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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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面白い話って素敵やん

「いやー、楽しい旅だな!旅はこうじゃなくっちゃな!トモちゃんの方はどうだったんだ?何がいたんだ?。」


 上機嫌でシエンちゃんが聞いてくる。


「ああ、こっちはサイクロプスがいたよ。」


「ほほう、面白いのがいたじゃないか。あれは痛覚が鈍い上に雷に強いからな、それで倒せたのか?。」


「倒しはしないよ、追っ払っただけ。しっかし、どうりで雷魔法の効き目が薄いはずだよ。」


「あれは、雷の精霊の眷属だと言われとるからな。」


「ええ、雷を崇め、サイクロプスを守り神とする部族もいますよ。実際に村を守るような行動をとる者を見たことがあります。」


 キーケちゃんとアルスちゃんが言う。


「そっか、じゃあ尚更殺さなくてよかったよ。」


「へい、わてとしましても助かりましたわ。しっかしクルースはん、人族で光魔法が使える方に会うの初めてでっせ。」


「トモトモは特別ですからね。ねー、シエンさん。」


「おう!そうだ!さっきも山賊どもに教えてやったばかりだぞ!トモちゃんは凄いってな!。」


「そう言えばそんな事言ってたねえ、面白い話をするって。それはちょっと、いや、大分嬉しかったな。面白い話ができるって俺は結構大事だと思ってるからね。」


「くふふふ!そうか!嬉しかったか!くふふふ!それは良かったぞ!。」


 上機嫌なシエンちゃんなのであった。


「面白い話なら、わてにもありまっせ。」


 おっと、サマ爺が参戦してきましたよ。さて、今日の面白い話はどんな話だ!


「あら、お聞きしたいですわぁ。」


 アルスちゃんのはんなりした受け答えには、いささか拍子抜けしてしまうが俺も興味はある。


「へえ、面白い話ってぇのは他でもない、これから向かう遺跡街の事でおます。まず、入口でっけどな、行ったらたまげまっせー。なんと、岩山を削って作られてまんねん。山そのものが建造物になっちょるちゅーわけですわ。」


「おおっ!見てみたいねえ!。」


 俺は相づちを入れる。


「そうでおまっしゃろ?その岩肌は大昔にあった火山の噴火の影響か黒ぉおましてな、中に入ると生きて出られぬ迷宮の入口という事で黒死門とよばれとりやす。」


「おっかないねー!。」


「にょほほほ!クルースはん、聞き上手でんなー。本題はここからや。前にも話したやさかい覚えてはりますやろ、この遺跡の由来を。」


「ああ、邪神だか何だかを封印するってやつだよね?。」


「そうだす。その話は、まあ昔々の伝説なんでっけどな、誰か知っとる方おりまっか?。」


「ええ、少しだけならば。なんでも、まだ神が地上にも降りてきていた時代、この地方には神と人との混血の民が暮らしていたとか。強力な力を持ちながら人の身体を持ったこの民は神のように天上に帰れず、人のように協力して暮らす事もできず、いがみ合い好き勝手に生きていたのだとか。それを見て悲しく思った神が、彼らがまとまらないのは敵がいないからだろうと考え、邪神をつかわした。多くの犠牲を伴いバラバラになっていては勝てない事を悟った彼らは協力して戦ったのだが、すでに多くの同胞を失っており団結しても力では及ばなかった。そこで彼らは残された力を集結し迷宮を作り閉じ込めた。と、このくらいですね、わたしが知っているのは。」


 さすが博識アルスちゃん!


「よぉ知っとりまんなぁ。そうだす。邪神は火を吹き辺りを焼き尽くし、その煙は天を覆い、幾日もの間、陽の光を遮り、作物は枯れ、多くの生き物は衰弱した。生き物の死骸にたかったハエの数が余りにも多かったため、視界がきかず呼吸もままならぬ有様だった。と、そう古文書に記されとります。」


「ほうほう。そりゃ、凄いねえ。そこまでくると、最早、災害だねえ。」


「おっ!!クルースはん!鋭いでんなー!この話の面白いのはこの描写の解釈でんねん。まあ、わての素性はもう皆さんご承知でんな。隠密衆の里の出ですわ。わての里はそれは昔々から、色んな情報を時に権力者の依頼で、時に里を守るため、何かにつけて集めてきたわけだす。その中には、この土地が壁で仕切られる前の時代に領主をしていた者たちの情報もありましたんや。わては、ここに来る前にこの土地の事を調べました。情報の量が生死を分けるっちゅうのは、ガキの時分より痛いほど教わっとりまっからな。」


