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図書館って素敵やん

 居酒屋のような店に入り俺たちは今日の作戦会議を開いた。


「今日わかったことをまとめてみましょう。まずは、最初に行った規範の源泉教会です。そこでフレスコ画に足された空を見ました。」


「ゴゼファードが領を取り戻した後、なぜそれ以上手を加えなかったのかという謎があったな。」


 シエンちゃんがアルスちゃんの説明に答えた。


「そして、次に行った祈りの壁。そこでセイテニア・グロウメンの残した物を見ました。」


「どういう思いで祈っていたのか、赤い花の意味は、詩に込めた思いとは何だったのかという謎があったね。」


 俺は答えた。


「はい、そしてゴゼファード夫人が幽閉されていた塔に行きました。」


「再び出た空の絵と夫人の思いについて謎があったな。」


 キーケちゃんが答えた。


「最後に記念館に行きました。そこで改めてグロウメン家の名残がなぜそのままにされているのか、連作の可能性と聖典にある記述について謎がありました。」


「謎ばっかりじゃないか!。」


 肉串を頬張りながら言うシエンちゃん。


「確かに謎は増えた、だが、確実に何かに近づいている。」


 キーケちゃんがエールを飲んで言う。


「そして、それに反応する人もいるようです。」


「気づいたか。」


 キーケちゃんがアルスちゃんに言う。


「はい。祈りの壁でつい説明に熱が入ってしまい他の方々から拍手を頂いた時から、ずっと視線を感じていました。」


「今も、な。」


 キーケちゃんが言う。


「ですが、敵意は感じません。」


「くふふふ、グロウメン家の関係者かも知れんな。」


「シエンよ、お前は時々鋭い事を言うのう。」


「いつも鋭いわっ!。」


「きひひひ、両手に持った肉がな、どうにも説得力に欠けるよ。きひひひ。」


「まったく、キーケちゃんは。」


 肉を食べながら言うシエンちゃん。確かに両手に肉串を持って言うその姿は、わんぱく娘にしか見えないな。


「さて、向こうさんから接触してきますかねえ。」


「きっと何らかの接触をしてきます。」


 アルスちゃんが断言する。


「きひひ、どう話が転がるのか楽しみだのう。」


 その日はそうして食事を済ませ、各人取って頂いた宿の部屋で休むこととなった。


 そして翌日。

 一同が集まったので朝食を取ることになり、近くの食堂で朝ごはんを食べているとアルスちゃんが一枚の紙をウェストバッグから出して皆に見せた。


「昨晩、こうしたものが部屋の扉に差し込まれていました。」


 見せてもらうとそこには、明日、昼、祈りの壁、と書かれていた。


「きひひ、食いついてきたはいいが無愛想だの。」


 キーケちゃんが言う。


「よし、行こう!すぐ行って待ち伏せて捕まえてやろう!。」


「またシエンちゃんはすぐに派手なことしようとする。別に敵意があるわけでもなさそうだし、普通に会って話をしたらいいよ。こっちの素性や目的も素直に話して問題ないでしょ。」


「そうか。残念だ。」


「きひひ、今回は謎解きで戦闘は無しか。それもまた良しよ。」


「お昼まで時間がありますので、ちょっと行きたい場所があるのですが、皆さんはどうされますか?。」


「行きたい場所って?。」


「オッドウェイ大図書館です。」


「調べもの?。」


「はい。」


「我もついて行くぞ。」


 珍しいね、シエンちゃんが図書館に興味持つなんて。


「俺も興味があるからついて行く。キーケちゃんはどうする?。」


「皆が行くならあたしも行くさ。」


 と言うわけでみんなで図書館に行くことになりました。

 オッドウェイ大図書館に着くと皆、調べたい事があると言ってさっさと行ってしまう。

 何だかんだ言ってみんなこの謎を解くのに夢中じゃないか。

 俺はこの世界での一般常識を知る意味でもモミバトス教について調べてみようと思った。

 モミバトス教関係の書棚に行くとそこには膨大な量の書がある。

 聖典だけでも、訳違いのものが幾つもある。

 簡単にわかるモミバトス教の歴史というタイトルの書を見つけ読んでみる。

 現在では統一されたひとつの言語になっているが、モミバトスという人物が現れた当時、世界の言語は幾つかの種類に分かれていた、と書かれている。ほうほう。それで翻訳違いのものが沢山あるわけだ。

