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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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情報を共有しすり合わせるって素敵やん

 俺たちはカティス波打ち際衛兵分所で現在の状況について話し合った。大きな動きとしてはトーカ辺境伯とエンジー司教に対する監視の強化がある。それに付随した話としてトーカ辺境伯の屋敷に良く姿を現し、ジャーグル王国絡みの人間とコンタクトを取り、帝国内での案内人をしているらしき人物として名前が挙がったのがご存知ナシトダ子爵であった。

 ナシトダ子爵と言えば、ランラート男爵襲撃犯の後ろ盾であった大バッグゼット帝国中央覇道連合研究所とか言う長ったらしい名前の団体のトップであり、妙な商会を立ち上げ怪しい投資話をあちこちに持ち込んでいるとの事だが、それもどうやらジャーグル王国絡みではないかと言うのだ。


「どういう事です?」


 ハルハが話してくれたミューメさんに質問する。


「妙な投資話や商売のやり方を有償で教える会など、ナシトダ子爵と彼の団体が主導で動いている幾つかの怪しい経済活動のノウハウは、ジャーグル王国から持ち込まれた可能性が高いんです。更にそれで得られたお金はナシトダ子爵が顧問をしている団体を通してジャーグル王国から帝国内に入った人間たちへ流れている痕跡が見られました。具体的には例の魔神降臨派などですね。それ以外にも帝国内の反帝国主義者を煽る目的で動いている集団もあるようです」


 俺はその話を聞いてストーンキッズやジョサイエフの影を感じてしまう。クランケルは微妙な表情をしている、もしかしたら帝国レジストのやつらのことを思い起こしているのかも知れない。


「ジャーグル王国はスワン公園の惨劇以来、我が帝国を仮想敵国と見ているのはいわば公然の秘密と言う奴なのだが、ここへ来て一気に加速した感があるね。なにか原因があるのかもしれない、我々も気にしてみるが君達はなにか感じている事はないかい?」


 ライバー分所長が俺たちに尋ねる。治安維持の専門家が俺たちアマチュアの学生に何の衒いもなく聞けるってな、この人の度量の大きさを示してるね。俺は益々好感を持つ。


「ナシトダ子爵の名前が出るとやはり学園の話しになりますよね。何と言ってもナシトダ子爵は我が学園の理事ですから」


 ハルハが言う。


「まあ、理事と言っても滅多に学園には顔を出さないけどね。俺なんて一度も顔を見た事ないもん」


 とメイエス。


「まあ、その辺は置いとくとしても、やっぱり最近の学園の妙な話と言えば謎の英雄譚ですよね」



「ああ、ハルハも気にしてたか。最近、新作が掲示されなくなったけど、そのへんの事はクルっさんが詳しいっしょ?」


「ああ、気になって色々と調べて見たからな」


「ほう?英雄譚ねえ。是非教えて欲しいなあ」


 ライバー分所長が前のめりになる。こういうの好きそうね。俺は英雄譚の内容をかいつまんで聞かせる。主人公の少年少女は野生動物の謎の失踪、学園内に蔓延する暴力事件の影に見える謎の行商人が販売する成績が上がる飴、そして謎の怪文書といった事件に巻き込まれて行く。怪文書の内容は終末論で世界の終りの兆候として野生動物の失踪や人心の荒廃といった主人公たちが実際に見て来た事から、天災、飢饉、流行り病の蔓延、そして人々がふたつの勢力に分かれて戦争を始めるといったものだった。その戦争は非常に大きいものですべての人間を巻き込むレベルだと言う。その怪文書は学園の子供のみならず、大人も巻き込んで動揺は広がる。

 主人公は怪文書の差出人を探すが、その途中に発生した地震による崖崩れに巻き込まれて生死の境をさまようことになるのだが、謎の老人によって助けられその老人からふたりには大きな使命がありその使命を果たすために大きな力が覚醒したと告げられる。少年と少女は覚醒した大きな力を使って大きな使命、つまり世界を救うために立ち上がるのだった。


「と、そんな内容でしてね」


「うーむ、非常に興味深いね。かなり現実とリンクしているように見えるが、これはその英雄譚を書いている人物、もしくはその人物が所属する組織が起こしている可能性が高いように思えるね。その人物が所属する勢力とは今回の事件の背後にいる組織と同一と考えるのは早計だろうか?どう思う?」


 ライバー分所長がまたもや我々に問う。


「確かに言われて見れば成績が上がる飴ってボナコンの事っぽいっすね。最近、やたらと物騒なのも物語中で蔓延する暴力ってのと繋がりそうだし。すると、天災、飢饉、流行り病なんかも起こそうっての?流行り病ってのはなんとか人為的にできなくもないかもしれないけど、天災、飢饉なんて起こせるのかな?その後の世界を二分する戦争なんて、さすがに無理っしょ?」


 メイエスが肩をすくめて言う。


「確かにメイエスの言う通りだけど、実はさ俺、こういうやり方って知っててね。実際に全部を起こすことは無いんだよ」


「どういう事です?」


 ライバー分所長が俺の言葉に興味深そうに食いつく。さて、俺が前世界で散々悩まされた団体、こちらの世界に来ても何かとチラつく団体のやり口を説明させて頂きましょうか。


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