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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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可愛らしい街って素敵やん

 山間の道はマキタヤから王都方面への道を思い起こさせるな。峠道は道幅も狭い上に曲がりくねっており、御者さんは強鳥に手綱を装着して、声と手綱を巧みに使いちゃんとスローインファーストアウトでしかもアウトインアウトのラインで走っている。

 見通しの悪いカーブなどは強鳥がギャッギャッと大きく鳴いて対向車に存在アピールまでしているよ。

 そうしてワインディングロードを快調に走る強鳥車。


「あ、お客さーん!フライングリザードが来ましたー、死なせないように追っ払ってくださーい。」


 御者さんの声がする。


「我が行くぞ我が!。」


 シエンちゃんがそう言って窓から屋根に上がっていった。


「また、嬉しそうに行ったなあ。」


「きひひひ、あいつはこういうのが好きだからなあ。」


 キーケちゃんが笑って言う。


「どーやって撃退するのか見物しよーっと。」


 俺も屋根に登ることにした。


「何だトモちゃんも来たのか。」


「ああ、見物しようと思って。」


「よし、見ておれよ。」


 山間から大きな緑色のトカゲが飛んで近づいてきた。

 軽自動車位の大きさで羽が生えているがワイバーンと違って頭が大きくずんぐりしていて、まるでイグアナのような見てくれだ。


「ゴアァァァァァァァー!。」


 大きな声で叫びながらやって来たのは、4匹か。

 強鳥はその声に怯えることもなくペースを緩めず走っている。


「4匹もいるけど、手助けいるかい?。」


「なに言ってんだトモちゃんは。4匹しかおらんのだぞ。大切に追っ払うから、全部我にやらせてくれ。」


 大切に追っ払うって、またシエンちゃんは独特の言い回しをする時があるなあ。まあ、意味は通じるけどね。


「わかった、おとなしく見てるよ。」


 俺は言ってから、屋根の上に座った。


「まずは1匹目。」


 そう言ってシエンちゃんはスイカ位の大きさの水の塊を発生させて、最初に向かってきたフライングリザードにぶつけた。


「ギョアァァァ。」


 水の塊が当たったフライングリザードはからだを硬直させてゆっくりと谷底に降下していった。


「どうよトモちゃん。水の塊に雷を含ませてみたぞ。名付けて水雷よ!面白いだろ!次も見てろよ!。」


 今度はピンポン玉位の大きさの水の塊を沢山発生させて、向かってくるフライングリザードに向けて発射した。

 おおっ!これはみんなに土魔法を教わっていた時に俺がやってみた奴をアレンジしたな!さすがシエンちゃん!

 正面から帯電した水の粒を大量に当てられたフライングリザードは、さっきの奴みたいにゆらりゆらりと谷底へ逃げて行く。


「おおーっ!これも水雷?。」


「そうだ!前にトモちゃんが土魔法でやって見せたやつな、あれの水魔法版だ!名付けて散水雷!。」


「おおー!。」


「お次はこんなのはどうだ!。」


 上空で警戒していたフライングリザードが、2匹同時に滑空して襲いかかってくるのに対してシエンちゃんが手のひらを向けると霧が立ち込め始めた。

 2匹のフライングリザードがその霧に突入すると、さっきの奴みたいに声を上げ硬直し谷底へと逃げて行った。


「どうだ!名付けて雷霧!。」


「おおーーっ!お見事さんでした!。」


 俺はパチパチと拍手をした。


「くふふふ、いやあ、それほどでもー。」


 にんまりしながら照れているシエンちゃんも可愛らしいよ。


「お客さん、ご苦労様です。また来たらお願いしますね。」


「おう!任せとけ!風が気持ち良いからしばらく屋根にいるか!。」


 シエンちゃんが言うので俺も付き合う事にした。

 屋根には普段、お客の荷物なんかを括りつけるのだろうルーフキャリアが四方を囲む柵のようにあるので、いざと言う時はそこに捕まれば転がり落ちるようなことにはならないだろう。

 まあ、俺もシエンちゃんもいざとなったら飛べば良いのだけれどもね。

 そうして、その後も襲い掛かってくる魔獣をシエンちゃんは撃退していった。

 象くらいデカいカモシカやクマも出たが、シエンちゃんは変わらぬ調子で雷魔法と水魔法の合わせ技で撃退しており、まるで害獣を寄せ付けないための電気柵のようだった。

 腕がムッキムキの大きな猿の群れが一斉に岩石を投げつけてきた時など、シエンちゃんが寝転がったまま指揮者みたいに手を振ると沢山の小さな竜巻が発生し、それに触れた岩石は粉々になり更にシエンちゃんが手を振ると沢山の小型竜巻がムキムキ猿の群れに向かって進み始めたもんで、猿たちはびっくりしてホキャホキャ叫びながら山の奥へと逃げて行ったのだった。

 それ面白いじゃん!と俺が言うと、以前にアルスちゃんがアーミーアントの群れをちょん切った時に使ってた風魔法に土魔法を合わせて破壊力を増すやり方を真似たのだと言う。

 俺はブラボーとばかりに拍手したのだった。

 その後もタンクローリー位のサイズのナメクジが出たが、シエンちゃんが風魔法で道から押し出すと谷底へヌルヌルと滑るように落ちて行った。大ナメクジが通過した後の道は滑って危険だと言う事で、アルスちゃんが水魔法で洗い流してくれた。


