認め合うって素敵やん
ムグリの案内で下水道を出て港湾地区に戻り、食堂へ行く。
「へへへ、ここはなにしろ量が多くていいんだよ。俺も育ち盛りだからよ。味も中々悪くないんだぜ。みんな俺のオススメでいいか?」
「俺はいいよ。」
「あたしも構わん。」
「ええ、お願いします。」
「我も良いぞ、足りなかったらまた注文するしな。」
「さすがに足りねーってこたーねーと思うぜ。おーーい!注文頼むわー!。」
ムグリはでっかい声で店の人を呼ぶ。
「はいはーい!あら、ムグリちゃん!いつもの?。」
呼ばれてやって来たのはヒクイドリみたいな顔した女性だった。
「いや、懐があったかい時に頼むやつ、あれを人数分頼むよ。あと、飲み物は、俺はアイスアップルティー、みんなは何がいい?各自メニュー見て頼んでくれよ。」
ムグリに言われてみんなメニューを見る。
俺はアイスダークティーってのにしてみた。ダークって何ぞや?
注文を受けた鳥顔お姉さんは、まいどー、と軽い感じで言うと厨房のほうへ向かって行った。
「ところでよ、あんちゃん達はどっから来たんだい?。」
「レインザー王国だよ。」
俺は答えた。
「へー、レインザーかー。いい所かい?。」
「ええ、いい所ですよ。いつか機会があればいらして下さいな。」
アルスちゃんが答える。
「いやあ、俺なんかそんな身分じゃねーよ。でも、あんたらみてーな人らが住んでるんなら、いい所なんだろうな。おっ!注文の品が来ましたよっと!。」
運ばれてきたのは海の幸の揚げ物だな、これは。フライの盛り合わせに、野菜サラダ、それにライスだ!ありがたいですねー。
しかし、フライのデカい事!確かにこれはボリュームあるぞ!しかも、フライに付けてくれと一緒に運ばれてきたボールには色々なタレが入っており、そのうちの一つになんと!タルタルソースっぽいモノを発見!!
やったぜ!こいつがあれば、いくらでも食えるってなもんだ!
「どうだい!食いごたえありそうだろ!。」
ムグリが誇らしげに言う。
「これはいいな!やるじゃないかムグリ!いっただっきまーす!。」
シエンちゃんが凄い勢いで食べ始めた。
「美味い!ガツガツムシャムシャ!いやー!このタレッ!ムシャムシャ!最高ッ最高ッ最高ッ!!。」
どうやらシエンちゃんも相当タルタルを気に入ったようだ。
俺も腹が減ったところだし、よーし!食うぞーー!
最初っから海老いっちゃうもんね!勿論、タルタルぶっかけで!
太い海老だぜ!
「うひょー!うんめーー!。」
「これ貝柱ですよね?とってもジューシーですよ!。」
「きひひ、こりゃ美味いな!。」
アルスちゃんもキーケちゃんも満足のようだ。
「あんちゃん達よー、レインザーから遠路はるばるあの耳長を追っかけて来たのかい?ご苦労なこったなあ。」
「いや、別にそいつを追いかけて来たわけじゃないんだよ。レインザーでも似たようなことがあってさ。」
俺はムグリに発見者について、俺がかかわった事件やその顛末について話して聞かせた。
「マジかよ。なんだよそれ。そんなもんがこの国に入ってきてんのかよ。実践会ってそんなヤベーやつなのかよ。」
ムグリが血相を変える。
「いや、まあ、まだ発見者みたいになるかどうかはわからないよ。だけど、その耳長族の男みたいな怪しい奴に組織運営させてたら良い事にはならないよ。そうした奴らは他所の国の勢力で、本当の目的は国内の金を流失させる事、そして信者を増やすことで国民の中に国家への不信や不満の種をまくことではないかと俺は思っている。直接的ではないけど、国への攻撃ではないかと考えているんだよ。」
「そこまで考えておったのかトモは。」
「ああ、俺はそう思う。隣国からのちょっかいの件、キーケちゃんと出会うきっかけにもなったあれね。あれも、国への攻撃だよね。手段としては間接的に過ぎるけど、災害を誘発させたり優秀な人物の反国家的思想を煽って引き抜いたり。」
