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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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単身で乗りこむって素敵やん

 俺は地図を確認し三つ目の拠点に行ったのだが。


「まあ、こうなるよなあ」


 その拠点は、上空にブーメランの群れが周回し入り口付近には蛇もどきが顔を出しと警戒レベルマックスであった。

 本拠点がリスポーンエリアになってりゃ、攻めが早いといずれこうなるよな。

 という事で、ここが本拠点と見てまず間違いない。

 俺は砂に紛れてゆっくりと遺跡を一周する。

 遺跡の壁は一面ツタの覆われ、真っ赤なバラの花があちらこちらに咲いている。

 自拠点も含めて他の拠点には見られることの無かった特徴だから、これも誰かの術式かも知れない。

 俺は弓無しクロスボウを構え土魔法で小石を発射。

 小石がバラの花に当たると周囲のツタから弾けるようにトゲが飛んだ。

 しばらく身をひそめるが誰かが出てくる気配はない。

 センサー式の攻撃システムのようだ。

 こりゃ近寄らない方がいいな。

 遺跡の裏側にまわったが窓も入り口もない。

 更に回り込むと側面に階段があった。

 遺跡の屋上に行けそうだ。

 しかし、いばらガードもブーメランも蛇もどきもいないのは明らかに誘ってるね。

 面白いじゃないの。

 俺はあえて階段を進む。

 身を屈めゆっくり慎重に進み屋上の様子をそっと目視する。

 屋上には小さな小屋があり、トビラ付近をブーメランが警戒している。

 そして小屋に向かってロープが幾つも張られ大量の白い布が干してあるのだが、妙な事にそいつが風もないのにゆらゆらと揺れている。

 こいつも誰かの術式か?

 俺はとりあえずゆっくりと、揺れる布に触れないように身を屈めて移動する。

 見ているとブーメランも白い布には近づかないようだ。

 俺は風魔法で小さな竜巻を作りブーメランに近付ける。

 ブーメランは反応し竜巻を追う。

 俺はそのまま竜巻を白い布に突っ込ませる。

 すると、白い布は竜巻もブーメランもすべて包み込んでしまう。

 内部で暴れる竜巻によって布は多少動いているが、どんどんと包み込まれて竜巻は霧散しブーメランは砕けたようだ。

 この布、かなりハイパワーの圧縮機みたいだ。

 俺は揺れる布をよく見る。

 蛇もどきがそうだったように、何か規則性があるはずだ。

 近くで見てみると、どの布も小さく五回揺れた後、大きく二回揺れる。それを三セット繰り返した後に三秒ほど止まるのが分かった。

 俺は布の動きが止まるのを見計らい進んで行く。

 まったく、何かの謎解きアクションゲームじゃないんだから。

 布の間を通り抜け、入り口にたむろするブーメランを竜巻で追い払い、小屋の中へと侵入する。

 小屋の中は何も置かれておらず、下に向かう階段があるのみだった。

 俺は弓無しクロスボウを構えてゆっくりと階段を下り、そっと通路の様子を見る。

 鋭い気配に急いで顔をひっこめると短い矢が幾つもその空間を通り過ぎる。


「遅かったじゃないかクルース君」


「お待たせしました、お待たせしすぎたかもしれません!」


 俺は弓無しクロスボウで鉄鋼弾を撃ちながら言う。


「なかなか威力があるな。だが連射速度はどうかな?」


 壁に身を隠しながら言うのはヴォーン生活部長だった。

 そして直後にマシンガンのような勢いで連射される矢。

 おいおい、左手義手だったりするのか?


「そこまでの連射は効かないですけど」


 矢が途切れる。


「こんなのはどうで?」


 俺は鉄鋼散弾を撃ちながら通路に出る。

 通路奥にはヴォーン生活部長がいる、俺は通路の壁に体当たりをする。

 通路の石壁は崩れ、俺は壁の向こうに転がり込む。体力ゲージが二割ほど削れる。


「なんて事をするんだ君は」


 ヴォーン生活部長の声が聞える。


「一度やってみたかったんですよ」


 俺はヴォーン生活部長に叫びながら部屋のトビラを抜ける。

 部屋の外の床は一面いばらで覆いつくされており、俺は即座に飛んで壁に張り付くも軽く接触した場所周辺のトゲが飛び散り右腕に大量に刺さった。

 体力ゲージが更に二割ほど削られる。

 俺は壁を走り通路を進む。

 ここは遺跡の二階部のようで下へ向かう階段を発見。

 俺は階段を走り降りる。

 階段の下はT字に分かれており、どちらに向かうか少し悩む。

 と、逡巡してる間に左手通路の扉が開いて槍を手にしたフィン書記が出てくるので速攻で右に進む。

 背後から飛んで来る槍を避け目に入ったトビラに入るとそこは大広間だった。

 高い天井はぶち抜きになっているようだ。

 二階が狭かったのはそのせいか。


「ようこそ、いらっしゃいました。そして、ごきげんようさようなら」


 広間の奥、一段上がった場所にある王座のようなイスに座ったアルロット会長が優雅に言った。

 その瞬間、高い天井から網のように広がったイバラが落ちてくる。


「お別れするにはまだ早いですよ」


 俺は弓無しクロスボウを天井に向け、空気弾を連発する。

 天井から落ちてくるイバラもトゲも圧縮した空気の破裂に押しのけられて散らばり落ちる。


「さすがに護衛を申し出るだけの事はありますね。でも悲しいかな、別れは必ず訪れる」


 アルロット会長がそう言うと、広間にあるトビラが三か所開いてヴォーン生活部長、フィン書記、コバーン体育部長が姿を現す。

 敵の本拠地に乗り込み、ラスボスの前で敵に囲まれる。

 うーん、期せずして定番展開になってくれたな。

 さあて、どうしたものか。


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