報連相って素敵やん
キーケちゃんの別荘に食料品入りの背嚢を取りに戻ると、キーケちゃんもベッドに下げてあったザックを手に取り、準備は万端だと言う。いったいあのザックには何が入っているのだろうか。
そうして、訓練場に向かい、結局日も暮れないうちに戻って来ることになったのだが、訓練場長に事の次第を話したところ、指示を仰ぐからしばし待たれよと言う。ちなみに、キーケちゃんの存在は、現地で出会った協力者で一緒にパーティを組むことになった高ランク冒険者だと紹介した。
キーケちゃんはザックからカードを提示して我々同様依頼を受託扱いにしてもらったのだった。
冒険者登録していたのか聞くと、偽名で作ってもらったとのことで、名前はナスタシア・ミキイケとなっていた。キーケちゃん呼びでも不自然ではあるまい、とはキーケちゃん談。
指示を仰ぐために軍用伝書鳥を使うというので見せてもらうと、立派な小屋から丁寧に出してきたのは金色のトサカをした鶏だった。
グリンカムビと呼ばれるその鳥は大海樹に生息するものだそうで、非常に賢く非常に速く飛ぶのだと言う。
ジョイトリクス場長から手紙を託されたダイファーさんは、まるで高価な宝石を扱うように恭しくグリンカムビを抱き、おしいただくように足元の筒に手紙を入れた。
「お願い致します。」
ダイファーさんが一礼するので、俺も真似て頭を下げる。
「ココッ。」
グリンカムビは短く鳴くと、パシュッと軽い音を立ててすっ飛んで行った。
まるで砲台から打ち出された玉のようだった。
「凄いっすね!。」
俺はダイファーさんに言った。
「それはもう。でも、丁重に扱わないとすぐすねるんですよね。専門の獣使いの方にも常駐してもらってるんですけど、その方もグリンカムビは難しいっておっしゃられてましたよ。」
「きひひひ、あやつらは人をバカにしとるからな。おまけにあやつらの価値基準は力ではないからな。」
キーケちゃんが言う。
「そうなのですか?では、彼らにとって価値があるものとは、何なのですか?。」
アルスちゃんが聞く。
「美だ。」
キーケちゃんが言う。
「び、とは美しさの美、ですか?。」
「うむ。だが、あやつらの美の基準は人間とは違うからな。」
「だったら、キーケちゃんなどはあいつらに崇められるんじゃないのか!キャンキャン。」
またシエンちゃんは、余計なことを言って頭をはたかれてる、結構強めにはたかれてるよ。キーケちゃんたら、ちょっとだけ怒ったな。かわいいとこあるねえ。フォローしとくかな。
「いや、キーケちゃんは若い頃かなり美人さんだったんじゃないの?今も雰囲気あるもの。」
「きひひひ、トモは見る目があるのう。隠居した原因のひとつは求婚する貴族どもが多くてうんざりした、と言うのもある。」
「さすが、レインザーの白バラと言われただけのことはありますわー。」
今度の二つ名はシンプルーー!
「えっ?レインザーの白ババア?アキャキャキャ。シャレではないか!。」
もう定番、お馴染みになりつつあるが、頭をはたかれ喚くシエンちゃん。
「キヒヒヒヒ、シエンよ、シャレで首が飛ぶこともあるぞ。しかし、だんだん反応できるようになってきたのう。次回はも少し速く強めにはたくとするか。楽しみだな、なあ、シエンよ。キヒヒヒヒ。」
「ギャーー!やめちくれーーー!。」
アルスちゃんの後ろに隠れるシエンちゃん。
「キヒヒヒヒ、お前はやっぱり、おふざけ愉快者よ。」
そう言うキーケちゃんはの顔は、本当に楽しそうだった。
その場で立って動かないでいるダイファーさんを見て、アルスちゃんが尋ねる。
「ダイファーさんは、こちらでグリンカムビちゃんが帰ってくるのを待つのですか?。」
「はい。すぐに戻って来ますから。」
シュンッ。
それから幾らもしないうちに、短い音がしてグリンカムビが戻ってくる。どう見ても慣性を無視した停止の仕方。おっとろしい生き物だな、グリンカムビってのは。
足管から手紙を取り出し、また丁寧に抱いてグリンカムビを小屋に戻すダイファーさん。
「では、場長テントへ行きましょう。」
ダイファーさんに言われて、我々は後に続いた。