 モミバトス様の活動が記録されるのは彼が30歳の時からである。それまでの彼の素性については彼自身語ることはなかった。とにかく、モミバトスと言う男性は30歳にして突然、自分が神の弟であると語りだし、自分の兄である神の言葉を話し出したという事らしい。

 宗教というのは、最初の始まりが難しいもので、その教団の教祖となる人は多くの人を惹きつけるエピソードがあるものだ。

 周囲の人の怪我を癒したとか失せ物の在りかを当てて見せたとか、もしくはもっと凄くなると生まれた際に凄いことが起きた、徳の高い第三者がその赤子こそが神の子だなんて言って見せるとか、そうしたことがあるものなのだが、モミバトスという男性についてはそうした背景が一切ない。

 聖典の始まりも、神はこう語られた、弟の声に耳を傾けなさいと、と言う言葉で始まっている。

 唐突だ。この記述は寝食を共にする内弟子が書き残した事になっている。

 しかし、書いている内弟子自身がどういう経緯で内弟子となったのかが書かれていない。

 聖典を読む限りでは、既に内弟子も信者も、ある程度集まっている状態から話は始まっている。

 フーム、これ、最初の信者は誰なのか、とかそうした序列付けが無いのは結構なんだけど、やはり、唐突過ぎると言うのか、気になるよね。もう少し、モミバトス教について俯瞰的に書かれた書はないか。

 モミバトス教概論というタイトルの書があったので読んでみる。

 すると、聖典は内弟子によって書かれたものと認められた16の手紙からなっており他に3つ、内弟子によって書かれたものかどうか定かではない手紙が存在しており、聖典には含められなかったものの、内弟子に由来することは確かであり、内容に聖典との整合性が保たれているため外典とされていることがわかった。

 モミバトス教外典をさがす。見つかったがこちらも翻訳が幾つかある。

 概論に初心者向けの訳として書かれていたものを選んで読んでみる。

 すると内弟子について詳しく書かれている場所を発見した。

 規範の源泉のエピソードを違う側面で書いたもののようで、9人の内弟子の中で大センスタと小センスタと呼ばれる者がおり、兄弟であったが仲が悪かったとある。それと言うのも大センスタ、つまりセンスタ兄の嫁は小センスタつまりセンスタ弟の幼馴染であり、本来は弟と結婚するはずであった、しかし弟は商売に失敗しその負債を返すために遠く出稼ぎに行ったまま音信不通になってしまい、その間に相談相手となっていた兄の方と結婚してしまった。

 そうしてしばらくして、負債を返し終わった弟が帰って来た、と言うわけだった。

 そりゃ、仲も悪くなるってなもんだ。

 そこを救ってくれたのが誰あろうモミバトス様だったってわけだ。

 その教えに心酔した兄弟は和解しモミバトス様の内弟子となったのだが、今度はセンスタ兄の嫁がセンスタ弟を誘惑するようになったらしく、規範の源泉にて教えを説かれる直前まで兄弟で争っていたらしい。そして、モミバトス様から信者の規範となるようにと幾つかの訓話がなされ、兄弟はそれまで以上に友好的になり布教活動に熱を入れるようになった。そして、兄は嫁を咎める事なく弟と一緒になりたいならなると良いとまで言ったそうだ。嫁はそれを聞いて涙を流し、それまで以上に献身的になりましたとさ。

 俺は再び概論の続きに目を通す。

 規範の源泉についてこう書いてある、大センスタのした事は当時の倫理基準的には責めを負う事ではなかったが、その後にモミバトス様が説いた教えに即して考えるとそれには反しているという事で、正典上では大センスタを内弟子には数えないとの解釈が強く、正典原理主義者の間では規範の源泉時に大センスタは自分の罪に打ちひしがれその場を去ったとさえ言われている。

 う~む、これは。


「おーい、トモちゃんそろそろ行かないと。」


 シエンちゃんが声をかけに来てくれた。もうそんな時間か。


「ああ、ありがとう。夢中になってたからわからなかったよ。」


「アルスもそう言ってたな。みんな待ってるから行こう。」


「あいよ。」


 俺はシエンちゃんに続いてみんなと合流した。


「少し時間がありますから、軽く食事をしながら調査結果を話し合いましょう。」


 俺たちはアルスちゃんの意見で祈りの壁に向かう途中の店で軽食を取ることにした。

 さてと、どんな話しになりますか。

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