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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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無法都市って素敵やん

 翌朝、俺たちはこれまた可愛らしい朝食をとり、迎えに来てくれた強鳥車に乗り、ファニーな街に別れを告げた。

 強鳥車は本日も絶好調の様子。

 街道に魔獣が出ることもなく昼前には壁際の街ツヤヨセに到着した。

 教会の前まで送ってくれた御者さんに感謝を告げて、俺たちはツラーセン司祭を訪ねるために教会の中に入った。

 教会の中に入ると、これもどこの教会でもほぼ定番になっているシスターさんから声をかけられるので、ツラーセン司祭に会いに来た旨を説明すると話は通っていたようでスムーズに部屋に通された。

 通された部屋には、背の高いひょろっとしたトカゲ顔の男性が出迎えてくれた。


「クルース様ですね。ご苦労様です。司祭のツラーセンです、よろしくお願いします。まあ、お座り下さい。」


 俺たちはツラーセン司祭に促され、ソファーに座る。

 こちらも自己紹介をし、いよいよ依頼内容についての説明となる。


「壁とこちらを行き来するためには検問所を通る必要があります。ツヤヨセの街にはその検問所があります。通過するには身分証があれば大丈夫です。皆さんでしたら冒険者カードで構いません。検問所を通るとすぐに壁向こうの街があります。その街に現地協力者がいます。皆さんの特徴は伝えてありますので向こうから接触を取ってくる手はずになっています。向こうで冒険者カードでの支払いができる場所が限られていますので、気を付けて下さい。ツヤヨセで換金できますのでよろしければご利用下さい。なにか、質問はありますか?。」


 流れるように説明される。

 ツラーセン司祭は壁向こうに教会依頼で行く冒険者に、こうやって幾度も説明してきたのだろう。


「壁向こうについて聞きたいのですが、無法地帯と聞いていますがどの程度の無法地帯なのですか?。」


 俺はツラーセン司祭に聞いてみる。ちょっとおっかないからな。


「各地区に有力な組織がありその組織なりの秩序があるようですが、司法機関はまったくありません。ですので、まったくの無秩序ではないものの危険な場所ですし、基本的には強いものが正しいといった価値観の場所です。壁向こう全体を統べる者はおりませんが一番大きな勢力は退廃街の王と自らを呼ぶアーマーオウガの男をリーダーとする組織だと言われております。」


「アーマーオウガとは?。」


「鬼族の中でも力が強く肌が鎧のように固い種族です。生まれつき攻撃力も防御力も高いため戦闘能力が高く好戦的な種族です。そうした種族なのでやはり壁の向こうに行くものが多いので、自然と大きな勢力になっているようですね。」


「なるほど。後は実際に行って肌で感じて見ますか。」


「くふふふ、面白そうな場所じゃないか。骨のあるやつがいると良いのだがなあ。」


 またシエンちゃんは、物騒な笑顔ですよ。


「よろしくお願いいたします。検問所手前に換金所がありますから良ければ利用してください。では、くれぐれもお気を付けください。」


「はい。では。」


 俺たちは教会を出ると司祭に聞いた換金所で、オプシウス硬貨と呼ばれる壁向こうのお金に換えた。

 シエンちゃんはそんな場所なら換金しなくても力づくで行けばいいんじゃないか、なんてキツイ冗談を言って笑っていたが、どうも半分くらい本気な感じがしたんで、どんな場所でも無益な殺生や略奪は極力やめような、と諭したのだった。

 やだなあトモちゃん冗談に決まっとるよ、と言うシエンちゃんの笑顔はいたずらっ子のようで憎めないのだが、どうにも怪しい表情だった。

 検問所でそれぞれ冒険者カードを提示し、武器を持った屈強な衛兵たちが固く守る門を通り抜け、壁の向こう側へ歩く。

 門の向こうは司祭の説明にあったようにすぐ街になっていた。

 門の上には弓や槍を持った衛兵が詰めており、門のこちら側にも衛兵が複数人、詰め所のような建屋の周りで警戒している。

 こちら側の警備のほうが物々しいな。


「向こうから接触してくるって話だったな。」


「そう言ってたね、それまでちょっとブラブラしようかねえ。」


 俺はキーケちゃんにそう答えて街を歩く。

 街は人が行きかい活気があるのだが、行きかう人がどうも柄が悪い。

 まず、武器の持ち歩きが露骨だ。

 冒険者などは街中ではマントで隠すとかして、あまり露骨な持ち歩き方はしないものだがこっちの人たちはまあ、トゲトゲ鉄球をぶらぶらさせてたり、鞘にも入れずに抜き身で剣を持ってたりして常時臨戦態勢といった雰囲気だ。

 露店で販売している物も武器が多い。

 刃物、鈍器などなど物騒なものがいたるところに並んでいる。

 ワイワイガヤガヤと賑やかな声がする方を見ると、、大きなハンマーを持ったクマ男と両手に短剣を持った犬男が争っていて、野次馬が出来ていた。

 さあ、張った張った!と大きな声で賭け事にしてる狸顔のおっさんや、野次馬のポケットに手を突っ込んでる狐顔の男など、もう色々とカオスだった。戦後の闇市か?


