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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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海外って素敵やん

 俺たちはノダハの教会にやってきた。


「そういえば、ノダハの教会に来るのは初めてだ。」


「あら、トモトモそうなんですか?。」


「そうなんよ、丘の上教会は行ったことあるんだけどね。」


「あちらは、ノダハの街が一望出来ますからね。でも市街にあるこちらの方が街の皆さんにとっては身近な教会なんですよ。」


 アルスちゃんが教えてくれる。


「そっかあ、国教だもんな、やはり信者数も多いだろうしね。」


「そうですね、熱心かそうでもないかの違いはありますけど、王国民全員が信者と言っても言い過ぎではないですからね。勿論、伝統的な分派はありますから、同じモミバトス教と名乗っていても微妙な違いはあったりしますけどね。」


「ほー。丘の上と、ここも?。」


「はい、微妙に違いますよ。本当に微妙に、ですけどね。内弟子の中で誰を重要視するか、とか、後世で名を残している指導的立場の信者が何人かいるのですが、そうした人の内、誰を重要視するかでも違います。」


「さあ、中に入ろう。」


 シエンちゃんに言われて俺たちは教会の中へ足を踏み入れた。

 中に入ると、シスターと言うのか修道女と言うのか、頭に布をかぶった女性が近づいてきて、ようこそいらっしゃいました、どうぞお入りください、と席に誘導してくれるので俺は自己紹介をしてイオアネス司祭にお会いしたい旨を伝える。

 お座りになって少々お待ちくださいと言われて、席に座って待つ。

 幾らも待たないうちに奥の扉から祭服を着た男性がこちらへ向かって歩いてくる。

 シンプルな立襟の黒コートのような服はいかにも司祭といった感じだ。


「クルース様ですね、お待ちしておりました。イオアネスです、よろしくお願いいたします。奥に執務室がありますので、そちらまでどうぞ。」


「どうも、クルースです。」


 俺は返事をして司祭について行く。奥の扉を開けて中に入る司祭に続いて我々も部屋に入り、司祭に促されてイスに座る。


「御足労頂きありがとうございます。発見者の件では感謝いたしております。」


「いえいえ、首座司教にも申し上げました通り自分の職務をまっとうしただけですので。」


「恐れ入ります。さて、本日お越しいただいたのはランツェスター首座司教からの依頼になります。これは、冒険者ギルドや王国を通したものではなく、モミバトス教会からの依頼になります。」


「そこに何か違いはあるのですか?。」


 俺は司祭に聞いてみた。


「はい、協力を得られる関係先が違ってきます。今回の依頼においてはその活動場所がレインザー王国外になりますので、その違いは大きくはないと思われます。」


「え?ちょっと待って下さい。国外ですか?。」


「はい、そうです。目的地は神聖エルミランド帝国、依頼内容は帝国内に広がりつつある第2の発見者的分派についての調査となります。」


 俺はそれを聞いて嫌な気持ちになった。また、あの手の組織が発生しているとは。

 シエンちゃんもアルスちゃんもキーケちゃんも、俺の前世界での事も知っているし、オウンジ氏とハティちゃんの護衛依頼の件も知っている。俺は3人を見る。


「まずは、話を聞いてみようではないか。」


 キーケちゃんが言うので、俺は改めて司祭に問うた。


「では詳しくお聞きしてもよろしいですか?。」


 神聖エルミランド帝国とはモミバトス教教皇に支持された皇帝による国であり、現在の皇帝はスルハン・カナドーラ2世、モミバトス教の発祥地であり国教にしているレインザー王国とは当然友好関係にある。

 そして、神聖エルミランド帝国は魔族の国だと言う。

 魔族とは人とは異なる種族であり、人よりも強い力を持ち、人とは違う外見をしている。人より強い力と言うのは種族によりけりなのだが、身体能力だけではなく魔力や再生能力など人を凌駕する能力を持っているのだそうだ。

 話だけ聞くと魔族がなぜ人族を支配しないのかと思うが、それは一般層の、つまりは平均的な話だそうで、トップクラスの能力を持つ者の数となると人族の方が多いのだそうだ。

 それ以前に繁殖力においては人族の方が優れているようで、全体的な数でも人族の方が多いのだそうで、人族ってのは逞しいね。

 市井の人々の生活や考え方は魔族だろうが人族だろうが大きな違いはないようで、やはり、貧困や病や争い事は無くなることはなく存在する。

 そうした人々の拠り所となるのがモミバトス教の教えなんだけれども、この教え基本的に心の在り方を説いていて、どのようなことも神の意志と認めるように教えている。

 まあ、信仰とはそう言う事なのだろう。

 しかし、自分の置かれた苦しい状況をすぐに何とかしたいと考えるのもまた、人族、魔族問わず同じらしい。

 その辺りに上手くつけ込んできたのが、モミトスの発見者であり、今、神聖エルミランド帝国内で勢力を拡大している、モミバトス教教典を深く理解し実践する会なのだと言う。

 しかし、長い名前だねどうも。覚えきれないよ。

 どうやら、信者間でも略称が使われており、モミバトス教実践会と呼んでいるのだとか。

 この実践会とやらは、やはり発見者と同じように多くの規則で信者を縛り付け、彼らの財産のみならず労働力や将来性を奪い取っているとの事。

 そして、その背後にも発見者と同じくノウハウや資金の援助をしている組織の影がちらつくのだと言う。

 確かに聞いた限りでは発見者と凄く似ている。


「この依頼について、クルース様を推薦されたのは他ならぬランツェスター首座司教です。クルース様は発見者解散のために大きな貢献をされておりますし、そうした団体についての考え方も一貫しており揺るぎがない、更には、隣国の工作についての調査解決においても、現地スタッフとの協力関係も良好で手際も良く、どちらの事件に関しても必要以上の破壊や過剰な防衛はされておらず分別もある。そして、スミス公国王女が内政外交活動に力を入れ始め、レインザー王国好きになったきっかけにクルース様との邂逅があったようだと言うのもスミス公国の高官からの情報として耳に入っております。何でも、王女様はサラデザインをたいそうお気に入りになられたそうで、それがきっかけでスミス公国ではサラデザインが流行だそうでして、今後益々両国の交流は盛んになり関係は良好になることでしょう。そうした事柄からこの任務にはクルース様ほど最適な方はいないだろうと、首座司教はおっしゃられております。いかがでしょうか。」


「幾ら何でも買い被りすぎです。すべて私ひとりでやったことではありません。」


「ふふふ、クルース様。謙遜は美徳ですが、何事も過ぎてしまうと良くありません。首座司教はスウォン記者とも懇意にされ、当時の状況は良く聞いておられます。他にも近い関係者から詳細は聞かれておりますよ。その上で、適任であると判断されたのです。今一度、お伺いいたします。いかがでしょうか。」


 俺は考えた。

 確かに俺には頼れる仲間がいる。

 そうだな、仲間に頼ってみよう。


「みんな、どう思う?長旅になると思うけど。」


 俺は率直に聞いた。


「我は良いぞ。トモちゃんと一緒ならどこでも行こう。」


「勿論わたしも、です。エルミランドに行くのも久しぶりです。キレイな国ですよ。」


「あたしも良いさ。久しぶりに王国外に出るのも、また良しだ。」


「よし、それでは、この依頼、お受けさせて頂きます。」


「ありがとうございます。それでは、詳細をお伝えしたいと思います。」


 笑顔でイオアネス司祭は言った。

 この世界に来て初の海外だ。しかも魔族の国ときた。

 正直ワクワクしますわな。

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