「皆さん、ステイソン本部長より、地下水脈の探索願いが出されました。勿論、選択権は皆様にあります。いかがでしょうか。」
ジョイトリクス場長が言う。
「俺は構わないけど、みんなはどう?。」
「勿論、受ける!。」
「わたしもです。」
「あたしも付き合うさ。」
「ありがとうございます。それでは、現地で簡単に組み立てられる舟をご用意させていただきますので、まだでしたら食事でもされて、お待ち下さい。」
ジョイトリクス場長にそう言われて、我々は食堂に向かった。
貰った食材はどうしようかねえ、とみんなに聞いてみると、舟で行った先がどこだかもわからないから、そのまま持って行こうという事になりそうすることにした。
テーブルにつき食事をしながら今後の作戦を練ることにした。
「しかし、あの地下水脈はどこへつながってるのでしょうね。」
俺は誰ともなく聞いた。
「マズヌルの方へ流れているなら、なんてことはない。が逆方面だとしたら。」
キーケちゃんが答える。
「それは、相当の距離ですねえ。」
「相当ってどのくらい?。」
アルスちゃんに俺は聞いた。
「そうですねえ。大海樹から直線で逆方向の海まで、マズヌルからオゴワナリヤ程の距離になりますか。」
「うわー、結構あるねえ。」
「領をまるまるひとつ通過するからな。現在地がダスドラック領だろ。隣りのプテターン領を抜けて海に面したクブロスカ領に出る。最短距離を直線で行ってこれだぞ。それだけの長さの地下水脈ねえ。しかも舟で逃げたとするなら、それなりの空間を維持したままという事だろ。普通に考えてマズヌル方向だろ。」
「きひひひひ、シエンの口から普通などという言葉が出るとは片腹痛い。それにな、ダスドラック領にはズィールがおるだろ。トモから聞いた例の護衛依頼で、不審者への警戒も強まっていようよ。」
「確かにマズヌルから王都までの沿岸は警戒が強まっているようですね。それに、こちら側に逃げてきたとしてどこに逃げるかですよね。協力者があちこちにいるのならば話は別ですけど、もしも、仮定したように隣国が絡んでいるのならば、やはりクブロスカ側と見るのが妥当だと思いますねえ。」
キーケちゃんの話しを受けてアルスちゃんが答えた。
「まあ、行ってみればわかるだろう。」
キーケちゃんが言う。
「だな。」
シエンちゃん。が答える。
そうして食事を終えた我らが食堂を出ると外ではダイファーさんの指揮下、3人の訓練生さんだろうか、がっちりした若い男性達が幾つかの部品を分けていた。
「丁度良いところに来られました。こちらが、組み立て式の舟です。」
「おーっ!こんな部品数が少ないものなんですか?。」
「はい、こちらは軍用品になりますので市販のものより軽くて丈夫になっております。ジャイアントイールの革が外郭部分に使われており、骨組みはギガントスカラベのものが使われております。よろしければ実際に持ってみてください。」
ダイファーさんに言われて4つに分けられた袋を持ってみる。
「うわっ!めっちゃ軽い!これなら4つとも持てるよ。」
俺は両手に2袋づつ持って見せた。
「さすがに、移動速度が落ちるわい。皆で分担しよう。」
キーケちゃんの意見を採用し、皆で分担して持つことにする。組み立ての仕方をお見せしましょうという事で、若い衆がテキパキとやって見せてくれる。
それを近くで見る俺たち。
できあがった舟を見て、シエンちゃんがわかった、バラしてみる、と言う。
少し心配になったが、実際やってもらうと、これが素早く正確だ。
「おっーー!。」
俺たちはダイファーさんや訓練生さんたちも含めてみんな、驚きの声をあげ拍手をした。
「へへーーん!どうだ!見直したか!。」
「いや、見直すも何も、俺は端から凄いと思ってるけどな。」
「うふふ。大したものですよ。」
「なんだ、シエンもたまには役に立つではないか!キヒヒヒヒ。」
俺、アルスちゃん、キーケちゃんが続けて言う。
「よし、準備は万端だな。出発しよう!。」
俺たちはそれぞれの荷物と組み立て式舟のパーツを入れた袋を分担して持ち、今一度地下水脈へと向かうのであった。