「いやあ、楽しそうな街だなあ。トモちゃんの言ってた遊園地ってのはこういう所なのか?。」


「全然違うよ!。」


「なんだ、そうかー。さてと、挑戦者はいないか?。」


 シエンちゃんがキョロキョロと辺りを見回している。


「ここでそんなもん勝手に売るなって言っただろうが!。」

「勘弁して下さい、勘弁して下さい!。」


「おっ?なんだ、なんだ?。」


 シエンちゃんが声のする方へ、とっとことっとこ歩いていく。


「仕方ない奴だなあ。」


 キーケちゃんが言い、皆で後に続く。

 露店の隙間で3人の魔族の男が小柄な魔族の男を囲んで蹴っていた。


「おーい、おいおい!どうしたどうした!話を聞かせろ!な?。」


 シエンちゃんがズカズカと割って入った。


「なんだテメー?関係ない奴はすっこんでろ!。」


 ブルドッグみたいな顔をした男がシエンちゃんに凄む。


「まあまあ、あんまり意気込むと歯が抜けるぞ?いいから何があったのか聞かせろ?な?。」


 シエンちゃんがニコニコしながら意味の分からない事を言っている。


「すっこんでろっつってんだろうが!。」


 ブル顔の男が腰に吊るしてたトゲトゲ棍棒でシエンちゃんに殴りかかる。

 シエンちゃんはニマーっと笑って、バチコーンとブル顔をビンタした。


「ブベショっ!。」


 ビンタされたブル顔の男はくしゃみみたいな声を上げて転がっていった。


「ほらな?歯が抜けたろ?どうだ?訳を聞かせちゃ貰えぬか?。」


 ニコニコ顔で言うシエンちゃんをただ物じゃないと察したのか、残り2人の男はブンブンとうなづいた。

 2人の話はこうだった。

 蹴られてた小柄なリス顔男は薬効のある野草売りで、物を売るときはそこを縄張りにしている組織に話を通すのがしきたりだとの事で、リス男はそれをやらずにこの辺りで何度も商売をしているのでケジメを取っていた、と言うのだった。

 リス顔の男は、毎回ブル顔の男にお金を渡している、今日も渡した、今日渡したのは帝国銅貨だからあいつの財布を見ればわかるはずだ、と言う。

 それを聞いた2人の魔族は伸びてるブル男の懐から財布を抜いて、中身を確認しだした。


「この野郎。」


 財布の中身を確認した男が小さく呟いた。


「おい。どうだったんだよ?。」


 シエンちゃんがデカい声で聞く。


「いや、そいつの言った通りだったよ。」


「おお、そうか!で?どうするんだ?。」


 さらに詰めていくシエンちゃん。


「いや、どうするって言われてもな。俺たちはタッカをボスんとこに連れてかねーといけねーからな。この件はしまいだよ。」


「しまいってなんだ?薬草売りはどうすんだ?お前もこのままじゃあ気が済まないだろ!なあ!おい!。」


 うわー、シエンちゃんのが柄悪いよ。リスの人ってば、めっちゃ小さい声でいやとか別にとか言ってるけど。


「ほら!リスのおっさんも気に入らねーってよう。」


「いや、姉さんが強いのはわかったけどな、俺たちもメンツってもんがあるんだよ。これ以上アヤつけようってんなら、俺たちも行くとこまで行くぞ。」


 こうした場に慣れてんだろうな、なかなかドスが効いてらっしゃるけど、シエンちゃんにはどうかなぁ?

 シエンちゃんは無造作に魔族の男に近づくと男の顎をつかんで笑った。


「なんだ、かわいい事言いよって。どこ行こうってんだよう、どこにもいっちゃダメだぞ。」


 男の顎をグリグリとゆすりながら楽しそうに言うシエンちゃん。


「お姉ちゃん、その辺にしといてやってな。」


 どこから現れたのか、小柄な猿顔の老人がしわがれた声でそう言いながらシエンちゃんの後ろに付いた瞬間、凄い勢いでシエンちゃんが裏拳を放った。


「ほら、もうみんな散りなはれ。しかし、怖いお姉ちゃんやなあ。かわいい顔してからになあ。」


 猿顔老人はシエンちゃんの肩をポンと叩くと、その場でトラブっていた男たちに告げた。

 どうやってあの裏拳を避けたんだ?なんか、シエンちゃんの拳がすり抜けたように見えたけど。

 ブル顔を抱えた2人はそそくさと去って行き、リスのおっさんも頭を下げて小走りで去って行った。

 シエンちゃんは不思議そうな顔をして自分の拳を見ている。


「お前、面白いなあ。」


 シエンちゃんがまた凄い顔をして笑った。


「いやいや、堪忍したってくれ。クルースさん御一行様やろ?わてはサマカウイ言います。教会から来なすったんやろ?あんじょうたのんまっせ。」


 猿顔の老人、サマカウイさんはこの無法都市での協力者さんのようだった。

 また、ひと癖ある人が来たもんだよ。

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