やっぱり野営って素敵やん
「しかし、今更だけどこんな入口の近くで野営してて、大丈夫なの?何とかベルさん出てこない?。」
俺は焼いた肉を食べながら、本当に今更な質問をした。
「大丈夫でんがな。前にも説明したように、生活しとるんは迷宮を抜けた先にある市街でっさかいにな、あの入口の先、迷宮内に暮らしとるのは罠の一部として放たれている魔物や入り込んだ野生生物くらいのもんでっせ。そいつらも、あの入口から出てくることはまずありまへん。」
「なんで出てこないの?生きては出られぬ黒死門だから?。」
「にょほほほほ、覚えてなさったか、でもそれは中が罠だらけやさかいに付いた通称やがな。別にあの門に特別な術が掛けてあるようなことはありまへんで。」
「ほな、なんでやねん?。」
「また、クルースはんは。まあ、ええでっけどな。種は単純ですわ。あの門の前、岩山に囲まれたちょっとした広場になってまっしゃろ、あの地面の下にぬしがおりまんねん。」
「ぬしって?。」
「サンドワームの亜種でんな、それも通常の奴よりデカいだけちゃうんですわ。毒の霧を出しまんのや。」
「うわっ!どうやって通り抜けるの?。」
「そりゃトモちゃん!やっつけるしかなかろう!。」
「いやいや、シエンはん、それはあかんのですわ。ぬしには死ぬとわかるように術が掛けられてまんのや。メルヘンベルの仲間がすっ飛んできまっせ。」
「ほな、どーすんねん!。」
「また、シエンはんまでわてのマネしなはる。まあ、よろしゅおま。あれは、地面を歩く音に反応しまっさかいに、音を立てずに飛んで行きまっせ。」
「なるほどねーーーっ。そうしましょったらそうしましょ!。」
「どうにも、真剣みに欠けまんなあ。まあ、よろしゅおますわな。」
「しかし、ぬしがこっちに来ることはないの?寝てる最中にパックリやられたんじゃかなわないよ。」
「それは、安心してつかあさい。サンドワームが自在に移動できる砂地はあの広場に限られとりまんのや。あの砂地もぬしもメルヘンベル達がわざわざこしらえた罠言う訳ですわ。」
「ひゃー、罠好きベルちゃんおっかねー!迷宮抜けて市街に入ったとして、大丈夫なのかね。街中が敵になって戦闘になりゃしない?。」
「それは、大丈夫でっせ。迷宮が検問所みたいなもんでっさかい、街にいるって事は検問を通過したって事で、自動的に身分証明になりまっさかいにな。」
「随分と迷宮と罠を信頼しておるようだのう。」
「それだけの事はありまっさかいな。案内なしで出入りした話は聞いた事あらしまへん。クルースはん、どうなさる気だんねん。なにか策はありまんのかいな?。」
「うーん、策はねー、ないんですよねー。気を付けて進みましょうって感じ?。」
「何とかなるだろ!こっちは隠密衆もいるんだ!。」
「そんな、クルースはん、シエンはん、勘弁しておくんなましやがなっ!!わてを当てにされても困りますがなでっしゃろかいな!!。」
サマ爺さん、慌てて言葉遣いが更に無茶苦茶になっとる。
「きひひひ、冗談だよサマ爺、そう慌てるな。こっちゃぁこう見えても人生経験積んどるもんばかりよ。あたしらみんな、見た目通りの年齢じゃあないぞ。勿論、おぬしの経験を生かしてもらう事もあろう。協力して進めば良い。」
「まあ、キーケちゃんは見た目通りの年だがな!キャンキャンキャン!!。」
シエンちゃんがキーケちゃんから、拳骨くらってひっくり返った。久しぶりだな、この光景は。
「きっひっひっひ、やはりシエンの頭は叩きやすくて良いな、しっくりくる。」
「しっくりこられてたまるかっ!!目がチカチカするわっ!。」
「あらあら、久しぶりですねえ。何だかキーケちゃんとあったばかりの頃を思い出しますねえ。」
「本当だねえ。」
「いやいや、あんさんら!今の拳骨!ものごっつかったわ!ぬし倒せまっせ!シエンはんも目がチカチカ程度ってどんだけやねん!!どないなってまんのや、ホンマに!。」
「きひひひ、シエンも言ったであろうよ。何とかなるだろうと。我ら一人一人がそれなりの力を持っておる。それに加えて知識と経験も積んどるのだ、まあ、安心せい。」
「そうだそうだ!キーケちゃんの言う通りだぞ!我らは強いだけではないのだ!この前などなあ、複雑に入り組んだ謎を徹底的に究明してやったんだぞ!。」
シエンちゃんがサマ爺に、ゴゼファード領の2つの絵画についてのあれやこれやを話し出した。
しかし、シエンちゃん、君は何スクープだ!
「ほうほう。」
「はやー。」
「そりゃ、おもろうおまんなあー。」
「ホンマでっかいな。」
「なんと!。」
さすがは情報収集のプロ!サマ爺の合いの手にシエンちゃんのトークは絶好調ですわ!
「おほほう!なんというこっちゃやでぇ。そんな事があるんですなあ。泣ける話やないですか。いやー、シエンはん!ええ話を聞かせてもろたわ。わても、きっと、迷宮の謎を究明したるでえ。」
「おうおう!頑張れ!お前ならできる!。」
焚き火を囲んで焼いた肉なんて食べながら、こうして話しているとやっぱり会話が弾むよ。
シエンちゃんに励まされたサマ爺の顔は、焚き火のゆらゆらと揺れる炎に照らされて、何だか泣いているようにも見えた。
その夜は、砂地のほうでズサッっと大量の砂が噴出するような音がすること以外は、実に穏やかな時間を過ごすことができたのだった。
つーか、怖いよ、あの音。




