ゴール目指して進むのって素敵やん
スカベンジクラブの罠をかいくぐり、我々一行は更に中心部へと歩みを進める。
この後もお馴染みの天井が降りてくる部屋、水が流れ込んでくる部屋などに遭遇するも、どちらもシエンちゃんが単純な腕力で解決してしまった。
降りてくる天井は飛んで押し戻してしまうし、水は床をパンチして穴をあけ流してしまった。
そうして、歩みを進めていると、またまた小
部屋に出て出入口が封鎖される。
また何かの罠に違いない、という事で俺たちは部屋の中を慎重に見渡すと隅の方にロッカーのような物が立てかけてある。
「棺だのう。」
「くふふ、どんな魔物が出てくるのか楽しみだぞ。」
キーケちゃんとシエンちゃんがそう言う。
「もし?もし?誰か、おられるのですか?閉じ込められ困っていたところです、どうか、お助け下さい。」
長方形の箱、キーケちゃんが言うには棺の中から声がする。
「怪しいなあ、幾ら何でも不自然すぎぬか?。」
「わたしもシエンさんと同意見ですわ。どういう経緯があれば、あんな物に閉じ込められる事になるのか、興味があります。」
「きひひひ、手厳しいのうアルスは。まあ、話だけでも聞いてやろうではないか、いずれにしてもあの棺の中身はこの部屋を脱出するための条件になっておるだろうからな。」
「うふふ、では事情聴取と参りましょうか。」
ニコニコしながらアルスちゃんは棺に近づいた。
「こんにちは、わたしはアルスと申します。お名前お聞きしてもよろしいですか?。」
「え?名前?そんな事より早くここから出してください。中は暗くて息苦しくて怖いんです。」
か細い女性の声で棺の中から懇願され、俺なんかはちょっと心配になてしまうがアルスちゃんは落ち着いたもんだ。
「あら、そうですかー。わたしたちもここに来るまで沢山の罠に遭遇しましてね、用心深くなってしまっているのです。どうぞ、ご容赦ください。それで、お聞きしたいのですが、一体全体どうしてそんな所に閉じ込められる事になったのですか?。」
「それは、話すと長くなるのです。」
「ええ、構いませんよ。お聞かせ下さい。」
「本当に長くなるのですが。」
「はい、ゆっくり腰を据えて伺いますから、安心して下さい。」
「えーっと、この部屋に入ってきた時にですね、この箱が蓋の空いた状態で置いてありまして。それでですね。」
「つい、中に入ってしまった、と?。」
「ええ、はい、そうなんですよーー!。」
「ぎゃはははははー!そんな訳あるかっ!もうちょっと頭を使え!考えろ!お前、そんなんじゃ誰も相手にしてくれないぞ!。」
「こらこらシエンさん、言い過ぎですよ。確かに、余りにも稚拙でがっかりしましたけれど。出来ればもう少し気の利いた、少しでもこちらの気持ちが、助けてあげたいなと傾くような理由を聞きたかったですけどね。」
「ふざけんなーーっ!!!。」
棺の中から大きな声がして、トビラを開けようとする音がする。
「あれ?え?噓?開かない?なんで?ちょっと!嘘でしょ!。」
「ぎゃはははっ!いやー、面白い!やっぱり、そいつはポンコツだ!アルスが棺を開かぬように細工した事にも気づいてないぞ!笑かしよるなー!な?サマ爺?。」
「へえ、ホンマでんなー。しかし、アルスはんの魔法は見事でんなー。」
「うふふ、ありがとうございます。あれはトモトモの釘投げを参考にさせてもらったんですよ。」
アルスちゃんがやったのは、簡単に言えば棺の蓋の釘打ちだった。
話ながら棺の蓋の外周に沿って、大量の小さな釘状の鉱物を土魔法で発生させ、それを音もなくめり込ませていったのだった。
「さてと、では通らせて頂きましょうかね。トビラを開けて頂いてよろしいですか?。」
アルスちゃんが優雅に言うと同時に棺が石化し崩れ落ちる。
