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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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話し合って見えてくるって素敵やん

 「おふたりは幼児人身売買組織と難民問題を紐づけて公式に批難されるおつもりですか?」


 アルスちゃんにそう言われたアルロット会長とコバーン体育部長は、お互い顔を見合わせ頷いた。


「その通りです。難民問題はバッグゼッド一国の問題ではないですが、国内における人身売買被害は国内で処理できる

 問題です」


 アルロット会長が言う。


「手が届かない理想論より身近に感じる理想論の方が、多くの人に現実的な問題として捉えて貰えるでしょ?多くの人

 が問題意識を持てば世の中は確実に変化するわ」


 コバーン体育部長が言う。確かにそれはそうだ、多くの人は世界平和のためにと言われるよりも家族のためと言われた

 方が強い動機付けになるだろう。

 しかし、それは。


「危険が伴う事は承知しています」


 俺の思いを察したかアルロット会長が言う。


「それでも、これは私達の責務であると思っています。わが命と引き換えにしてでもなすべき事だと」


 アルロット会長は毅然とした態度で言った。

 この人は聡明で意志の強い人だ。

 俺は内心頭が下がる思いだった。


「そんな覚悟はもういらないかもだけどね。マディーとブリーニェルが言ってたわ、いい勝負を演出されてたって。格が

 違ったってね」


 コバーン体育部長がアルスちゃんとケイトを見て言った。


「それに皆さんは私達の話を聞いても安易な同情は口にしなかった。私とブリトニーの思いと尊厳を無遠慮に踏みつけ

 るような事はせず対等な人として扱ってくれた。その事に感謝と信頼を表します」


 アルロット会長はそう言って頭を下げ、コバーン体育部長も続いた。


「ひとつお聞きしたいのですが、おふたりの事情や計画について他の生徒会メンバーはどうお考えで?」


 ケイトが尋ねる。


「私たちの事情については勿論、皆、知っています。計画については一部は知っている程度です」


「私達が幼児人身売買問題に強い関心を持ち、それを無くしたいと考えている事は知られているけど、その理由までは

 知らない、って感じね。世間ではあの事件に幼児人身売買が絡んでいるなんて、思われていないもの」


 アルロット会長に続いてコバーン体育部長が言う。


「慰問の場でアルロット会長が幼児人身売買問題を語れば、当然、その事件も関連があったのではないかと思われるでしょう。それをもう一歩後押しするものがあれば、更に影響は大きくなると思うんです。でも、それにはこの事をある人物に話さなければならない」


 俺はアルロット会長たちを見る。


「ストーム君ですね。彼がルーマーディーラーだという事は知っています。私達も彼の力を利用しようと思った事はあ

 りました。しかし、彼に危険が及ぶかも知れないと思い断念したのです」


「ではそこの問題さえクリアできれば話しても良いのですね?」


「ええ。構いません」


 アルロット会長が短く答えた。


「では事情を話してストームも仲間に引き入れます」


「どんな噂を流して貰うつもりなのかしら?」


 コバーン体育部長が興味深そうに俺を見る。


「おふたりの事を具体的に示すようなものは避けるつもりです。あくまで薄っすらとした、多くの人がさもありなんと

 思うタイプのものを考えてます。まあ、その辺りの事はプロが上手くやるでしょう」


「くれぐれも彼に危険が及ばぬようにお願いします」


「はい、気を付けますよ。でもね会長」


「なんですか?」


「あいつもああ見えてなかなか機転の利くタフな男なんですよ」


 俺は笑って言った。


「そうですか」


 アルロット会長も笑って答えた。


「ジャーグルタウンであれだけの捕り物が行われたのですから、学園都市でまた騒ぎを起こすのは敵も避けたい所でし

 ょう。極端な行動に出なければ今すぐ危険に巻き込まれるという心配はないと思います。勿論、警戒するに越したことは

 無いですけどね」


「問題は慰問へ向かう道中ということですか」


 ケイトの言葉にアルロット会長が真剣な表情で答える。


「どこに居ても警戒するに越したことは無い。それだけは言えます」


 ケイトがもう一度確認するようにゆっくりと言った。

 う~ん、もうなんかケイトはデキル系いい女って事で俺も脳にインプットされてきてるぞ。


「頼りにしています」


 アルロット会長が言い、コバーン体育部長も艶っぽいまなざしでケイトを見る。

 どうやらインプットされてるのは俺だけじゃないらしい。


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