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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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俺とアニキとストームとって素敵やん

 俺達は外で転がってるチンピラを道の真ん中に並べてる。そして兄貴分の男の顔に水をかけ意識を取り戻させる。


「ブフッ!!ゴバッグホッ、な、なんだ?おっ、お前、畜生何しやがった」


 兄貴分の男は口と鼻から水を出しながらも俺を認識し憎しみの目を向けてくる。


「なにって魔法だよ。術式なしの奴ね」


「術式なしだとお?学生が?ふざけんな!」


 男は俺の胸ぐらをつかもうと手を上げる。俺は男の耳たぶに小さな火球をぶつけてやる。


「熱っ!!あっつぅぅぅ!!」


 男は大きな声を出して耳を押さえる。


「お判りいただけただろうか?」


 俺は低い声で男に言う。わからなければリプレイするだけの話しだ、とでもいうのであろうか。


「わ、わかった。わかったから、乱暴はやめようや、な?話せばわかるから」


 男は手を前に出して言う。


「さすが兄貴分、変わり身が早いね」


「状況判断が的確だと言ってやれよ」


 身も蓋も無い事を言うストームに俺は言う。


「「じゃあ、案内して貰おうか」


「あ、あんた、さっきもそう言ってたけど、アジトったって沢山あんだよ。ここから一番近い所でいいのかよ?」


 律儀なのか時間稼ぎなのかわからんが男はそんな事を言う。


「子供が沢山閉じ込められてる場所だよ、決まってるだろ?お前は何の目的でここに来たんだよ?何を目撃された奴を探しに来たんだよ?おい?頭使え」


 俺は男の頭を突きながら言う。


「ひぃ、だから、暴力はやめてくれって」


「暴力で飯食ってる奴が何言ってんだよ。いいから、さっさと案内しろよ。ちなみにだけど、目撃者からざっくりとどこにあるか聞いてるからさ、妙な所に誘導しようとしたら、上はボウボウ下はビリビリ、なーんだ?それはお前だ!ってな事になるぞ?」


 俺はビシッと男を指差して言う。


「ひぃ、わかった、わかったから。でも、先に言っとくけどよ、そこはうちのもんだらけだからよ返り討ちにあっても悪く思わないでくれよ」


「お前、面白い奴だな。殺すのは最後にしてやるよ」


「ひぃっ、正直に答えてんだから勘弁してくれよ」


 男は縮み上がって言う。


「冗談だよ冗談。案内してくれれば後は好きにして良いよ。逃げるも良し、もう一度俺とやるのも良し」


「勘弁してくれよ。もうあんたとやる気はしない、消えるよ」


「好きにしろって言ったろ?じゃ、早速、案内してくれよ」


「お、おう」


 男は立ち上がりズボンのホコリを払う。


「こっちだ」


 俺とストームは男の後に続く。


「攫った子供を監禁してるのはその一か所だけなのか?」


「ああ、そうだよ」


「他に大人は攫わないのか?」


「奴隷制は禁止されてるから大人は使いづらいもんで需要がないんだよ。大人は身体も大きいし飯も沢山食うしコッソリ所持するのが難しいだろ?」


「攫った子供はどうなるんだ?」


「勿論売られるんだよ」


「売られた後は?」


「そこまでは知らないよ。ただ買ってく奴は貴族が多いから貴族の事はあんたらの方が良くわかるんじゃねーのか?」


「貴族か」


「この件が片付いたらさ、親が衛兵とか軍とかその辺の偉い人な生徒に相談してみようか?」


「それなら俺に心当たりがあるから、話を通してみるよ。ストームは噂を流してくれよ」


「どんな?」


「そうだな、こんなのはどうだ、幼児誘拐売買組織が壊滅したが、その組織が密かに作成していた顧客リストがどさくさに紛れて消えた。そして、それは裏世界で高値で売り出されているらしい」


「それ面白いねえ!きっと流行るよその噂。センセーショナルな事件の裏側で動いている恐るべき真実って感じで受けると思うよ。やましい奴は震えると思うしね。いつか自分の元に恐喝に来る奴がいるのではないかってね」


「だろ?見えない者の影におびえて震えて眠れってなもんだよ」


「あんた達、恐ろしいな。そんな事になったら、うちは再起不能だよ」


「巻き込まれたくなかったら、案内してすぐに消えな」


 俺は男に言ってやる。こいつみたいな下っ端なら、命を狙われる事もないだろうがストームが噂を流したら組織の上部は顧客から命を狙われる事になるだろうよ。前世界でも似たような事件があったんだよ。その時は首謀者と見なされる男が不自然な自殺を遂げ、発見された顧客リストは全て偽名であったとの事で事件は終息したのだが、単独犯というのは考え辛いという事やその死に不自然な点が多い事などからスケープゴートにされたと言われていた。その後、その事件を追いかけていたフリーライターが謎の死を遂げたり、単独犯の家族が次々に自殺するなど不審な点と謎の多いこの事件は一部の者の好奇心を大いに刺激し、ネットなどで長く語り継がれ、その事件を題材にした小説が映画化されたりもしたのだった。

 つまり、この手の話しは大衆の好奇心も刺激するって事だ。

 男はうんうんと頷き、身を縮めるようにして先を急いだ。裏路地に入り、植木鉢が並べられていたり洗濯物が干してあったり人の家の敷地内じゃないのか?と思うような狭い道を通る。


「このすぐ先、右手の倉庫がそれだ」


 男は路地の一角で足を止め言う。


「ストーム、ここでこいつを見張っててくれ、確かめてくる」


「あいよ」


 軽い返事をするストーム。俺は身体から力を抜き路地を歩く。男の言っている場所で右を向くと、そこは少し開けた空間がありその奥が倉庫になっていた。倉庫内には積み重なった檻があり中に子供がいるのが見えた。

 俺は一旦通り過ぎ、ゆっくりとUターンしてストームの元に戻る。


「確認したよ」


 俺はふたりに告げる。


「じゃあ、もういいね」


 ストームが男を見て言う。


「ああ」


「だってさ、お疲れさん」


「すまねえ、じゃあ、ずらからせて貰うぜ」


 男は言うが早いか走り去った。


「なにかと素早い奴だねえ」


「じゃ俺は行ってくるけどストームはここで待ってるか?」


 走り去る男を見て言うストームに俺は声をかける。


「いや、安全マージン取ってついてくよ」


「そうか。気を付けろよ」


「クルース君こそね」


「俺はいつでも気を付けてるよ」


 俺の言葉に肩をすくめるストーム。どうだかねえ、とでも言いたげだ。まあ、良いさ。俺はさきほどの倉庫に向かって歩みを進めるのだった。


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