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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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豪華な船って素敵やん

 部屋でくつろいでいると、シエンちゃんたちが尋ねて来た。


「出航するそうだ、外へ出て見てみようではないか!。」


 なんだかシエンちゃんはワクワクしているように見える。


「ああ、見よう見よう!。」


 俺もワクワクしてきた。

 部屋を出てデッキまで歩く。


「トモは船旅は初めてではないだろ?。」


「うん、王都から乗った時あるよ。」


「魔導機船はどうだ?。」


「これは初めてだねえ。どんななのか楽しみだよ。」


「そうかそうか。ちょっと、面白いぞ。」


 キーケちゃんがにやりと笑って言う。


「おやー、なんだか怪しい言い方しますなあ。もしかして、おっかなかったりする?ガタガタ揺れたり。」


「いや、そんなことはない。だが、船首の方で見たほうが面白い。」


「よし!船首の方へ行こう!。」


 意味ありげなキーケちゃんの言葉が気になるが、元気の良いシエンちゃんの言葉に押されて俺たちは船首へと行く。

 船首付近には何人かの人たちがおり、我々同様に進む魔導機船の様子を見ようというもくろみのようだった。


「ガランガランガラーン!。」


 大きな鐘の音がする。


「はい、出航しまーす。」


 船員さんが大きな声で言い、タラップを外している。

 船はトットットットット、と静かな音を立ててゆっくりと港から離れていく。

 トットットットット。

 のんびりとした音を立て、港から出る魔導機船。

 沖に出て周りに船もいなくなる。


「はい、速度を出しまーす!ご注意ください!速度を出しまーす!ご注意ください!。」


 あちらこちらで船員さんたちが声を上げている。

 少しすると、キーーーンと甲高い回転音が聞こえてくる。


「よく見ておれよ。」


 キーケちゃんが言うので、俺はワクワクしながら進行方向を見ていた。

 回転音は益々高い音になり、船は速度を上げる。

 船首が上げる水しぶきは、前方を魔法のシールドが覆っているのかこちらまで飛んでこない。


「おおっーー。」


 船首に集まってる人たちがどよめく。

 速度が上がるにつれて、船が浮いているのだ。

 すでに陸は、はるか遠くにうっすら見えるだけになっており、対象物が近くにないしシールドに覆われ風も感じず、振動もないのでイマイチ速度が分かりづらいが、完全に船が浮いているわけではないのか上がっている水しぶきを見るに、結構な速度が出ているのだろうと推測される。

 しかし、この水を切って進むさまは壮観だが俺はこれのもっと凄い奴を最近経験している。


「どうしたトモ、なにか考えてる顔をしているな。」


「いや、この光景、これのもっと凄い奴、最近見たなと思ってさ。」


「なんだ、やはり魔導機船に乗っておったのか?」


「いや、違うよ。ね?シエンちゃん?。」


「おう、わかったか?トモちゃん。我はこれを真似たのよ!。」


 シエンちゃんが意気揚々と言う。


「なんの話しですの?。」


 アルスちゃんが尋ねる。


「いやさ、シエンちゃんに出会った時にね、その島からレインザー王国までシエンちゃんに送ってもらったのよ。その時にね、シエンちゃんがさ、海ギリギリの所を凄い速度で飛ぶとさ、海の水が割れたように左右に飛び散って、そりゃあ凄い光景だったんよ。速度も凄くてね。」


「あら、それは凄い経験をされましたねえ。何と言っても天空の覇者と誉れ高い赤龍さんの、それも族長さんの娘さんの背に乗れるなんて。」


「クフフフフ。アルスに言われるとくすぐったいなあ。とにかく、この水を切って進むさまはカッコよかろう!な!お日様の当たる角度によっては、とてもきれいなのだぞ!。」


 シエンちゃんは、エヘンとばかりに胸を張って誇らしげだ。まったく、こういう所は可愛らしいよな。


「いやー、面白かったな!よし!ご飯にしよう!。」


「きひひひ、やはりシエンはそうでないとな。」


 キーケちゃんが笑う。


「よし!飯を食うか!なんせ今回の依頼は、あごあしまくら付きだからね!。」


「トモトモ?何ですかそれは?。」


「前世界でさ、食事代、移動代、宿泊費が出る事をこう言ったんだよ。まあ、若い人はあまり使わない言葉かもしれないけど。」


「うふふ、お食事が顎、移動代が足、宿泊費が枕ですか。なんだか可愛らしい言い方ですねえ。」


 アルスちゃんが笑顔で言う。

 可愛らしいかあ。そんな風に思ったことはなかったなあ。どちらかと言えば、オッサン臭い表現だと思ってたけど、そっかあ、そんな見方もあるか。


「早く顎しに行こう!。」


 シエンちゃんが言う。

 顎しにって。まあ、腹も減ったし食堂に行こう。

 俺たちは食堂へと移動する。

 食堂室と書かれた重厚なトビラを開けて中に入ると、絨毯敷きの床、明るい色の丸テーブルに涼しげな籐椅子、観葉植物なんかも置かれた洒落た食堂に、給仕係なのかビシッとした制服を着た人達がキビキビと動いている。真ん中がキッチンになっているようで、テーブルのレイアウトもキッチンを中心にした円形になっていた。

 給仕係の男性がひとり、素早くこちらへ来て我々の名前を尋ねるので、冒険者カードを提示して答えるとテキパキと席に案内してくれる。

 料理はコースでこれからお持ちしますが、追加があればいつでもお申し付けくださいという事で、飲み物のオーダーを取ってスッと去っていった。リゾート地のレストランって感じ!

