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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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捕り物って素敵やん

 地図を見るとアジトとされているのは港に集まる倉庫のひとつだった。まったく、昭和の悪者か!。


「きひひ、阿呆共が一丁前に見張りなんぞつけておる。」


「くふふ、どう料理してやりましょうかねキーケちゃん。くふふ。」


「私が正面から身分を名乗って乗り込みますので、皆さんは裏口を押さえて頂きたい。」


 アッシュバーンさんが言う。


「ちっちっち。前ひとりってことはないだろ。裏はあたしとトモが行く。表はヌシたち3人で行け。騒ぎになったらあたしたちも突入しよう。折角一緒に来たのだ、我らにも見せ場をよこせよ。きひひひ。」


「すいません。お願いします。」


「では、おふたりとも気を付けて。」


「みんなもね!。」


 俺はそう答えてキーケちゃんと共に裏口へ向かう。


「きひひ、裏口にも阿呆がおる。右はあたしがやろう。左は任せるぞ。騒ぎにするなよ。わかったか?。」


「肯定だ。」


「きひひ、妙にやる気を出しおってからに。では、行く。」


 俺たちは二人同時に建物の陰から飛び出した。

 俺は体制を低くし、左に立った男に近づき顎を掌底で軽く叩いた。

 男は声も出さずに崩れ落ちる。

 俺は男を支えてゆっくり地面に横たえた。


「きひひ、やるではないか。ドアを薄く開けるぞ。」


 キーケちゃんが小声で言ってゆっくりと少しだけドアを開いた。

 薄っすら開いたドアの隙間から中を見る。

 倉庫内は木製のコンテナが積み上げられており、ここからでは見える範囲も限られている。


「見える場所には誰もおらぬようだ。」


 キーケちゃんが言う。


「中に入る?。」


「いや、嫌な気配がする。手筈通りここで待とう。」


 俺は呼吸を整え騒ぎを待った。


 ドンッ!


