怖くてたまらず閉じ込めるって素敵やん
「いやいやいや、ここだけは開けてはダメですって」
おいおい、協力しようと言った傍からこれかよ?案内を続けていた自称大佐は、厳重な鉄扉の前に来たら急に怯えて開ける事を拒否し始めたのだ
「協力するってさっき言ったばかりじゃねーか。今更何を恐れてるんだよ?母国か?それなら上手い事、話が運ぶように進言してやるから安心しろと言ったろ?一緒に来てる人間にはバッグゼッドの諜報組織のナンバー2もいるんだから」
俺は急に怖気付くゴクリオン大佐に言ってやる。まったく、それでもコマンド部隊の大佐かよ?
「コマンド部隊だって無敵じゃないんですよ」
「この野郎、また人の頭覗きやがったな?」
「ひっ、すいません。この力は制御できないんですよ。でも、安心して下さいクルースさんの思っている通り、瞬間的な行動の決定や表層的な所しか読めませんので。そうでないと、さすがにこちらの精神がやられてしまいますからね。人の考えの奥底など知って無事でいられるわけはないですから」
「まあ、そうだろうな。人の心の底が見えるんなら上層部がなぜお前の意見を却下したのか、その真意も読めるはずだもんな。まあ、それはいいとして、なんでここを開けちゃだめなんだ?」
「ここに閉じ込めているのは真の破壊神なんですよ」
「真の破壊神だと?」
「はい。上層部が暴虐の王と恐れられる一族を捕らえて邪神化を施したのですが、とても制御できる物ではなくこうして封印しているんですよ」
「は?一旦捕らえたんだろ?だったら同じように無力化出来るんじゃないのかよ?」
「捕らえたって言いましても、行き倒れている所を確保しただけですよ。運が良かったんです、普通なら捕らえるなんて無理ですよ」
「そんなヤバい奴をなんで秘密作戦中の船になんて閉じ込めてるんだよ?」
「上層部の指示ですよ。あまりにも危険度が高いので自国に置いておきたくないためかとも思ったのですがそれにしても不自然すぎます。今回の指示に置いて不可解な点のひとつでもあったのですが、やはりこれも」
「さっきの大量破壊兵器と同じ理由か?」
「ありえます。こいつを暴れさせる事で起きた騒ぎで条約違反が発覚する、という筋書きならば」
「ったく、えげつない事を。そう言う事ならここはスルーして行くか」
「そうして下さい」
ゴクリオン大佐は額の汗を手で拭いながら言う。そんなに恐ろしい相手なのか?
「恐ろしいなんてもんじゃありませんよ。元々の能力も高い種族に邪神化ですからね。こいつの暴走でハルスマニ空軍施設がひとつ消滅してますからね」
「おいおい、邪神化って解除できないのかよ?」
「アンブリーチな魔力プッシュで体内に埋め込んだ邪神化具を吐き出させることが出来れば可能ですが、それには国家魔術師並みの使い手がふたりは必要です。更に、激しく暴れるでしょうから押さえつける事も必要です。そもそも、押さえつける事が出来るならこんな苦労はしないですし、国家レベルの魔術師はアンブリーチな魔力の使い方など出来てもやりませんよ。一旦、そんなことをしてしまうと、それまで積み上げて来た魔力操作がメチャメチャになりかねませんからね」
「アンブリーチな魔力プッシュ?」
「ええ、聞いた事がないですか?魔力に属性を乗せないやり方ですよ」
「陰の気と陽の気って奴か、人の体内から瘴気を払ったりヘイズアイを追い出したりするあれか?」
「そうですよ、魔力に地水火風光闇を乗せずに放つやり方ですが、瘴気やヘイズアイとは比べ物にならないですよ」
「なにが比べ物にならないんだ?」
「邪神化具を吐き出させるために必要な魔力ですよ。国家魔術師並みのって言ったではないですか」
「なにちょっとキレてんだよ」
「いやっ別にキレてないですよ。ただ、いつまでもこんな所にいるのはちょっと」
「まったくビビり過ぎだっちゅーの」
「奴を見てないからそんな事が言えるんですよ!早く、次に行きましょう次に」
「そう焦るなって」
「ドンッ!!!!」
鉄扉の中から大きな音がして俺とゴクリオン大佐は顔を見合わせる。
「因みにだけど、これ中はどうなってるの?」
俺は恐る恐る聞く。
「奴は封印の術式が施された魔導鎖で幾重にも縛られた上でミスリルで作られた檻に閉じ込められていました。それで定期的に睡眠の魔法をかけているのですが」
「じゃあ、今も中に睡眠の魔法をかけてる奴はいるのか?」
「ドンッ!!!」
俺とゴクリオン大佐はビクっとする。
「もしかすると、お仲間さん達と戦うために出てしまったのかも」
「じゃあ、眠りから覚める可能性もあるのか?」
「いや、でもあれだけ厳重に縛り付けていれば龍だって簡単には逃げられない」
「バキバキバキバキッ!ガッチャン!!」
「逃げられない?」
凄い音がしてゴクリオン大佐は言葉を止めるので俺は先を促す。
「逃げられないはず」
「バゴーーーンッ!!!」
俺はゴクリオン大佐にタックルするようにして一緒に鉄扉の前から横へ飛ぶ。俺たちが立っていた後ろの壁に吹っ飛んだ鉄扉がめり込んでいる。
「おいおい、逃げられないはずじゃなかったのかよ?」
「だから早く行きましょうって言ったじゃないですか!もうだめだ!終わりですよ!」
「落ち着け落ち着け!」
俺はゴクリオン大佐に声をかけながら呼吸を整える。クソが、何が出てくるんだ?せめてクランケルか副長さんかどちらかが居てくれれば。
俺はゴクリオン大佐を背後にやり鉄扉のあった場所を睨むのだった。




