帰宅って素敵やん
さて俺たちは十分に食べ、飲み、会話に花を咲かせ、そろそろお開きにしますかという事になった。
アッシュバーンさんが宿を用意してくれたと言うので、甘えさせてもらう事にする。
翌日、起きるとまたもやアッシュバーンさんがいて、大海樹の訓練所まで戻るワイバーン部隊があったので乗っけてってくれるように段取りをしてくれたと言う。できる人だなあ。
朝食を済ませたら衛兵詰め所に来てくださいとの事で、我々は朝食を食べてから詰め所に向かった。
詰め所に行って衛兵さんにカードを見せると、中庭にワイバーンの発着所があるのでと案内される。
陸上競技場位デカい中庭で待つことしばし。
上空から大きな影が降りてくる。
降りてきたワイバーン3匹が胴体に付けたハーネスから伸びたロープは大きな箱状の籠に繋がっている。
これは、あれだ、ワイバーンの熱気球だわ。
いやー、こりゃいいぞ。熱気球って乗ったことないんだよね。飛んでるところを見たことは良くあったんだけどさ。きっと気持ちいいだろうなーっていつも思ってたんだよね。
箱状の籠が地面に設置し、ワイバーン達は上空で羽ばたいている。
そこそこの風圧の中、衛兵さんが今のうちに乗り込んでくださいと言うので、我々は手荷物と分解式舟の袋を持って乗り込んだのだった。
我々が籠に乗り込むと衛兵さんが上空に向けて手を振り合図をする。
ふわりと籠が浮き、そのままスーッと上空へ飛ぶ。
「あんまり揺れないもんだねえ。」
「ワイバーンに乗るのは初めてか?。」
キーケちゃんに聞かれる。
「うん、初めて。」
「我に乗った事はあるだろ。」
シエンちゃんが言う。
「きひひひ、よう乗せたなシエンよ。あの誇り高き赤い龍が人を乗せたか。」
「うむ、トモちゃんは出会った時からトモちゃんだったからな。それにな、今はわかるぞ。人ってのはなかなかに味わい深い生き物だとな。もうむやみやたらに他者を軽んじたりはせんよ。まあ、あの逃げ女みたいに本質の軽い者はそれなりに扱わせてもらうがな。」
「逃げ女って、随分と略されたものですねえ。ほら、見てください、トゲウオの街があんなに小さく。」
アルスちゃんが指さす。
「ほんとだ。結構速いねえワイバーン。」
「この調子なら昼前には到着するだろう。」
キーケちゃんが言う。
そうして上空から、あの湖がこの間言ってたモノです、とかあのあたりの山中に穴が開いていたのでしょう、とか言いながら空の旅を続け、キーケちゃんが言っていたようにお昼前には大海樹の訓練場に到着する。
「お疲れ様でした!ジョイトリクス場長がお待ちです!。」
俺たちは出迎えてくれたダイファーさんに挨拶をして、大変役に立ちましたと感謝を述べ、組み立て式舟の袋をお返しした。
場長テントに案内されると相変わらずの筋肉ムキムキマッチョマンのジョイトリクス場長に迎えられ労われた。この度は国の安全のため、御尽力感謝します、といかつい風貌のジョイトリクス場長に言われて恐縮してしまう。
俺たちは、お世話になりました、ノダハに帰ります、という事でキットとナーハンに乗って帰ることにした。
どの馬に誰が乗るかで軽くもめたが、キーケちゃんが俺の後ろに乗るという事で話はまとまり来た時同様に、交互にスリップストリームをしながら走ったので割と早くノダハに到着した。
事務所に着くと中庭でジョンとカイルが洗濯物の取り込みをしていたので、早速キーケちゃんを紹介する。
「キーケ・タモクトと言う名だが、訳あってナスタシア・ミキイケと名乗っておってな。ややこしいとは思うがキーケちゃんと呼んでおくれな。」
「へーっ!勇者様と同じ名前だね!カッコいい!。」
カイルが言う。
「うふふ、勇者様本人ですからね。でも、キーケちゃんは勇者様って言われて騒がれることが嫌になってしまったんですよ。だから、これは内緒にしてあげてくださいね。」
