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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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無法地帯の旅って素敵やん

 サマ爺が言うには、馬のレンタル料金は日割りで前払い、大きな街なら関係店に返してもらえば良いし、そうでないなら、馬は解放した時点で最寄りの関係店に戻るとの事。


「馬だけに上手く出来てまっしゃろ。」


「今からだと、迷宮街に着くのは夕方ですかね?。」


 軽く流すアルスちゃん。


「そうでんな。今から行けば暗くなる前には着きまっけど、安全な場所で野営をして突入は明るくなってからがいいと思いまっせ。」


 たくましい男、サマ爺。まったく堪えてない様子。

 ではそう言う事にしますかってんで、各自、馬をレンタルする。

 今回はひとり1頭、サマ爺はシエンちゃんの後ろに乗ると言っていたのだが、当然却下された。

 壁際の街を出て一応街道っぽくなっている道を通る。

 一応と言うのは、土の道ではなく草が踏み固まって道のようになっていると表現した方が良いような道だからだ。

 これは、馬で進むのは良いけど馬車などの車輪のついたもので往来するのは大変そうだ。

 しかし、馬にとっては土の上よりクッションが効いて走りやすいようだ。

 しばらく道沿いに馬を走らせていると林の中を通る道になる。


「気を付けなはれや、こういう見通しの悪い所は何かと物騒な連中がでまっさかい。」


「よしよし、結構結構!早く出てこーい!。」


 シエンちゃんが機嫌よさげに歌うような声を出す。


「たまらんなあ。」


 サマ爺が頭を押さえている。


「やった!出たーーー!きゃっほーー!。」


 シエンちゃんが喜びの叫びをあげる。

 道をふさぐように林の中から武装した集団が現れた。


「持ち物と馬を置いて行ってもらおうか。」


 筋骨隆々の馬顔の男がそう言った。


「馬はお前だーー!。」


 シエンちゃんがそう叫びながら馬から飛んで男に蹴りを入れた。


「アボボボー!。」


 馬顔筋肉ダルマがすっ飛んでいく。


「ボーっとしてないで、かかってこんかい!。」


 飛び蹴りを決めた後、着地したシエンちゃんが手をクイクイとやりながら言う。

 おっとこまえ過ぎる!。

 林の中に気配を感じると、もうアルスちゃんとキーケちゃんが左右に分かれて林に入ってる所だった。


「クルースはん、わては遠距離攻撃してくる奴を倒してきまっさかい、シエンはんの支援をお願いしまっせ!なーんちゃって。」


 しょうもないダジャレを言って馬上から姿を消したサマ爺。だが、さすがは隠密衆!消え方がカッコイイぜ!