「まあ、優秀かどうかは微妙だったがな。」
「ははは、シエンちゃんにかかってはそうだろうけど、少なくとも国としては警戒するレベルだったからこそ、特別依頼だったわけだしね。」
「もしかしたら、わたしたちのところまでは情報が下りてないだけで、上の方々は攻撃を仕掛けている国についてもう少し詳しくわかっているのかも知れませんね。」
「おそらくは、そうだろう。あいつらも無能ではない。友好国からの情報もあろうしな。」
「ちょっと待ってくれよ、あんちゃん達。随分と話がデカくなってきてるけどよ、大丈夫かよ?そんなヤベー奴らが相手でよう。そこらの愚連隊や犯罪組織とは訳がちげーぞ。俺もヤバい橋は幾らも渡ったけどよ、こんなのは初めてだぜ。」
「大丈夫ですよ。ムグリの事はわたしが守りますから。」
「え?いや、姉ちゃんこそ気を付けろよ、何かあったら自分の安全を考えろよな。」
「偉い!偉いぞムグリ!お前はなかなか見込みのある男だ!だがな、心配には及ばないぞ。我らはな、強いぞ。アルスも勿論強いしな。だから大丈夫だ。勿論、ムグリの事も我らが守るからな。」
「本当かよ?まあこんな依頼を受けるって事は、それなりの実力なんだろうけどな。まあ、俺だって逃げ足にゃあちょっと自信があるからよ、あんちゃん達の邪魔にはならないようにするからよ。」
今、ニャアって言ったよな?言ったよな?
「きひひひ、あたしたちは仕事仲間。仲間に遠慮は無用だ。危険がせまったら遠慮なく後ろに回るがよい。戦うのはあたしらの得意分野だ。」
「おばちゃんも強いのかい?。」
ムグリは心配そうにキーケちゃんに聞く。
「きひひひ、心配してくれるのか?ありがとうな、ムグリ。」
「大丈夫だぞ、我らの中でもキーケちゃんが一番強いからな。おーーい!これ!同じのお代わり頼むっ!。」
「噓だろ、マジかよ、お代わりしやがった。これ、力仕事やってる奴ら向けの極盛りだぞ。ちょっと、俺もあんちゃん達のことなめてたみてーだな。反省するぜ。見かけで判断しちゃいけねーな。」
「いやー、うちの仲間は特別だと思うけどねえ。」
「まったく、あんちゃんは普通なのにな。」
「キャハハハハハハ!トモちゃんが一番面白いわ!。」
「そうですねえ、トモトモが一番変わってますね。」
「きひひ、まあ、そうだの、トモは普通じゃないな。」
「勘弁してよー。俺が異常者みたいじゃないか!。」
「アッハッハッハ!あんちゃん、苦労してそうだなあ!頑張れよ!。」
ムグリに励まされてしまった。
シエンちゃんの追加注文も届き、あっという間に平らげて満足顔だった。
食後にお茶なんて飲んで、そろそろいい時間だろうとムグリが席を立つので、俺は店員にカードは使えるか聞くとカードは使えないが他国のお金は使えるというので、レインで会計を済ませた。さすがは港町だぜ。
「ムグリはその耳長族の男の人相がわかるのかい?。」
店を出て俺は聞いてみた。
「ああ、一度見た事あるからな。一度見た顔は忘れない、俺の特技さ。あと、ごっそさんね。」
「いいってことよ。しかし、どんな男なんだい?そいつは。」
「色が浅黒くて右目の上に傷のある、目つきの鋭い奴だった。身長はあんちゃんより少し高い感じ、瘦せていたよ。俺が見たのは実践会の演説集会でだったんだけど、演説会場の後ろにいて色々と指示を出して偉そうにしてたよ。」
「色の浅黒い耳長族で右目の上に傷だと?フーム。そいつはもしかすると、傭兵かも知れんな。」
「知っているのか、キーケちゃん!。」
「いや、そいつを知っているわけではないがな。以前に戦場で、南方の耳長族によって組織された傭兵団とぶつかった事があった。透き通るような白色の肌が特徴の耳長族の中でもそいつらは異質でな。褐色の肌色は夜戦では大きな優位性を発揮し、黒い死と恐れられておった。あたしも幾度が相まみえたが、撤退の見切りが異常に早くてな、仕留められなんだ。決まった主人を持たぬことで知られておったがの。」