「うおっ!すげーー!わかった!絶対秘密にする!。」
ジョンが鼻息荒く言う。
「きひひひ、良いお子達じゃないか。ありがとうねえ。でも、気軽に付き合ってくれたら嬉しいぞ。」
「うん!わかった!。」
「そーだ!トモ兄ぃ!キットとナーハンに小屋を作ったんだ!みんなも見て見て!。」
カイルがそう言って俺たちを引っ張ると中庭の奥に小屋ができていた。
ちゃんと屋根があって壁もある。
「あらあ、立派な小屋を作ってもらってキットもナーハンも喜んでますよ。」
アルスちゃんが言う。
「凄いじゃないの!結構かかったんじゃない?俺も出すよ。」
「大丈夫だって!俺たちだって今じゃ結構稼いでるんだぜ!それに今後、よその街での仕事が増えてきたら事務所の馬も飼おうかって話してたんだ!。」
カイルが楽しそうに言った。
「そうか、ありがとうな!。」
「あたしも馬を買いたいのだけど、一緒に置かせてもらってもいいかい?。」
キーケちゃんがジョンとカイルに聞く。
「もちろんだよっ!。」
「広く作ってあるから大丈夫!普段は僕たちで世話もするしね!。」
カイルとジョンが言う。
「そうかいそうかい。ありがとうねえ。」
キーケちゃんはそう言って嬉しそうに笑った。
俺たちはキットとナーハンを新しい厩に入らせると、事務所の中に入ってみんなにキーケちゃんを紹介した。
ジョンとカイルにしたように、キーケちゃんは自分の素性を隠さず話すのでアルスちゃんが同じように説明するのだった。
みんな、最初は驚いたようだったがすぐに平常モードに戻って歓迎するのだった。
今日は宣伝班はお休みだったようで、午前中はそれぞれ買い物に行ったりして過ごしていたそうだが、この時間には事務所にみんな集まっていた。
みんなでキーケちゃんの周りに集まって色々と話しかけているのだが、何故かサラがキーケちゃんにピッタリとくっついている。
割と人見知りな方のサラが珍しいなあ。
なんて思って見ているとシシリーが俺のところに来た。
「みなさん、お疲れさまでした。」
「ありがとう。しかし、人見知りのサラにしては珍しいねえ。ずっとキーケちゃんにくっついてるよ。」
「サラはここに来る前は、ずっとお婆様とふたりで暮らしていたそうです。お婆様がお亡くなりになって、誰も頼れる人がいなかったサラは色々あって私たちと暮らすことになったのですけど。キーケさんに面影を見たのかも知れないですね。」
「そうかあ。キーケちゃんも色んな経験を積んで酸いも甘いも嚙み分けてきたようなお方だからねえ。きっと、みんなにとって、良い保護者、良い先生になってくれると思うよ。俺にとってもいろんな意味で師匠って感じだからねえ。まあ、師匠って呼ばれるの嫌がるけどね。」
「うふふ、そうなんですか?トモさんがお連れになられる方って、みんなトモさんに似てますね。」
「そう?どの辺が?。」
「照れ屋で優しくて強くて、でも、どこか寂しそうな所ですかねえ。」
「そう見える?。」
「はい。そう見えました。」
「シシリーには敵わないなあ。」
本当に、この年でどんな観察眼をもっとるんだ。きっと、シシリーもこの年齢には似合わない経験をしてきているのだろう。
「シシリーもたまには誰かに甘えたりしていいんだからな。」
「ありがとうございます。でも、私も結構甘えん坊なんですよ。」
「ホントー?。」
「はい。だから大丈夫ですよ!。」
「よし!。」
俺とシシリーはそう言い合って笑った。
みんな楽しそうにしている。
シエンちゃんもアルスちゃんも一緒に笑ってる。
なんだか、本当に、家族みたいだ。
いや、これもう、家族だろ。家族でいいよな。
俺はしみじみとみんなを眺めて、そう思ったのだった。