 しばらくすると給仕係さんが飲み物を持って来てくれたので、みんなで飲みながら話をする。


「しかし、快適だねえ。全然船も揺れないし。」


「よっぽどの嵐か、海生魔獣の襲撃にでも遭わない限りそう揺れぬよ。高級宿にいるのと変わらぬ。」


 キーケちゃんが言う。


「いやー、でも前に話したでしょ。俺、一回遭難してるからね。」


「きひひ、それはお主が船員を助けたからであろうよ。この船は大丈夫だ。」


「キーケちゃんがそこまで言うなら大丈夫なんだろうけど、しかし、海生魔獣ってどんなのがいるの?。」


「そりゃ、いろんなのがいるぞ。ジャイアントテンタクルだのシーサーペントだのメガロドンだの、まあデカいのが多いな。」


「うひゃー、おっかないねー。」


 なんて話していると食事が運ばれてくる。

 食事を食べながら、俺たちは話を続けた。


「まあ、海の奴らは飛べない奴が多いからな、空中戦でいけばチョロイもんだぞ!。」


 シエンちゃんが言う。


「それに、超大型の魔獣は小さい者をあまり襲わないモノですからね。捕食対象として非効率的だからではないか、と言われていますね。実際、わたしも小舟で海を渡った事が何度かありますけど、ジャイアントテンタクルやシーサーペントクラスのものに襲われた事はなかったですね。彼ら同士の争いに遭遇した事は何度かありましたけど。襲ってきたのは小物が多かったですね。」


「うわーアルスちゃーん。やっぱいるんじゃん、襲ってくるやつー!。」


「トモちゃんが警戒しなきゃいけないような相手はそういなかろう。アーミーアントみたいに大群で来られると鬱陶しいがな。しかも、飛ぶやつで大群となると近寄らん方がいいな。」


「あら、シエンさんもあれは苦手でしたか。わたしも、あれは嫌でしたねえ、何しろ数が多いんですもの。」


「あれか、あたしも何度か遭遇したことがあるが、あれは面倒くさいな。食べても美味くないしな。」


 シエンちゃんの言葉にアルスちゃんとキーケちゃんが続ける。あれって何よー?


「あれって何?。」


 俺は正直に聞いてみた。


「フライングアーミーフィッシュですよ。大きさはそれほどでもないんですけどね、群れで移動する習性があるんですよ。」


「大群になると大型魔獣も襲うからな、あれは。しかも、そこそこ飛ぶんだよあれは。我もからかってやろうとしてあちこち食いつかれた事があるからな。」


「まあ、海のジャイアントアーミーアントみたいなもんだ。」


「どうもみんなの話を聞く限りじゃ、相当めんどくさそうな相手だねえ。天敵とかいないのかね。」


「やはり、数の多さばかりはな。それなりの数の天敵がいないとな。まあ、あれも、回遊してるうちにそれなりの数の天敵にどんどん数を削られてしまうんだけどな。案外、強さってのはそういうものなのかも知れないな。」


 キーケちゃんが言う。


「なんか、それ、我もわかるような気がするぞ!結局、常時最強なんてのはないんじゃないかって。最近、そう思うようになったのだ。」


「シエンちゃんは前も言ってたよね。自分より強い者がいるって思うと愉快だって。」


「そうなんだけどな、この間、魔法を封じて戦ったりしたろう?その状況なら、我も父上と良い勝負ができるかも知れぬ、などと思ってな。そうすると、今まで勝ってきた相手も違う状況では、我より強い奴が居たのかも知れぬ、なんてことも思っていてな。そうなると、もうな。なんて言うのか、強いってのは何なんだ、なんて思ったりもしてなあ。」


「キヒヒヒ、シエンよ。それは、お前、達人の領域に入りかけておるぞ。それはな、我ら人族が強さを求め続け、研鑽を積み、毎日毎日、そうした事ばかり考えてな、何度も何度も敗北を潜り抜け、それでも強さを求める事を諦めずに長い年月を経ると、そうした領域にたどり着く場合がある。その先も、勿論あるのだが、そこへ行くには必ず、その場所は通るものだ。あたしも通った。だがな、それは人族のように、元々弱い種族だからこそ通ることのできる道なのだ。そして、その弱さこそが、更なる強さへのトビラを開ける鍵なのだ。それを、お前のような強力な種族が手にしたのではたまったものではないぞ。」


「そんなものかね?我には良くわからぬのだが。キーケちゃんが言うのならば、そうなのかね。キーケちゃんに稽古つけてもらってるだろ?あれもな、強くなるためってよりも、楽しくなってきていてなー。どうしたことなのか、本当にトモちゃんと出会ってから、色々な事が起きて退屈しないよ。」


「わたしも、それは同じ気持ちですね。トモトモと一緒だと本当に退屈しませんからね。」


「きひひひ、それはな、お前ら自身の存在も大きいはずだぞ、なあ、トモよ。」


「そうだねえ、俺もみんなに出会えたから今があると思ってるよ。俺自身もみんなから色々な影響を受けてるからね。」


「ああ、なんか、そうだな。影響な。それは、凄くあるぞ。事務所のみんなもそうだ。一緒にいると色々と考えちゃうんだよな。そんな物の見方があったのか、とかな。我もそうした見方をしていることがある。」


「うふふふ、シエンさん。それは、ごく普通の事なのですよ。」


「そうなのか?そうか。今までそんな事は無かったからなあ。」


「面白いですよね。」


「面白いなあ。」


「きひひ、トモよ、もう一杯頼まぬか?。」


「頼みますか!。」


 俺は手を挙げて飲み物を注文する。

 食事をしながら、気の合う仲間たちと語り合う。

 楽しいね。こういうの。

 上々の船旅初日はこうして過ぎていくのだった。

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