なにしろ悪あがきって素敵やん
「会計のオライリーさんはいないのですか?」
とりあえず時間稼ぎしてみようかな、俺は質問をして見た。
「時間稼ぎですか?それは打つ手なしと言う事でしょうか?つまらないですね、もっと何か隠しているのではありませんか?すべて見せて下さい。私を楽しませて下さい」
アルロット会長までの距離はおおよそ10メートル程、フラッグは彼女の後ろにある。
ゲイルダッシュで特攻してフラッグを変えるまで体力が続くか?いや、多分、無理だ。
ヴォーン生活部長の速射矢、コバーン体育部長のデカイ方のブーメラン、フィン書記の槍、これらすべてを避けるのは無理だ。幾らかは喰らってしまう。
体力ゲージの残量から言って、リスポーン前に拠点制圧するのはキツイか。
もしできたとしても、俺がリスポーンエリアに戻されるんじゃすぐに拠点を取り返されちまう。
ここが最後の拠点だってんなら、無理に突っ込むのもありっちゃありなんだが、現状でそれをやるのは意味がない。
位置関係としては正面に生徒会長、少し手前の右にフィン書記、左にコバーン体育部長、俺に一番近いのがヴォーン生活部長だな。
ひとまず、ヴォーン生活部長を取るか。
まあリスポーンエリアがここなんだから、ちょっとの時間稼ぎにしかならないけどな。
「何も手がないならお帰り下さい」
アルロット会長は残念そうにそう言って手を上げる。
俺はアルロット会長を見たままヴォーン生活部長に向かって鉄鋼散弾を放ち、近くにあるテーブルを倒して盾にする。
ヴォーン生活部長は鉄鋼散弾を喰らって吹っ飛ぶ。
テーブルに槍が連続して刺さり、大きなブーメランがぶち当たる。
俺はテーブルを押さえて衝撃に耐えながら、弓無しクロスボウを上に構えボーリング玉大の鉄球を天井に撃ち込んで行く。
「無茶するわねえ」
コバーン体育部長の楽しそうな声が聞える。
天井はボロボロになり、粉砕された石が降り注ぐ。
「拠点ごと破壊する気か!」
ヴォーン生活部長は叫びながらこちらに向かって矢を連射しながら突っ込んでくる。
こちらを指差すように出した右手首には短い弓矢が巻き付いている。そして、その巻き付いた矢はまるでガトリングガンのように連射される。
テーブルはハリネズミのようになり、もう幾らも持ちそうにない。
俺はテーブルを蹴飛ばし横に飛ぶ。
ヴォーン生活部長は飛んできたテーブルをもろに受け、残りのゲージを消費、リスポーンされる。
俺は槍とブーメランを鉄鋼散弾で迎撃しながら次のテーブルまで逃げ、さっきと同じように盾にする。
「悪あがきにしては派手です事」
アルロット会長の声がして、頭上に白い布が舞う。
あれはアルロット会長の術式だったか。
俺は頭上から舞い落ちる布に水魔法のウォーターカッターを連射する。
布はズタズタに切り裂かれる。
更にウォーターレーザーを天井に向けて発射する。
天井の照明器具などが音を立てて落ちてくる。
更に風魔法の小竜巻を複数発生させ、フィン書記とコバーン体育部長に向かって放つ。
「いや~ん」
コバーン体育部長は髪を押さえて逃げ回り、フィン書記は自分が放った槍が小竜巻に巻き込まれて弾き飛ばされるのを避け、小竜巻から距離を取る。
「滅茶苦茶じゃないか!」
会長の後ろにリスポーンしたヴォーン生活部長が叫び、こちらに向かってくる。
くそう、力押しじゃ限界があるか。
オライリー会計の状態がわかれば突っ込むのだが。
恐らくヴォーン生活部長はクランケルにリスポーンされてここに居る。オライリー会計がここに居ないって事は拠点がひとつ残っているって事になる。
「もう少し悪あがきに付き合って貰いますよ」
俺はそう言って帯電させたウォーターボールをヴォーン生活部長に向かって放つ。
ヴォーン生活部長はウォーターボールを迎撃し帯電した水を浴び硬直する。
お?効果あるのか?
だったらリスポーンさせないで痺れさせればいいか。
と思っていたら、ヴォーン生活部長の体力ゲージがどんどん削られまたもやリスポーンされる。
そう上手くはいかないってか。
放った小竜巻はそういつまでも威力を維持はできない。
すでにフィン書記もコバーン体育部長も半分は打ち消している。
俺はアルロット会長に向かって小竜巻を放つ。
アルロット会長は大量のイバラを出して壁を作る。
小竜巻はイバラを巻き取り四散させるが、アルロット会長は次々とイバラを発生させる。
こんな事をしていたらいたずらに時間ばかりが過ぎていく。
制限時間が過ぎて旗の数が多ければこちらの勝利なのだが、護衛のための力試しとしては些か心許ない。
ここは、完全勝利と行きたい所。
今、俺がリスポーンされると、ここにいるメンツが自由になってしまう。
そうするとちょっと面倒だ。
「まだまだあーー!!ぐべっ!」
元気良くリスポーンされたヴォーン生活部長の顔にイスがクリーンヒットする。
「もうちょっとスマートにいきませんかね?」
イスを投げたのはクランケルだった。おまけにオライリー会計が隣りにいるよ。
「いやー、面目ない」
オライリー会計が頭を掻いている。
どんな手段を使ってリスポーンさせなかったのか気になるが、クランケルが来たのなら拠点制圧に走ろう。
俺はアルロット会長の元にダッシュし、イバラの盾に突っ込んだ。
身体中に棘が刺さり体力が削られる。
それでも強引に進み、アルロット会長の横を通り過ぎ後ろにあるフラッグを差し替える。
直後に体力ゲージが無くなり俺は本拠点にリスポーンされたのだった。