 大きな音がして、男たちの怒声が聞こえてきた。


「行くぞ。」


 俺は無言でキーケちゃんに続く。

 中に入ると既にキーケちゃんはふたりの男を戦闘不能にしていた。


「きひひ、来るぞ。」


 俺は積み上げられたコンテナの上から土魔法を放ってくる連中に向けて釘を投げる。


「器用な真似をするのう。しかし、今回はお主に戦いの勘をつかんで貰いたいのだ。遠方の敵はあたしがやるから接近戦をやれ。」


「了解!。」


 俺はキーケちゃんの前に出る。


「身体強化以外の魔法は禁止な!きひひひ。」


 後ろから声がかかる。まあ、覚悟はできてますよ。そういう話だったし。

 周囲から剣を持った連中が押し寄せてくる。

 コンテナの隙間から来る連中を目につく奴から戦闘不能にしていく。

 正面の男が振り上げた剣の柄と言うのか握りの下にショートアッパーを当てて、振り上げた肩を外してやる。

 そのまましゃがみ下段の回し蹴りで横の男の足を打つ。

 倒れた男の背中を踏んでジャンプし集まる男どもの頭を越えて着地。

 後ろ向きの男ふたりの頭をつかんで引きずり回し、両手を広げてグルングルンと振り回す。

 密集していた男どもに当たって男どもは吹き飛ばされる。


「もっと真面目にやれ!敵の攻撃が当たったら死ぬ位の気持ちでいけ。」


「ウイッス!。」


 キーケちゃんに怒られた。どうやら遊びすぎたようだ。もっとひとりひとり大事に倒そう。

 俺は向かってくる男たちを良く見て引き付け、初動をキッチリ避けて打つようにしてみた。


「よし、次はカウンターを当てろ。」


「ウイッス!。」


 今度は相手の剣の振り下ろしの体重移動に合わせてジャブを入れていく。


「次は3人同時に倒せ。」


 無茶いいよるわー。

 剣を手に向かってくる3人。

 俺は昔何度も何度も観た、カンフー映画の大スターの技術を思い起こしていた。

 俺はまずふたりを右足の金的蹴り左足の金的蹴りで倒し、直後に残った男の喉に手の指を伸ばした状態でのジャブ、フィンガージャブを当てる。

 ほぼ同時に崩れ落ちる3人。


「まずまずだな。その調子で進んで行けば前からくる奴らと合流できるだろ。あたしは上の連中を倒してくるよ。」


 キーケちゃんはそう言って積んであるコンテナをピョンピョンと駆け上っていく。


「うっす!。」


 俺は下腹に力を込めて先に進む。

 前方からワラワラと向かってくる武器を持った奴ら。

 先頭の男の太ももの付け根あたりを足の裏で蹴る。

 結構な勢いで突っ込んできた男は、前かがみになって後ずさり後ろから来た男たちにぶつかった。

 さらに追い打ちの前蹴りを食らわせると、その後ろの奴らも一緒にたたらを踏んだ。

 その列にいなかった連中が回り込むように向かってくるので、肩から相手にぶつかり弾き飛ばし、次に来る男は肘で顎を振りぬき、戻す肘で次の男の顎をねらい打つ。

 最初は上手くいかなかったが何度かやっているうちに段々と成功率が上がっていく。

 次はストレートを当てて引く肘で次の奴に当てる練習をする。

 これは、さっきの肘から肘で当てるより簡単にいけた。

 よーし、調子出てきたぞ!周りの連中の動きも緩やかに感じる。

 よくよく見てると、顎が上がってる奴が多いことに気づいた。

 俺は顎が上がってる奴には腕を伸ばして手の親指と人差し指の間あたりで押し当てる、いわゆる喉輪で倒していく。

 当たりが浅かった奴らは起き上がり再び向かってくる。これはキッチリ意識を刈り取らないとキリがないな。

 俺は今までやったことを、動作を確実に意識して行う。

 どうもリズミカルさに欠ける。自分でも不格好なのがわかる。

 俺は頭の中で、この間キーケちゃんが演奏してくれた曲、ジーフサ我が故郷よ、を流した。

 リズムに乗せて体を動かす。

 うん、上手くいくな。

 群がる男どもが段々と動く線のように感じられる。

 そいつらの動きを俺のリズムに合わさせてやる。

 そうして俺はカウンターを当て、肘から肘、パンチから肘、喉輪からの肘、と手技主体で丁寧に意識を刈り取っていく。


「随分と良い動きをするようになってきたな。見ていて気持ち良いぞ。」


 どうやらキーケちゃんが戻って来たらしい。


「よーし、合流できたようだな。」


 進行方向からシエンちゃんの声が聞こえて、男がすっ飛ばされてくる。


「では、残りもかたずけちゃいましょう。」


 アルスちゃんの声もする。


「アッシュバーンさんは大丈夫?。」


 俺は明らかに勢いがなくなってきた連中を、同じリズムで沈めながら聞いた。


「きひひ、元気に戦っとるよ。返事はできそうもないがなあ。」


 キーケちゃんが上から声をかけてくる。

 すると、突然今までとは違う硬質な気配がして俺はとっさにスウェーバックする。

 横に積んであるコンテナに大きなナイフが刺さる。


「どー言う事?話しが違うじゃないの!。」


 コンテナ脇から女の声がする。


「あーっ!もう!なんであんたは出ていくのよ!ボディーガードじゃなかったの!。」


 コンテナ脇から痩せた長身の男が出てきた。

 顔が長い。手足も長い。

 ニヤニヤ笑いながら長身男は俺に近づいてくる。


「気を付けろ、そ奴やりおるぞ。」


 キーケちゃんが嬉しそうに言う。


「ジャッ!。」


 男が短い声を立て一直線に俺の方へ向かってきた。

 まだ間合いじゃないだろって距離で貫手を繰り出してくる。

 嫌な予感がして避けると頬に鋭い痛みが走り、熱い感触がする。出血したようだった。


「もーっ!仕方ないわね!私たちも行くわよ!。」


