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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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事件を追うって素敵やん

「よし、海岸が近いな。トモよ舟に乗るのだ。ここからはオールで漕いで進もう。」


「ういっす。」


「なんせ、ここの海岸には玉の採掘師やら鑑定士やらが常時おるからの。驚かせないようにしてやろうではないか。」


「空を飛ぶのはあまり一般的ではないのですか?。」


 俺はキーケちゃんに聞いてみた。


「まあ、そうだな。一般的ではないな。高位の術師でやれる奴もいるよ。だが、そうした奴らは、まあ金持ちに雇われとるか国に雇われとるか、いずれにせよ自力で移動など滅多にせぬよ。なにしろ術の腕は金になるからな。今のお主ならば国専門の術師に雇ってもらえるぞ。さすれば一生金には困らんぞ。」


「勘弁してくださいよう。金なんてな、不幸を避けられる程度にあればいいですよ。逆に有りすぎると不幸を呼び込みかねないですからねえ。お金おっかねえ、なんて申しますからね。それに、こうして気の合う仲間たちと冒険をして、なんならそれが人助けになったりした日にゃ、最高じゃあござんせんか。ねえ?そう思いませんかね、皆の衆?。」


「きゃはははは!でたでた!面白トモちゃん、オモトモちゃん!。」


「なんなのだ?それは?。」


「たまに、トモトモはこんな口調で話す時があるのですよ。照れ隠しではないでしょうかねえ。」


「きひひひひ。そうか、そうか。なにも照れることはあるまい。いくら、あたしみたいな魅力的な仲間を見つけたからと言ってなあ。きっひっひっひっひ。」


「魅力と言うか暴力、イッテーー!。」


「きっひっひっひ。懲りない娘よ。」


「手のひらではたいただけで、この重さは何なんだ!ありえんだろ!。」


「きーっひっひっひ。効くだろ?きひひひ。」


「効くなんてもんじゃあないぞ!ジャイアントイールのビリビリのが全然楽だわ!。」


「うわっ!そいつは凄いなあ。」


「まったく、父上の尻尾ビンタといい勝負だよ。ほー、痛ぇー。」


 頭をさするシエンちゃん。しかし龍王の尻尾ビンタといい勝負とは、改めて恐るべしはキーケちゃんよ。


「ほれ、砂浜に上がると舟を畳む時に砂だらけになってしまうからな、あちらの岩場から上がるとしよう。」


「アイアイサー!。」


 キーケちゃんの指示に従い岩場に舟を着け順番に降りる。

 最後に俺が下りてから、舟を持ち上げて岩場の上に置く。


「少し水を切ってからしまいましょう。」


 アルスちゃんが言う。


「ちょっと、あんたがた。」


 そうしていると、中年男性が声をかけてきた。


「あんたがたは玉の採掘に来たのかね?。」


「いいや、あたしらは冒険者だ。仕事の報告にきたのさ。」


 キーケちゃんが冒険者カードを提示して言った。


「だったら、構わないのだが。すまんね、無許可で採掘する奴が後を絶たなくてね、こうして見回りをしているのですよ。失礼しました。」


 中年男性はそう言って去っていった。


「まあ、こんな調子よ。この街の重要な資源だからな。」


「玉ってこの辺で取れるのですか?。」


 俺は聞いてみた。


「海岸で取れるんですよ。このあたりの砂浜には沢山の玉が混じっています。玉の原石はクイン川上流の山にあるようなのですが、それが川に流されてこの辺りの海で波にもまれることでキレイな玉になるようですね。」


「へー、そうなんだー。アルスちゃんは色々と物知りだなー。」


「うふふふ、随分とこの国はあちこちへ行きましたからねえ。」


「よーし!大方水気も取れたからしまっておいたぞ。後は各自持ってくれ。」


「引き上げた証拠品はあたしが持つから、誰かあたしの分の袋を持ってくれ。」


「俺が持つよ。食料品の袋もほとんどカラだし。」


「しかし、良く食べたなあ。」


「ほんと、シエンさんは良くお食べにななられましたねえ。」


「きひひ、ほんに、シエンの食べっぷりは見ていて気持ち良いほどよな。」


「そうか?くふふ。悪い気はせんなあ。くふふ。」


 喜んでるよシエンちゃん。女子としてどうなのかねこれは。

 俺はいつものウェストバッグはたすき掛けにしたまま、食器類しか入っていない背嚢と舟の分解部品が入った袋ふたつを担いだ。


「よし、それで、どこに行けばよいのかね?。」


「きひひ、まずは冒険者ギルドに行くか。ついて来い。」


 という事で、俺たちはキーケちゃんについていく。

 岩場を抜け、海岸から内陸部に入ると、すぐに家やら何かのお店やらが立ち並び賑やかな様相になっている。


「ここだ。」


 街中に入り幾らか歩いた後、大きな建物の前でキーケちゃんがそう言った。


「さあ、入ろう。」


 キーケちゃんは慣れた様子で中に入っていくので俺たちも後に続いた。


「特別依頼で来た。これがカードだ。」


 そう言ってキーケちゃんは受付嬢にカードを渡した。

 受付嬢はテーブルの下から石板を出してその上にカードを置いた。


「ありがとうございます。カードをお返しします。お呼びいたしますので少々お待ちください。」


 そう言って受付嬢はカウンターの奥へ入っていった。

 幾らもせずに受付嬢は出てきてキーケちゃんを呼ぶと、この奥の応接室1と書かれた部屋にお入りください、ギルド長がお待ちです、と言う。

 我々は言われたようにその部屋にノックして入る。


「ようこそお越しくださいました。私はクブロスカ領トゲウオ街冒険者ギルドのギルド長を務めさせていただいております、ランドルフ・グレチェンコと申します。どうぞ、お座りください。」


