将の5人制だとの事で、エントリー場所も聞いてきたのでこれから行ってエントリーしまひょ、と言うのだ。

 シエンちゃんは喜んだが、アルスちゃんは5人という事はサマ爺も出ることになりますが、大丈夫ですか?と心配した。

 サマ爺は3勝すれば勝ち進めるので、大怪我する前に降参するから大丈夫だと言う。

 本当に気を付けて下さいね、皆さんもお怪我されぬよう気をつけてくださいね、と言うアルスちゃんに俺とキーケちゃんは、対戦相手の心配をした方が良いのではないかと言い合ったのだった。

 しかし、ここは迷宮街。

 どうも、山の中丸ごと迷宮と街になっているようで、言わば地下。強引だが地下。

 という事で、地下闘技場での団体戦と相成りました。

 まったく俺たちはナニップラーだよ。

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