「しかし、シエンちゃんに手助けなんていらないと思うんだけどなあ。」


 俺は馬から降りてひとりごちた。

 シエンちゃんは集団で襲い掛かってくる野盗を見て、飛び跳ねて喜んでいた。


「きゃっほー!団体さんでいらっしゃーーい!。」


 野盗はみながっちりした体つきで犬系や鳥系の顔をしており、動きは俊敏で攻撃に魔法を織り交ぜる奴もいた。

 フクロウ顔の男がトゲトゲ棍棒を振るうと、トゲがいくつかシエンちゃんに向かって飛んだ。同時に後ろからダチョウ顔が剣で切りかかる。


「最高だー!美味い肉食べて、暴れられて!最高だー!。」


 シエンちゃんはそんな事を言いながら、左手で飛んできた複数のトゲを掴み投げ返し、かかってきたダチョウ男の剣を裏拳で叩き割った。

 その後も犬顔男の振り回す鎖鉄球を軽く蹴り返して犬男をすっ飛ばしてから、ダチョウ男の足を片手でつかんでブルンブルン振り回して、群がる野盗共を蹴散らしていた。

 林の中では何かが高速移動する音や、くぐもった声や何かが落ちる音、金属同士が強く当たる高い音がしている。

 シエンちゃんは距離を取った野盗達が放った弓や攻撃魔法を、落ちていた棍棒で片っ端から打ち返している。

 棍棒がボヤーと光っている所を見るに、何かしらの魔法を使って強化しているのだろう。

 あんまりシエンちゃんが楽しそうなので、手を出すのがはばかられるよ。


「アンギャァァァァーーーー!。」


「チッ!モタモタしすぎた!面倒なのが来ちまった!ずらかるぞーーー!。」


 野盗のひとりが叫ぶが、乱戦になって聞こえないのか逃げる暇がないのか、まあ、バタバタしとりますよ。

 俺は暇だから大きな鳴き声が聞こえた林の奥へゲイルを使って飛んで行く。

 林の中から、矢とか火の玉とか岩つぶてなんかが高速で俺のところに飛んでくるが、風魔法の圧縮空気玉で撃ち落とす。


「ギャァァァーーース!。」


 林から頭を出して吠えているのは、ひとつ目の巨大な鬼だっだ。

 サイクロプスかな?わかんないけど、やっぱ、むやみに殺すのは良くないかね?

 俺はひとまず追っ払う事にした。

 こちらに気づいたサイクロプス(仮)は、両手に大きな木を持ち凄い勢いで投げて来た。

 俺は高速で迫ってきた巨木を蹴りで地面にたたきつけ、ヤツの頭付近をグルグルと回った。


「あのー、大人しく帰っちゃ貰えませんかねー。どーですか?。」


 俺はサイクロ(仮)プスの耳元で大きな声を上げた。


「オゴガァァァァァァ!。」


 話にならないとはまさにこの事なり。

 俺は仕方ないので飛び回りながら、雷魔法で体のあちこちをバチバチとやってやった。


「グウゥゥゥガアァァァァギィィギギギィッ!。」


 叫びながらバチバチやられた箇所を押さえる仮クロプス。

 人間だって小さな蜂に追っかけられたらたまらず逃げるってなもんだ。

 どうだ、逃げてくれるか?

 叫びながら両手を伸ばし身体を回転させるサイクロさん。

 お前はどこぞのマッチョ市長か?

 どうやらこの程度では逃げ出さないようだ。


「大丈夫でっかクルースはん!。」


 サマ爺が駆け付けてくれたようだ。


「大丈夫だよ!いやさ、殺さないで追っ払おうとしてるんだけど、中々しぶとくてねえ。」


「ありゃま!加減してくれはってますのんか。えろうすんまへんなあ。サイクロプスはこの近辺の生態系の頂点ですから、無暗に殺されるとバランスが狂ってまいますけえ、ありがたいでっしゃろかいな。」


 どんどん言葉遣いがおかしくなっていくよ、この爺様は。

 さてと、どうやって追っ払ったものかね。

 考えあぐねていると、サマ爺が俺の近くに飛んできた。


「やっこさんは、強い光を嫌いまんのや!光魔法つかえまっか?。」


「使えるも何も、一番得意なやつだよ。んじゃ、一発ぶちかますから、目を閉じておいでよ!。」


 俺はやっこさんと違うからなーーっ!


「よろしゅうおまっせーーーー!。」


「いっくぜーーー!。」


 俺はなんとなく、本当になんとなく頭に両手を添えて、継続させない代わりにライトより各段に強い光を放つフラッシュの魔法をぶっかましてやる。

 俺自身も目を一瞬閉じ、そして目を開ける。


「おおぉぉぉぉぉうぅぅぅるぅぅぅぅぅいぃぃぃぃーー。」


 サイクロプスは目を両手で押さえて、林の奥へ奥へと悲しげな声を出して走り去っていった。


「おおきに、これでもう心配ありゃしまへん。あれは基本的には小さい生き物は捕食しまへんさかいに、今回は山賊共がかなり派手に暴れたもんで、釣られてやってきたんでっしゃろな。」


