船旅って素敵やん
俺たちはイオアネス司祭から、更に詳しい話を聞く事にした。
神聖エルミランド帝国へはマズヌル港から魔導機船で一週間ほどの距離だと言う。
魔導機船とは何ぞや?
尋ねてみると、魔力を蓄積できる高価な特殊金属を用いそれを動力として推進する船だそうで、かなりの速度が出るのだと言う。
乗り心地が心配になるけど、どうも外国の貴賓なども利用するそうなので大丈夫なのだろう。
船の中には食堂や売店もあると言うので道中の心配もないようだ。
船の行き先は神聖エルミランド帝国最大の港町、バトマデルーイ。
バトマデルーイに着いたら港近くの教会を訪ねて欲しい、そこで更に詳しい話を聞くことが出来るという事だった。
用意ができたら、またいらして下さい、と言うので俺たちはひとまず事務所に戻る事にした。
「さて、トモよ。どう見る?。」
キーケちゃんが言う。
「どう見ると言われてもな、こっちに来てから国外に出るのは初めてだしな。」
「我のところに来ただろう。」
「あー、シエンちゃんと会った島か、あの島はどこかの国の領土なの?。」
「いや、どこの国のものでもない。」
「ふーむ。じゃあ、初めてじゃないとして、魔族と会うのは初めてだよね、俺。もしかして、身近にいらっしゃたりする?。」
「きひひひひ、トモの所に厄介になってからは会話をしたことはないな。だが、オッドウェイですれ違う事はあったがな、気づかなんだか?。」
キーケちゃんに言われてビックリする。
「いや、全然気付かなかった!そうなんだ!。」
「トモよ、お主は他者に関心があるのかないのか、よくわからんのう。まあ、だが、心配することはあるまいよ。」
「そう?。」
「ああ、お主のパーティーを見てみい。」
「シエンちゃんとアルスちゃんの事?いや、2人とも俺よりしっかりしてるもの。」
「きひひひひ、だから心配ないと言っておる。お主にとっては種族より内面が重要なのだろう。それで良い。」
「そっか、そうだね。確かにそうだった。キーケちゃんの言う通りだ。」
「そうよ、そんな心配よりお子達の心配をした方が良いぞ。」
「いやあ、あの子たちこそしっかりしてるもの。それも、最近特にみんな、お兄さんお姉さんになってきたよ。商売も上向きだし、心配ないよ。」
「寂しがる、と言っておるのだよ。」
「あ!そうかー、長く家を空ける事になるからなー。王都に行った時でも一週間位だったからなあ。今回はその倍以上は帰って来れないもんな。」
アルスちゃんとシエンちゃんを見ると、2人ともうなづいていた。
それから、事務所に戻ってみんなに、次の依頼場所が外国で長く留守にしてしまう事を説明した。
しばしの沈黙の後、ケインがイスから立ち上がった。
「わかった!トモさん達が心配なくお仕事出来るように、俺たちも頑張るよ!な!みんな!。」
「うん!寂しいけど、事務所の事はまかせてよ!。」
「だから、寂しいとか言うなって、シン!それじゃ安心して行けないだろ!。」
「あ!そうだった。ゴメン、カイル。」
「笑顔で見送ろうよ!。」
「そうだ、そうだ!。」
ケインの言葉にみな笑顔で答えてくれる。
本当にみんな、大きくなったよ。
荷物をまとめるったって、たいしていつもと変わらない。必要なものは現地でも買えるってんで、まあ、本当に海外旅行って感じだな。なんせ、あちらでもカード決済ができるみたいだしね。
この間、キーケちゃんが俺たちと同じウェストバッグを買ってきたものだから、アルスちゃんとシエンちゃん同様に補強してあげたのだが、今回はそれを持って行くようで俺たち4人は肩からウェストバッグをたすき掛けしたお揃いファッションで出発する事となった。
教会に戻り、準備ができた旨を伝えると、では、マズヌル港行きの馬車を用意しますと言われ、待つこと少々、用意された馬車に揺られてマズヌル港につくと、大型船が並ぶ場所で馬車を下ろされる。
降りるとすぐに上下青い服の男が近寄って来て、クルース様御一行ですね?と尋ねられるので冒険者カードを見せる。
お待ちしておりました、こちらへどうぞ、と促され大きな船へと案内される。
外見は他の大型船とさほど変わらない。
ただ、他の船と比べるとマストが低く、船室も低い。速度が出る事を考えると、その方が良いのだろうけど。
案内人の男性に従って、船から出ているタラップを登り船の中へ行く。デッキを歩いて船室に入り操舵室へ案内される。
「船長、お連れしました。」
声をかける案内の人に続いて、室内に入ると船前方の風景が良く見えるこれぞ操舵室といった部屋に居て俺たちを出迎えてくれたのは、白い制服に白い帽子、髭を生やしたこれぞ船長といった風の身体のがっちりした初老の男性だった。
「ようこそ、魔導機船ピュートーン号へ、船長のゾルギスです。」
そう言って握手を求められた、流石は海の男!
「クルースです、よろしくお願いします。」
俺は答えて握手する。
肉厚な手でガッシリとした握手だ、流石は海の男!
「お噂は聞いてますよ、さすが一流の冒険者ですな。私の握手に顔色一つ変えぬとは。」
ガッシリとした握手なわけだよ、握力勝負を挑んできていたのか、気づかなくてゴメン海の男。
「いやいや、ゾルキス船長も中々おやりになられる。」
「いやあ、はっはっはっはっは!年寄りの扱い方も心得ていらっしゃる!気に入りましたぞ。不自由な事があったら何時でも来て下さい。優先的に対処させましょう。」
「いや、普通の乗客と同じで大丈夫ですよ。それに、こんなに立派な船では、なに不自由ない旅が出来そうですし。」
「嬉しいことを言って下さる!益々もって気に入りましたぞ!本当に何かあれば遠慮せずに。私はこの部屋に常駐しておりますので。」
「ありがとうございます。お心遣い感謝いたします。」
「いえいえ。ボースン!。」
「はい!。」
ボースンと言うのか、ここまで案内してくれた青服の男性が部屋に入ってきて、ビシッと足をそろえる。
「客人をお部屋まで案内して差し上げなさい。」
「はい!。それでは、皆さま、お部屋までご案内差し上げます。」
ピシッと背筋の伸びた挨拶だ。
そうして、俺たちは部屋へと案内された。
なんと、各人個室を取ってもらえたようだった。豪勢だなあ。
部屋にはベッドにテーブル、イス、なんとバーカウンターまで設置されとる!おいおい!セレブな船旅になりそうだぞ、これは。