「どんな情報よー!気になるよー!。」


「にょほほほ、気になりまっか?話がいがありますなあ。この土地で一番有力な領主がおりましてな、その領主家はこの邪神と戦った民の血筋だと言うのですわ。そして、この伝説は事実を元にしている、とそう書かれたりました。その事実と言うのは、火山の噴火であった、と。」


「なるほどの。火山の噴火とは、山が強力な火を吹き、大量の灰を出し空を覆い陽の光を遮ると聞くな。その灰はしばらくの間、宙を舞い作物を枯らすそうな。聞いてみれば邪神の被害そのままではないか。」


 キーケちゃんが言う。


「でっしゃろ?そこでわては思いましたんや、その迷宮は火山の噴火から身を守るための施設だったのではないか、と。」


「確かに面白い話ですわ。でも、避難所でしたら何故、迷路にしたのでしょうか?。」


「アルスお嬢!そこなんですわー。そこがわても疑問点なんですわ。迷路にすることで、何か火山の対策になるのか?そうせざるを得ない状況ってのは何かないか?考えてまんのや。」


「お爺は、見かけによらず難しいことを考えるのだな。火山の噴火と迷宮に関係があるとは、我には考えられぬ。」


 シエンちゃんが言うのももっともだ、俺もちょっと思いつかないよ。


「わては、この考えが捨てきれまへんのや。こっちにいるうちに、その関係を見つけたろ思ってますねん。と言うより、その謎を解かぬ限り壁から出られまへんわ。どないです?おもろい話でっしゃろ?。」


「きっひっひっひ。お主の考え込みで面白い話よな。お主にとってはその謎が最大の壁なわけだな、きっひっひっひ。」


 キーケちゃんが笑って言う。


「ええ、面白いお話でした。いつか、その答えがわかると良いですね。」


「アルスお嬢、ありがとうさんなあ。」


 その後も我々は、順調に出て来た野盗を成敗し、魔獣を追っ払いして何とか陽が沈む前に遺跡街に到着したのだった。

 岩山に囲まれ閉ざされた道、その先に見えるのはその岩山をくりぬいて彫刻したかのような、遺跡街の入口だった。

 暮れゆく夕日に照らされて、細かく白い斑点の入った黒い岩肌が何とも言えない郷愁を誘うような色合いになっている。

 なんだろ?なんか懐かしい色合いだ、なんて考えてたらピンときた。ガキの頃、夕方まで遊んで家路につく中、暮れる夕日に照らされて見た近所のお屋敷の黒い塀、あの感じだった。一瞬、豆腐屋のラッパの音や、夕餉の香りがするような感覚に陥る。

 いけねーいけねー、思わずノスタルジックな気分にひたってしまっていたぞ、何丁目の夕日だって話だ。


「どうでっか?えらいもんでっしゃろ?。」


「はい、美しいですねえ。」


「たいした建造物よ、大昔に作られたとはとても思えぬな。」


「うむ、夕日に照らされキレイよな、まるで、美味しいお肉を焼く時の炭のようだな。さあ、さっさと今日の寝床を決めて肉を焼こうではないか。」


「シエンはんにかかっては情緒もへったくれもありゃしまへんですな。」


「いやあ、あれでなかなか情緒豊かなんですよ。焼け炭のような色ってのも、なかなか味わいがある表現だと思いませんか?。」


「いやー、そう言われるとそんな気もしないでもないような、いやいや、でもお肉を焼く時って限定してはったしなあ、ウーム、ちょっと考えさせておくんなまし。」


「幾らでも考えると良いぞ!くふふ!だが、まずは肉を焼く場所の確保だ!さあさあ!。」


 寝床の確保から肉焼き場所の確保にシフトチェンジしたよ。刻一刻と空腹度が上昇してるなこりゃ。

 そんなわけで、俺たちは遺跡街の入り口から少し離れた場所にある、開口部が広く浅い洞窟と言うのか、岸壁がオーバーハングして屋根上になってる場所を今夜の寝床としたのだった。ここをキャンプ地とするぜいっ!

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