「フーム、どっちかって言うと派手に暴れたのはシエンちゃんだったりするんじゃないかねえ。」


「クルースはん、それは言うたりなさんなや。一生懸命やってまんのや。」


「いやー、なんだか、もう、すっかりうちのメンツに馴染んで頂けたみたいで、どうも。」


「さあ、皆のもとに戻りまっか。」


「ういっす。」


 俺たちは急いでシエンちゃん達の元に飛んで行った。


「おいっ!お前たち!返事は!。」


「はいっ!。」


「よーし、では繰り返せ!。」


「女子供老人は襲いません!!。」


「よーし!。」


 うひゃーー!シエンちゃんが、山賊たちを正座させてその前を行ったり来たりしてる!

 なんか、新兵教育してる鬼軍曹か暴走族のOBみたい。


「お前らが今日襲った相手は誰だ!。」


「はい!女子供老人です!。」


「バカ!トモちゃんもだろ!もう一度!。」


「はい!女子供トモちゃんです!。」


「お前らがトモちゃんと呼ぶな!バカものが!。」


 山賊の大将なのか、ひと際大きい身体の豚顔男がシエンちゃんに頭をひっぱたかれた。


「すいませんでしたっ!トモさんです。」


「よーーし!いいぞ!お前らはやればできる山賊だ!な!。」


 うひゃー、殴ってから褒めるって、昭和初期のやり方!


「まあまあ、シエンさん。被害もなかった事ですし、この辺で許して差し上げて下さいな。」


 アルスちゃんがそう言う。

 確かにアルスちゃんもシエンちゃんもキーケちゃんも、そして俺もサマ爺さんも服の乱れひとつない。


「だが、どさくさで馬が逃げ帰ったようだぞ。どうする。」


 キーケちゃんが山賊共を睨んで言う。


「はい!本当に申し訳なく思っております!よろしければ、皆さまの馬をご用意させていただきたいと思います!よろしいでしょうか!。」


 大きな声で言う山賊の大将。


「きっひっひっひ、なんだか催促したようで悪いのう。そうしてもらえると助かる。」


「はい!今すぐ持ってこさせます!ゼスター、すぐに馬を5頭持って来い!上等な奴だぞ!急げ!。」


「わかりました!。」


 大将に頼まれたゼスターと言うフクロウ顔の男は背中から羽を出すと、音もなく飛んで行った。


「しかし姐さん達、お強うございますな!手下が誰一人死んでおりませんでした。これだけの実力差を見せつけられてしまっては平伏するほかありません。そちらのお嬢さんの魔法も凄まじかった!うちの者でも魔法の腕ならチョット名の知れた奴もいますし、逆に魔法使い狩りの手練れも幾人かおりましたが全く歯が立ちませんでした。そして、そちらの女性も凄かった!まさかこの私が力負けするとは思いませんでしたよ!恐れ入りました!。」


 まくし立てるように言う山賊大将。


「バカ!トモちゃんなんてもっと凄いぞ!凄く面白い話をするぞ!。」


「はい!すいません!トモさんは凄いです!。」


「よーし!わかれば良い!。」


「持ってきましたーーー!。」


 フクロウ顔が馬に乗ってやって来た。


「上等なのを選んできました!。」


「よしよし!では遠慮なく使わせて貰うぞ!。」


 シエンちゃんが大きな声で答える。


「我はこの馬に決めた!皆も選んでくれ!。」


 シエンちゃんは速攻で決めた。

 俺たちも各自、馬を選ぶ。


「よーし!じゃあ、お前ら!我の言ったことを忘れるなよ!さらばだ!。」


 シエンちゃんがカッコよく言って馬を進める。


「お気を付けてーー!。」


 山賊共が立ち上がって手を振り見送ってくれる。


「はーい、行ってきまーす。」


 アルスちゃんがニコニコしながら手を振り返している。

 改めて思うが、シエンちゃんにしてもアルスちゃんにしても物怖じしなさすぎるだろ。

 山賊たちに別れを告げて俺たちは再び迷宮街を目指すのだった。

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