「そうかそうか、楽しませてくれそうじゃないか。我にやらせてくれよな、いいだろ?。」
「シエンがやるのか?殺すなよ?。」
「わかっとるわかっとる、まかせなさい!くふ、くふふふ。おばちゃんと言われた鬱憤を晴らしてやるぞ!くふふふふ。」
シエンちゃんが怖い顔で笑ってるよ。
「おっかねー!もう二度と言わねー!。」
それを見てムグリが怯えてる。
「くふふ、安心せい。我は仲間には優しいのよ、オホホホ!。」
「なんか、もっとこえーよっ!その笑い声が怖い!。」
更に怯えるムグリをよそにシエンちゃんはご機嫌に妙な歌詞の歌をうたってる。
「なーがいおーみみをふん縛りー、頭っかーらー丸かじりーー!。」
物騒な事この上なし。
「シエンさんたら、最近暴れ足りないとこぼしてましたからねえ。本当に嬉しそうなこと。うふふふ。」
「まったくシエンにも困ったものよ。あれではあたしみたいな淑女への道はまだまだ遠いな。」
「あんちゃん、凄いパーティーだな。俺は恐ろしくなってきたよ。」
耳がパタンと寝てしまったムグリが言う。
「個性的な仲間たちでしょ?そこが魅力なのさ。」
「やっぱ、あんちゃんも普通じゃねーな。ふー、ほら、ここさ。」
どうやら到着したようだ。
ヒッポターマスと大きく看板に書かれたここは、どうやら酒場のようでまるで西部劇に出てきそうな両開きのドアの奥からは、愉快な音楽と喧騒が聞こえてくる。
「ちょっとばかり柄が悪い店だけど、騒ぎを起こさないでくれよ。」
ムグリが言う。
「おう!任せとけ!。」
一番任せられないシエンちゃんが胸を張って答える。
「姐さんが一番心配だぜ。」
そう言いながら店内に入るムグリに我々も続く。
店内は結構広く、ステージもありそこでは生バンドがカントリーミュージックのような民族音楽のようなものを流している。賑やかでいい感じだ。
「こっちだぜ。」
慣れた感じでズイズイ進むムグリ。
「ここがいい。あんちゃん達も座りな。」
ムグリが選んだのは端っこも端っこの席。
大きな円形のテーブルに間隔を開けてイスが5つ置いてある。
すっと手を挙げて店員を呼んだムグリはエールを5つ注文する。
すぐに持ってこられたエールを前にムグリは言う。
「飲んでもいいけど、仕事に障らない程度にな。」
マジでムグリはおっさんか?俺みたいに中身の年齢おっさんなのか?
丸テーブルに置かれたエールは木製ジョッキなもんで、手を付けてなくても周囲に残りが見えない。
シエンちゃんとアルスちゃんは元々飲まないけど、俺とキーケちゃんも手をつけないでいる。
「まあ、誰も俺たちの事なんか気にしちゃいねーけど念のためだ、楽しんでるフリをしてくれよな。」
笑顔でジョッキを上げてムグリが言う。
「お前はホントに大した奴だ。食い物頼んでもいいか?。」
シエンちゃんが言う。
「うひゃ!まだ食えるのかよ!姐さんのが大したものだよ!食えるなら頼みなよ。」
ムグリが目を丸くして言う。
シエンちゃんが店員を呼んで色々と注文している。
「しかし、こんなに人が沢山いてわかるのかい?。」
「ああ、わかる。入口はひとつだからな。俺はここに来てから一度も入口から目を離しちゃいないからな。まあ、任せとけって。」
くぅーー、頼りになるぅーー!顎の下撫でてゴロゴロ言わせてーー!
「お待ちどう様。」
店員さんが肉の盛り合わせを持ってきてテーブルに皿を置く。
テーブルの上がいっきに賑やかになる。
「姐さんの食欲どうなってんだよ?。」
ムグリが呟いた。
「キャッホ!きたきた!いただきまーす!。」
シエンちゃんは今日も通常運転だ。