 コンテナの奥から女が出てくる。


「あーっ!お前あれだろ!逃げた女!。」


 シエンちゃんが素っ頓狂なことを言っているのが聞こえる。


「気が散ってるんじゃないか?。」


 低い声がし、目の前に鋭い音を立てて足が通り過ぎる。

 俺は体制を低くしてローキックで応戦する。

 男は間合いを取り、長い顔で満面の笑みを見せた。


「そうか、こいつは上物だ。誰も手出しするなよ。」


 男は低い声で周囲に言う。


「サッツギ・ウトーサだな。王国安対委員サンドラ・アッシュバーンだ。大人しく投降しなさい。」


「誰がするか!かかれ!。」


「そうこなくっちゃ!行くぞアルス。」


「殺しちゃダメですからね!。」


 向こうでも始まったようだ。


「行く。」


 小さく言って男が間合いを縮める。

 俺も間合いを詰め、右裏拳を相手の顔に向けて出す。

 男は首をかしげ避けるのでそのまま踏み込み右の肘で払うがスウェーで避けられる。

 避けながら男は長い手で鋭いショートアッパーを繰り出してくる。

 俺は相手に組みつくようにさらに踏み込む。

 ミートポイントをずらされたアッパーは俺の肩に当たるが、気にせずそのまま相手の胸元に入り両手を強く突き出す。

 当たった感触は弱く、どうも同時に後ろに飛んで力を逃がしたようだ。

 俺は半身になり右手の拳を縦にして構えた。

 呼吸を整え相手の出方をうかがう。

 男は両手をだらりとたらし、小刻みに跳ねだした。

 男は一瞬右肩を後ろにひねると、ものすごい瞬発力でストレートを放ってきた。

 俺は前腕で相手の強烈なストレートをそらし、そのまま真正面に向けて縦にした拳を突き出した。

 拳に相手の顎をとらえた感覚。

 そのまま身体を前に進めラリアット気味に相手の首を腕に巻き込み押し倒した。

 男はそのまま仰向けに倒れ、意識を失った。


「まあまあだな。」


 キーケちゃんが言う。


「向こうはどう?。」


「シエンが遊んどるよ。」


 見るとアッシュバーンさんとアルスちゃんはコンテナに腰かけて見学を決め込んでいるようだ。

 周りには沢山の男に混じって冒険者装備の男4人も倒れている。


「おい!どうした!もっとこい!。」


「なんなのよっ!あんたはっ!。さっきからこっちの魔法を簡単に消してくれちゃって!」


「お前の話しは面白くない。いいから攻撃してこい。」


「ふざけないでよ!どうせ、あんたなんて何も考えてないんでしょ?この国の本当の姿を知らないんでしょ?私はね、あんたなんかと違ってエリートなの。すべてに勝ち上がってきたのよ。なのに、この国ときたら。私が求めているものはそんな小さなことじゃないの。この国にいると自分を嫌いになるわ!私が本当に怖いのは自分を嫌いになることなの!私は何者にもなりたくないし、何でもやってみたいのよ!わからないでしょ?あんたには!。」


「甘えるな!。」


 大きな声でシエンちゃんが言った。


「他人をわかろうと努力もせずに自分をわかってくれなど笑止千万!うちの子供たちもそんなたわけた事は言わぬ。もう一度、人間を勉強し直せ!。」


「うるさいうるさいうるさいっ!。」


 ウトーサが両手を頭の上にあげ、頭上に何かを発生させようとする。


「お前の術が軽いのは、お前という人間の本質が軽いからだな。」


 シエンちゃんはそう言って大きく手を叩いた。


「きゃっ!。」


 ウトーサの頭上で発生しかけていた何かははじけ飛び、ウトーサは尻もちをつく。


「こんな所で炎の極大魔法を放とうとするとはな。まったく、面白みのない人間よ。もう眠れ。」


 シエンちゃんはそう言ってウトーサに強い気を向けた。


「イッ。」


 息を吸うような声を上げてウトーサは気絶した。


「きゃーー!シエンちゃん!カッコイイーー!痺れたねーー!。」


 俺は拍手をしながら言った。


「そ、そう?かっこよかった?いやー、参ったなー。具体的にどの辺がかっこよかった?なあ、教えてくれよトモちゃん!。」


「そりゃ、やっぱりあの啖呵だよな。粋だね!見たか聞いたか!って言いたくなるね!トゲウオの街の名物は、キレイな玉とシエンちゃん!ってね。食いねえ食いねえ、肉食いねえ!。」


「くふふふ、そうか?肉も食わせてくれるか?。」


「それはもう幾らでも御馳走させて貰いますよ!皆さん、本当にありがとうございます!これで隣国の防諜活動や破壊活動もしばらくは難しくなるはずです。さあ、ウトーサとその仲間を縛り上げて連行しましょう。」


「他の連中はいいんですか?。」


「はい、私がヒュエイムの所で言った事は本当ですから、本件以外は見過ごすって。」


 アッシュバーンさんは言う。


「俺と戦った男は?。」


「そいつは鏢局だ。」


 キーケちゃんが言う。


「ひょうきょく?。」


「ああ、物品や旅客の護送を請け負う専門家よ。まあ、用心棒のようなものか。本物の専門家は荷の経緯については一切聞かぬ事で知られておる。そ奴は本物だ。」


「ああ、なんか聞いた事ある。へー、専門家ねえ、どうりで強かったわけだ。」


「トモよ。お主の力ならもっとキレイな勝負ができたはずだ。いささか泥臭すぎたぞ。お主はどうも相手によってムラがあるな。まだまだ、場数が足りてないな。これからも精進せよ。」


「はい!。」


「きひひ、返事は良いのう。」


「では皆さん、ウトーサ達を連行しましょう。」


 こうして俺たちは、無事に依頼を済ますことができたのだった。

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