「ご苦労様でした、そろそろ山間部を抜けて街道にでます。」


 御者さんの声がすると幾らもしないで景色が開け明るくなった。


「よし、じゃあ中に入るか。」


「そうしましょったらそうしましょ。」


 俺はシエンちゃんに続いて強鳥車の中に入った。


「お疲れ様でした。」


「いやいや、全然疲れちゃいないぞ。まだまだ足りないくらいだ。」


「きひひ、血気盛んとはこのことよ。」


「いやー、面白かったよ。魔法って色々とできるんだねー。」


「シエンさんは、何をするにしても応用力が凄いですよ。やはり、基本がしっかりされているからでしょう。」


「くふふふふ、今日は良く褒められて気持ちが良いな!くふふふ。」


「実際のところ、シエンの戦闘感覚は目を見張るものがあるな。体術もかなり微妙なところまで感じ取っているのがわかる。教えていて面白いわ。」


 キーケちゃんもそんな事をいうものだから、シエンちゃんは上機嫌だ。鼻歌混じりでニコニコしながら窓の外を眺めてるよ。

 街道は道幅も広く見通しも良いので、速度も出て気持ち良い。


「あっ!街が見えて来たぞ!。」


 シエンちゃんの声に進行方向を見ると、街並みが見えて来た。

 近づくにつれ見えてくる街並みは、同じくらいの高さの赤い三角屋根が連なりとても可愛らしい。


「さあ、お客さん、マーミュルの街です。おかげさまで本日の目的だった街より随分と進むことができましたよ。ここから、ツヤヨセまで半日かからないで着きますからね。私としても大助かりですよ。それじゃあ、マーミュルの教会指定宿がありますんでそちらまでお送りいたしますね。明日の朝、お迎えに上がりますんで。」


 上機嫌で饒舌気味な御者さんに感謝されつつ、教会指定の宿まで送って貰うと、広場に面した赤い屋根の宿はまるで童話の世界に出てきそうで可愛らしい事この上ない。


「ちょっと話をつけてきますんでお待ちください。」


 そう言って御者さんは宿の中に入って行く。

 俺はとりあえず客車から降りて外に出た。


「うーーん、なんとも可愛らしい街だねえ。」


 伸びをしながら独り言を言う。


「うふふふふ、神聖エルミランド帝国でもこの街道は有名な街道でしてね。民話街道と呼ばれてるんですよ。」


「お!アルスちゃんも降りて来たね。ちょっと教えてよ、その民話街道の事を。」


「ええ、神聖エルミランド帝国を代表する民話収集家にダシモウロと言う名の姉妹がいました。姉のエイヒナと妹のエンヨはエルミランドの民間伝承や古い文学を研究する学者姉妹でした。彼女たちはエルミランドを旅しながら多くの昔話、民間伝承を収集研究し記録に残しました。妹のエンヨは絵も嗜まれる方で、収集した文献に多くの挿絵を描きました。すると、資料的価値のみならず、示唆に富み、時に残酷なまでに現実的、時にお菓子のように甘い話しが、今に至るまで大人から子供までに愛されるダシモウロ昔話集として、また、各国で民間伝承や昔話を研究するきっかけとして広く知られることになったのでした。ダシモウロ姉妹が民話収集のために旅したと言われるのが民話街道です。マーミュルはダシモウロ昔話集の中の、泥棒とリザードと言う話の由来地だと言われてます。」


「それなら我も知っているぞ!貧しいリザードの家に泥棒が入るのだがあまりの貧しさに泥棒は逆にお金を置いて帰るって話だろ?。」


 降りて来たシエンちゃんが言う。


「そうです。感謝したリザードはいつか必ずお返ししますと泥棒に言うのです。泥棒は返さなくていい、第一この家を出たらもうどの家だったかも分からなくなる。もう会う事もないだろう、と言います。リザードは屋根の色を赤く塗るからそれを目印に必ずまた来てくれと泥棒に言うのです。泥棒はわかったと言って出ていきます。しばらくして、泥棒はまた盗みを働こうと家を物色していると赤く塗られた屋根の家を見つけるのです。それは、あのリザードの家でした。本当に赤く塗られた屋根を見て泥棒は涙を流し、それ以降盗みを働くことはなかった。と言うお話です。」


「いい話じゃんよー。」


「トモトモもそう思いますか?わたしも好きなお話なんですよ。マーミュルの建物の屋根が赤い色に塗られたものが多いのは、この話の発祥地だからなんですよ。」


「なるほど!いや、どうりで可愛らしい街並みだと思ったよ。」


「いやー、お待たせしました!話はつきましたので大丈夫です。では、また明日の朝、お迎えに上がります。お疲れ様でした。」


 みんなが降りたことを確認すると、御者さんは挨拶をして去っていった。

 俺たちは宿のカウンターに行くと、お部屋の用意ができてますのでどうぞ、と案内される。

 またもや各自個室が用意されてます。

 更に部屋の中も昔話風な可愛らしい作りで、観光地としての一貫性を感じるね。

 俺たちはマミュールの可愛らしい街を軽くぶらつき、宿で可愛らしい夕食を食べ、各自可愛らしい部屋で可愛らしく休むことにしたのだった。

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