「トビラが開く条件は、お前ら全員が石化することだよ!。」
崩れ落ちた棺の中から、髪の毛と下半身が蛇の女性が現れ叫んだ。
「石となれっ!。」
蛇女性が叫ぶのと同時に、蛇女性の頭がくすんだ色の箱に覆われた。
「なに?真っ暗闇?あれ?頭が重いわ。なにこれ?ちょっとーー。」
蛇の女性は頭を覆った箱に手をやった。
「噓でしょ?石の箱?。」
「正解でーす。」
アルスちゃんが可愛らしい声で答えた。
「いやーん。」
蛇女性改め、石箱頭の女性はへなへなとその場に崩れ落ちた。
「石を石化は出来ぬか。もちっと精進せい。」
「さて、トビラを開けて下さいますか?。」
「ふいーん。グスグス。開けたら頭の箱、取ってくれますかー?。」
「取ってやるけど石化睨みをやったら目を潰すぞ。」
「ふいーーん。もう、やりませんからー。ごめんなさい。グス。」
シエンちゃんに言われて謝る箱女性。
「でしたら、今、取って差し上げますわ。はい。」
アルスちゃんはそう言って石の箱を消してやった。
「ありがとうございます。本当にありがとうございます。私も雇われてお仕事としてやってまして、本当にすいませんでしたっ。」
「わかった。もう良いからトビラを開けてくれぬか。」
「はい、今すぐに開けます。」
蛇女性は足元から崩れた棺の破片をどけて、地面に息をフーフーかけ土埃を飛ばすと、床板をはがしてスイッチ的なものを押した。
重い音を立てて開くトビラ。
「それでは、外に出るとしましょう。」
俺たちは、平謝りする蛇女性に、まあまあ、とか、次は頑張れよ、とか声をかけて部屋を出るのだった。
「しかし、石は石化出来ないってのは面白かった。」
「うふふ、中にはやってのける者もいますけどね。正確には脆い石に変質させるのですが。」
「そもそも、あやつは石化睨みに頼りすぎだ。もっと他を鍛えぬと使い物にならん。」
「他と言うと、どんな所でっかキーケはん?。」
「まずは単純に腕力だ。それがあれば、棺でも石箱でも破壊できたはずだ。だが、それ以前にあやつが鍛えねばならぬは頭よ。」
「頭でっか?。」
「そうよ。頭は最大の武器になる。石化睨みはそれを使う環境や間によってはかなり強い技だ。それを、まったく生かし切れておらなんだ。囚われを演じてからの不意打ちという案は良い。だが、なぜそうなったか説明を求めた後の言い訳がひどすぎる。不自然な状況を逆手にとる位の芸当をして見せないとな。雇われて仕事でやったと言っとたな。まあ、幾らも貰っておらんのだろう。」
「あちゃー、手厳しゅうおまんな。しっかし、雇われ額の低さまでわかりまっか。」
「ああ、わかるな。あやつ、直ぐに諦めおったろう。少額では仕事に粘りも出ぬよ。そして、雇われ者だとあっさり話したろう。少額ではそこまで義理立てもせぬよ。」
「なるほどなあ。確かにそれはありまっせ。」
「まあ、向こうさんも罠をあつらえるのに金もかかろうからな。すべての罠に金をかけるわけにもいかぬだろうよ。あまり景気の良い街でもないだろうからのう。」
「そうでっせ、迷宮街の運営資金は迷宮にあった古代の遺物の切り売り、訳アリ金持ちの避難所代金位のもので、特に景気の良い街じゃあないでっからなあ。唯一にして最大の売りが安全という事でっけど、出入りが不自由というのが、いかんせん、街が繫栄しない理由でんな。」
「ふーん、うまく使えば金になりそうな気もするけどねえ。」
「きひひ、メルヘンベルに会う機会があったら話してみたら良いぞ。」
「いやあ、会う事もないでしょ。」
「わからんぞう。」
意味ありげに笑うキーケちゃん。
妙なフラグを立てないで欲しい。
そんなこんなで、罠をかいくぐりかいくぐりして、ようやく迷宮の中心地らしいひと際大きな部屋に我々は到着したのだった。