 そう言って出迎えてくれたのは、短く刈り込んだ金髪に端正な顔だちをした筋骨隆々の大男だった。

 我々は応接セットに座らせてもらう。


「特別依頼の件、確認させて頂きました。クブロスカ領におきましても、近年、行方不明者の増加や、レインザー王国のものではない船が難破し打ち上げられる事件が頻発しておりまして、王都とも頻繫にやり取りをして問題視しております。」


 おっと、今回我々が受けた依頼について被疑者集団の具体的な予想について告げられることはなかったのだが、ここへ来てのこの発言。アルスちゃんではないが、やはり、隣国の可能性が高くなっているのだろう。


「すいません!遅れました。」


 そう言って部屋に入ってきた人物は、女性だった。


「サンドラ・アッシュバーンです。どうぞよろしく。」


 そう言ってグレチェンコギルド長の隣に座ったその女性は、背が高くスレンダーな体系にはっきりした顔だちで頭の後ろで黒髪をくくっており、ハキハキとした話し方といい、なんだか弁護士とか捜査官とかそういった印象を抱かせた。


「彼女は王都からきて来て頂いた、レインザー王国安全対策委員会の方です。」


「よろしくお願いします。私共の役割はあらゆる国、団体による諜報、破壊行為の無力化であり、国と国民の利益、安全を守ることにあります。皆様方には、その一端を担って頂き、感謝しております。」


 そう言って頭を下げるアッシュバーンさん。どうやら偉い人なのだろうに、そんな風に頭を下げられるとは、どうやら人間的にも大した人物のようだ。


「この国を愛する気持ちは変わらぬよ。さて、早速なのだが我々の調べた事を伝えようか。」


 キーケちゃんは受けた依頼の内容、大海樹内の地下水路で見た物、そしてそこから辿り着いた海上で発見した物の話しをした。


「それが、これだ。」


 応接テーブルの上に発見したブイとロープ、スーツケースを置くキーケちゃん。


「見せて頂きます。」


 アッシュバーンさんがブイ、ロープ、スーツケースに手をかざしている。


「何をしてるの?。」


 俺は小さな声で隣に座ってるシエンちゃんに尋ねた。


「あれは、サーチの魔法だな。」


「サーチって?。」


「物から色々な情報を読み取る魔法です。光魔法の一種ですから、トモトモも勉強されてはいかがでしょう?。」


「うん。機会があればお願いね。」


「ブイもロープも鞄も、レインザー王国製品ではない可能性が高いです。鞄の中身については、危険はないと判断します。開けますがよろしいですか?席を外していただいても構いませんが。」


「いや、構わん。実際危険はないとあたしも思う。」


「うふふ。わたしもそう思います。」


「我もな。」


「では、俺も構わないです。」


 俺たちを見て少し微笑んだアッシュバーンさんはうなづいてスーツケースを開ける。


「中に海水が流入してませんね、かなり防水性の高い造りになっているようですね。中身は、衣服と、小袋に王国銀貨10枚と王国銅貨20枚、計12万レイン、地図。以上ですね。こちら、ロープですが、錨かなにかも結ばれていたのでしょう、切れた痕跡が見られます。衣服は、大分古いタイプですね。使用しているボタンが今では高価になっているオニキスタートルの甲羅を加工したものになってますね。見る人が見れば、おかしな服だと気づくでしょうね。やはり、隣国からの潜入者のための物品と考えるのが自然でしょう。また、服などから見て、王国に定住する協力者や物品の購入を自由にできる協力者はまだ居ない可能性が高いですね。王国側の物品を調達するのが容易ければもっと目立たない服を用意できるでしょうから。」


 中身を手に取って見たアッシュバーンさんはそこまで一気に言った。


「今回は行方不明になった冒険者の捜索も依頼に含まれていたのですが。」


 俺は聞いてみる。


「ええ、聞いています。その後の調べでA級冒険者であった彼女、サッツギ・ウトーサは親しい人間からは反レインザー王国的な思想の持ち主として知られていたようです。常日頃から、この国は腐っている、このままでは諸外国に食い物にされてしまう、自分のような有能な人間はもっと重く用いられるべきだ、と語っていたとの事です。」


「あらあら、それはつけ込む隙がある人物ですねえ。」


「あるいは自分から、相手方に接触させる目的で吹聴していたとも考えられるな。」


 アルスちゃんとシエンちゃんが言う。


「おふたりのおっしゃられる通りだと、思います。そうした思想の人間が特別依頼受託者として扱われ続けたのはひとえに我々の調査怠慢でした。そして、今回行方不明になっている残りのB級冒険者たちですが、ウトーサ信奉者であったようです。」


「ふむ。わかった。それではあたしたちの任務はここまでになるかの。」


 キーケちゃんが言う。


「ええ、そうなります。依頼は十分果たされました。ここまでの依頼料は支払われますし、大海樹訓練場まで皆さんをお送りもさせて頂きます。ですが、よろしければ、今しばらく、お力をお貸し願いたいのですが。勿論、正式な特別依頼としてです。」


 どうやら、話しはまだ続きそうですよ。

 シエンちゃんは嬉しそうに笑ってるし、アルスちゃんもうなづいている。

 キーケちゃんはと言うと俺を見て、俺がうなづくとこう言うのだった。


「話しを聞こう。」


 カッコイイー!スイス銀行の口座に振り込ませるのかっつーの!

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